ここ数ヶ月間現場で会わねーダチがいたのだ。
ってかこんな流浪の仕事だから、ここ数ヶ月現場で会わねーダチなんてーのはざらだし、ダチって言っても現場で会うだけの仕事仲間か。
んでもって早い話が、そのダチはすい臓癌が発端で、更には胃とか肝臓とかあちこちに移転してんのが見つかって故郷に帰ったらしい。
まあ、達磨さんが転んだような風貌で、変な痩せ方してたし怒りっぽかったしちと人間とは思えない体臭と口臭が激しくてハエとかたかってたし、年のころは四十後半あたりでパチンコで負けちゃあ電気止められてたりするクセに、勝てばバイクや自転車に銭かけたり中年のオヤジのクセにニンテンドーのなんたらへーたらってなゲーム買ったりして、たまに歯茎から強烈な酸を出しちゃあ色んなもん溶かしたりする人間のクズの風下にもおけないクズだったのだ。
仕事だって舞台やイベントの特殊効果の現場にいたのだが、キャノン砲や炭酸ガスのセッティングなんざあ、いつまでたっても覚えやしねーし、したらば発射スイッチのボタン押すだけのくだらねーオヤジだからな。
んで、いつも故郷に帰るときはてめーのバイクで帰ってたから、癌に侵された体でバイクで帰ったかと思ったら、バイク仲間にゆずって、てめーは萎れたまんま飛行機で帰ったと。
んで、実は若いころに嫁さんがいて、今じゃあ結構いい年のガキもいて、だからさ、故郷に帰ってとりあえずは、その別れた嫁さんとすごして入院するらしい。
ああ、もう東京に戻ってこねーよな。
ヤツは死にに帰ったのだ。
羨ましーじゃねーか。
おれなんざあ、失踪したバカな兄貴以外、もう身内に死ぬやつなんかいねーし、死にに帰るとこもない。
しょうがねーやな、これが現実なのだ。
だから、死にに帰った癌のダチを気の毒とか悲しいとかぜーんぜん思わねーのだ。
ただ、銭貸さなくてよかったなーと思うだけなのだ。
あーよかった。