クイーンのフレディ・マーキュリーそっくりの飼育係が、ばーいしくる、ばーいしくると呟きながら胸毛もあらわにつんつん、ぱっつんぱっつんのビキニパンツ一丁で、夫婦のラッコの水槽につま先からそーっと入ったかと思うと、なにやら「すりすりさせてっ、すりすりさせてーっ!」などと叫びながらいきなりラッコ夫を背後から羽交い絞めしたのだ。
突然のことに暴れるラッコ夫に、ラッコ妻はさらに飼育係の背中にしがみつき、潜水したかと思うと飼育係は溺れそうになってあっぷあっぷ浮上。
軽くボッキしてたぞ。
その背後からラッコ妻は飼育係に抱きつき、ラッコ夫は手ごろな石を両手に振りかざし、貝を割る要領で飼育係の頭を砕いたのだ。
雨上がりの昼下がり、見事な夫婦の共同作業なのだが、血で真っ赤に濁った水面にうっすらと背中を向けて浮かぶ飼育係。
一部始終を目撃していたファミリー、アベックは逃げ惑い、密かに海パンを穿いて潜るチャンスを窺っていたおれは呆然と立ち尽くしたのだ。
仕方ない、明日にしよう。
でも月曜日だってーのにいるなぁ、客。
もっとがらんがらんで、人っ子一人いなくって、ラッコと言わずアザラシと言わず、おれは海パンで縦横無尽に水族館を駆け回り、あらゆる魚、海獣の水槽に入り込んで、たまにはクラゲかなんかに刺されたり、アロワナあたりを踏んだりなんかして、やべーやべーと言いながら全然気にせずにやりたい放題の予定だったのになぁ。
そもそもフレディ・マーキュリーに似て、トチ狂った変態の飼育係がいけないのだ。
なにが、ういあざ、ちゃんぴんおんだ。
口髭にパールのリップがラッコの神経を逆撫でしたんだろ。
まあ、眠眠で炒飯と餃子を喰ったからいいか。
ってか、さほど美味くなかったぞ、値段のわりには。
水族館は明日で最後なのだ。
悔いのない一日にしよう。