*********************
「義経千本桜」~衣装の意匠
*********************

今月歌舞伎座の「義経千本桜」は、
「碇知盛」、「いがみの権太」、「狐忠信」の
三人に焦点を当てた、三部 公演です。



第二部「いがみの権太」だけは観劇の予定がつかず、残念です。

ネット上に掲載される演劇評論家の方の劇評、
観劇された方のブログなどによると、
染五郎さんの弥助実は維盛、猿之助さんのお里がとても好評のようです。
お二人とも仁に合った役柄、
特に猿之助さんの娘振りがいじらしくかわいいと…。

私がこれまで見た猿之助さんの女形の役では
「十二夜」の麻阿、「天竺徳兵衛」のおとわなど、ひと癖ある役。
「お染の七役」では、お染より芸者や土手のお六の印象が強く、
「小栗判官」のお駒は首になってからのインパクトが大きすぎました。
猿之助さんのかわいい女形…ちょっと想像できません。

猿之助さんはいずれ、権太も演じたいと言っています。
また、お里を演じるべき若手の女形が育ってきていることも考えると、
今回の猿之助お里はとてもレアなのかもしれません。


猿之助さんのお里の衣装なのですが、
黄八丈をお召しになっているようなのです。
私がこれまでに見たお里は、
紫色系の矢絣風の着付け、通常はこの衣装だと思います。

こちらについては、市川猿三郎さんのブログに記載がありますが、
役者の好みによって変わることがあるそうです。


こちらは以前の筋書に掲載されていた、「すし屋のお里」。
役者の名前ははっきりとわかりませんが、
「豊国」の落款があります。


歌舞伎では、同じ演目でも演じる役者さんによって、
衣装が異なる場合があり興味を引かれるところです。

「義経千本桜」では、いがみの権太の女房小せんの着付けですが、
江戸の役者だと裾を引き、上方では裾を引かないそうです。
今回、小せんを演じる片岡秀太郎丈は上方の役者さんですが、
松本幸四郎さんに合わせて演じているとのことなので、
おそらく裾を引いていると思われます。

バリエーションが多いのが、「道行初音旅」の忠信の衣装。
基本は茄子紺(または黒)の着付けに赤の襦袢ですが、
配置されている源氏車の模様の位置や大きさが異なります。
おもだか屋の忠信は茄子紺の衣装は変わらないのですが、
襦袢が水浅黄です。

先週観劇した「道行初音旅」、
猿之助さんの忠信が戦物語で肌脱ぎになると 、
この水浅黄の襦袢になり、
先代から当代への歴史の再来を感じました。