
「吉例 顔見世大歌舞伎」昼の部を観劇予定、予習です。
<源平布引滝ー実盛物語>
琵琶湖のほとりで暮らす百姓の九郎助夫婦の家に、
侍の斎藤実盛と瀬尾十郎が詮議のために訪れます。
実はこの家には、源氏再興の念願かなわず命を落とした木曽義賢の妻で、
懐妊中の葵御前が匿われているのです。
産まれてくる子の検分が目的の二人に、
九郎助は、最前拾った白旗を掴んだ女の片腕を、
葵御前が産んだと言って差し出します。
憤った瀬尾が実盛に言いくるめられ去っていくと、
残った実盛は、白旗を守るために小万と名のる女の片腕を斬り落としたと語り始め…。
(歌舞伎美人より)
斎藤実盛は平家の武将ですが、昔は源氏に仕えており
ひそかに源氏に心を寄せています。
颯爽とした、知的な情け深い武将として描かれています。
小万という女性は、最初はなきがらとして運ばれてきますが、
切られた腕が繋がれると、魂が呼び戻されて話し始めるという、特異な役です。
片岡秀太郎さんの小万。
瀬尾十郎、いかにも悪役といった感じの老人ですが、
実は小万の父親で、小万の息子に手柄を立てさせるため、自ら命 を差し出します。
中村亀鶴さん、こんな老け役は初めてではないでしょうか。
「源平布引滝」は現在、この「実盛物語」と
その前段である「義賢最期」がよく上演されます。
「義賢最期」は源平の間に立たされた武将の悲壮感あふれる最期が描かれます。
この「実盛物語」はその義賢の子(木曽義仲)の誕生と、未来の展望が描かれ、
明るい気持ちで見ることができます。

こちらは、中村勘三郎さん初演のときのチラシ、

1991年8月 納涼花形歌舞伎、
勘三郎さん30代半ばです。
葵御前の産室を覗きに行くところ、
太郎吉を馬にのせて喜ぶところなどに、
勘三郎さんらしいおもしろさがありました。
勘三郎さんはこのときと、もう一度演じたようです。
実盛の役は近年ではほかに尾上菊五郎さん、片岡仁左衛門さん、
市川團十郎さん、先代の市川猿之助さんなどが
繰り返し演じてきたようです。
染五郎さんより若い世代でも、
中村勘九郎さん、市川海老蔵さんが演じているようです。