
国立劇場 歌舞伎鑑賞教室
「壺坂霊験記」

感想を少し・・・
*沢市(亀三郎)**********
普段はどちらかというと、脇へ回ることの多い亀三郎さん。
でも、芸達者ですから、目の見えない沢市の姿を
しっかりと描き出していました。
目が見えないことや暮らしが貧しいことで、
卑屈な気持ちになり、
妻のお里が自分に良くしてくれるほど、
疑心暗鬼におちいる様子がよくわかりました。
*お里(孝太郎)**********
夫を思い甲斐甲斐しいお里、
疑われた情けなさを、義太夫の演奏にのって、
「三つ違いの兄さんと…」と切々と訴えます。
今回のお里は初役で、
伯父である片岡秀太郎丈に、教えを受けたそうです。
沢市の身の回りを細々と整えつつ、
自分の見せ場も多い、なかなか難しいお役だと思います。
こういった役を、あまり自分を前に出すことなく、
それでいて印象深く演じることができるのは強みだと思います。
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この「壺坂霊験記」、話は知ってはいましたが、
見るのは今回が初めてでした。
上演頻度は数年に一度くらいのようです。
近年では2011年1月、浅草公会堂で
愛之助さん七之助さんで上演されました。
お里を演じた回数が多いのは、
やはり片岡秀太郎丈や坂田藤十郎丈の上方勢です。
中村歌右衛門丈、芝翫丈、福助丈も1~2回ずつ、
尾上菊五郎丈も1度演じています。
谷底の場で沢市お里夫婦を救う観音さま、
子役が演じるのが通例のようです。
歌舞伎の家のお子さんが演じる場合と、
一般の子役が演じる場合があるようです。(今回は後者でした。)
中村児太郎さん、中村壱太郎さんが初お披露目で演じているほか、
中村七之助さんや中村橋之助さん、中村福助さんなども
子役時代に演じているようです。
壺坂寺の場面では、沢市、続いてお里が崖から身を投げます。
身を投げるのは暗転か、黒衣の持つ黒い布で隠して表現するのか…
と考えていましたが、実際は本当に岩場から飛び降りていました。
特にお里は女形の姿で、杖を抱えて飛び降りていましたから、
役者さんはもとより、下で受け止める裏方さんも大変そうです。
崖から身を投げるといえば…来月のこちら。

平知盛やたくさんの官女が岩場から身を投げる、
凄惨な物語です。
菊之助さんの知盛、話題性がありすぎて、
切符の前売り当日に完売になってしまったようです。