お~れ~がいた~んじゃお嫁~にゃゆけ~ぬ わかっちゃいるん~だ妹よ~ い~つ~かおまえ~がよろこ~ぶよう~な え~らいアニキにな~りた~くて 奮闘~努力の甲斐もなく 今日も~なみだの~ 今日も~なみだの日が落ちる 日が~落~ち~る~
ってなわけで駅前の立ち食い蕎麦屋になんとなーく二回目のご訪問なので、フーテンと呼ばれた男の背中ナメで柴又駅をショットしてみたのだ。
15時を回った店内には、三十代前半と見受けられる、スエット姿の女性がひとり。髪をポニーテールにまとめてカウンターに肘をつき、アンニュイにラーメンをすすっていた。
おれはコップに水を入れながら、テレビの”ミヤネ屋”に見入っていたおばちゃんにラーメンを注文し、そして、あそこの女性に半カレーをひとつ、と注文した。目の前におかれた半カレーにアンニュイな女性はびっくりしたように、おれに微笑んだ。
そこへテンガロンハットを被り黒ヤギのケツみたいな髭を生やした痩身の男が乱暴に入ってきた。怯える女性。「あんたみたいなクズがくるとこじゃあないよ!」 と険しい顔で叫ぶおばちゃん。男は女性に、「こんなとこにいやがったのか、昨夜は稼ぎもなかったくせによ、とっとと化粧して客でもとってきやがれ!」 といいながら女性の髪を掴み上げた。おれは男の腕をねじりあげ、「今時ヒモか、アナクロだな。ヒモならヒモらしく、もっと女に媚びるもんだ」といって、おれは男を外に蹴りだして背中を向けた、その時だった。
あ、危ない! 半カレーを手にした女性は叫びながらおれを突き飛ばした。振り返るおれ。響き渡る銃声。嗅ぎなれた硝煙の匂い。女性の肩を掠める38口径の弾丸。
ケツ髭の男はシングルアクションのリボルバーを握っていた。おれは女性から半カレーを奪い取り、パイ投げの要領で男の顔面に投げつけた。
おれは立ち上がり、半身をおこした男の顔面に張り付いたカレー皿ごと踏みつけた。「旨いか、半カレーだからって舐めんじゃないぞ。今度お前にあったら、その黒ヤギのケツみたいなツラを、黒ヤギのケツに突っ込んでやるからな、とっとと田舎に帰んな」男は這いずるように去っていった。
女性は弾丸が掠った肩をおさえながら、おれに訊いて来た。「ありがとう、助かったわ。ねえ、名前を教えてくれる?」 「おれか? おれはつまらない男だよ。おばちゃん、ラーメンと半カレーで600円だったね。つりはいらないよ」とカウンターに千円一枚を置いてでていった。その姿をみて、店のおばちゃんは嬉しそうに言う。「あの男はね、帝釈天で産湯を浸かった、団子屋の小倅だよ。今は見たとおりの、気ままなヒッピーだけどね」
男の背中は大きく、そして大きな革のカバンを提げていた。
「つまらない男だよ」