
「花街模様薊色縫ー十六夜清心」
清元の情緒ある語りに沿って
繰り広げられる心中模様。
しかし、お互いに知らずして、
別れ別れに生き延びることになる皮肉さ。

菊之助さんの清心は、
前半では透明感があり美しい。
心中に失敗してあわてふためく様子に
滑稽さをにじませながら、
やがて、求女を殺し悪の道に目覚めるまで、
気持ちを途切れさせることなく演じていました。
(この清心という役は、難しい役だなあと、
つくづく感じました。)
時蔵さんの十六夜はとても美しく色っぽい。
清心に夢中なこともよく分かります。
十六夜という女性も、運命に流されやすい、
その場その場を刹那的に生きている、
という感じを強く受けました。
松也さんの恋塚求女、しおらしく演じています。
(ただ、かなり大柄なため、清心に襲われた後、
逆に返り討ちにしてしまうのでは…などという妄想が…。)
松也さんもいずれは、清心を演じる日がやって来るのでしょうか。
「楼門五三桐」
吉右衛門さんの石川五右衛門、
菊五郎さんの真柴久吉。
短い一幕ですが、見ごたえがありました。

吉右衛門さんの團菊祭出演も実に、
約30年振りだそうです。
この顔合わせが実現したのも、
吉右衛門さんが、
「孫に引かれて歌舞伎座…」とおっしゃるように、
菊之助さんの御結婚によるものでしょう。
音羽屋と播磨屋、それぞれの家の芸風は
180度と言っていいほど異なるように思います。
2つの家の血をひく、和史くん。
彼に芸を伝えて行く使命の菊之助さん。
今後、役者としてどのように成長していくのか、
変化していくのか、楽しみです。