今回の建設IT注目情報 ~テクラ「Tekla BIMsight」~

 建物の施工段階で問題になるのが部材の干渉です。意匠、構造、設備の担当者に分かれて設計した結果、施工時に内装材や配管、構造部材などがぶつかることが判明し、図面を修正することがときどき起こります。

 こうした問題を防ぐためには、コンピューター上に構築した3次元モデルで建物を設計するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用が有効です。

 建物の意匠、構造、設備の3次元モデルをコンピューターに読み込んでチェックすると、たちどころに干渉部分が判明し、施工にとりかかる前に解決できるからです。

 鉄骨や鉄筋などの構造設計用BIMソフト「Tekla Structures」を販売するテクラは、こうした用途に使える高機能のビューワーソフト「Tekla BIMsight」を2月21日にリリースしました。

 意匠、構造、設備など様々なCADで作成した複数の3次元モデルを読み込み、様々な角度や断面で建物の形状を閲覧できるほか、各部材の材質や仕様などを表す「属性情報」の内容も見られます。さらに部材間の干渉チェックや任意の2点間寸法計測なども行えます。

 これだけの高機能なので、テクラ代表取締役社長の宮本信太郎さんは「50万円でも売れるソフト」と胸を張ります。ところが、
 
ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、
 
無料でダウンロード
 
できるようにしたのです。

無料配布の狙いは、Tekla BIMsightの普及によって施工段階でのBIM活用を促進することで、鉄筋や継ぎ手などの詳細設計を担うTeklaStructuresの需要を喚起することにあるようです。

 読み込めるファイル形式はBIMモデルのデータ交換用フォーマットである「IFC」のほか、建設業界で普及しているAutoCADの「DWG」、MicroStationの「DGN」などです。また、読み込んだ複数のファイルをまとめて保存できるTeklaBIMsightの専用ファイル形式「TBP」もあります。

 早速、私もダウンロード用サイトにアクセスし、ユーザー登録を行った後、インストールしてみました。ソフトは英語版ですが、画面の指示に従って操作すると特に問題なくできました。

 ソフトには見本として建物の3次元モデルのファイルが付属しています。このファイルを開くと、様々な形式で作成された9種類のBIMモデルが次々と読み込まれていき、一つの画面にまとめて表示されました。

 次に、読み込んだモデルをいくつか選んで干渉チェック機能を実行すると、数百カ所の干渉部分が見つかり、画面上に一覧表として表示されました。そして一覧表をクリックすると、該当する3次元モデルの部分がクローズアップされたのです。

これだけ簡単だと、3次元CADの操作スキルがない人でも問題なく使えます。発注者や設計部門の管理者などが自ら、BIMモデルを見ながら設計の確認や変更の指示などが行えそうですね。その作業に便利な機能も付いています。

イエイリはここに注目した! ~BIMモデルに“議事録”を残す~

 Tekla BIMsightには、干渉部分などに
 
コメントを付ける
 
機能があるのです。

 例えば、配管と梁が干渉している部分に、担当の設計者や対応策を記入してBIMモデルごと保存できます。つまり、BIMモデル上に“議事録”を残せるわけですね。

 また、複数の担当者が別々に設計しているときも、「ここがぶつかっている」、「この干渉は設備設計者の私が解決する」といったコメントを付けたTeklaBIMsightのファイルをメールなどで送り合うことで、問題個所や対策についての情報を簡単に共有できます。

これまでのBIM活用は、企画や基本設計などプロジェクトの上流部分が中心でした。3次元CADに不慣れな人にも扱いやすいTekla BIMsightが無料公開されたことは、施工段階のほかプレハブ部材の工場製作や維持管理でのBIM活用も加速するきっかけになるかもしれません。

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