台風だから、静かにお部屋でご本を読んでたのだ。
『なめくじに聞いてみろ』。ヘンなタイトルだが内容もヘンで、かなり強引なのだ。
1961年に二十八回にわたって週刊誌で連載された冒険活劇ナンセンス・ミステリーで、著者の都筑道夫氏は編集者時代に、イアン・フレミングの007・ジェームス・ボンドシリーズを日本に初めて紹介したヒトらしい。
んなもんだから、濃いキャラクターが荒唐無稽な展開でおおわらわなのだ。
主人公の桔梗信治は、殺人術の開発者だったてめーのオヤジが通信教育で育て上げた十二人の教え子=殺し屋たちを探し出し、オヤジが残した負の遺産として対決していくのだが、この殺し屋たちの殺しの手口がどれもムリがあって、トランプや仕込杖やマッチや毒針とか使うのだ、通信教育で。
フツーに殺せばよかろーに、と言ってはみもふたもないのだが、まあよく都筑道夫氏はこれだけのナンセンスを思いついたものなのだ。
後半には人口調節審議会ってーな謎の殺し屋集団が出てくるわ、謎のナチス党員が出てくるわで風呂敷も大きくなるのだ。
1962年に刊行されたときは『飢えた遺産』ってーなタイトルに改題されたが、1968年には『なめくじに聞いてみろ』に戻されて、大幅に加筆訂正したらしい。
なんでタイトルの変更があったかは知らんが、まあ大人の事情があったんだろーな。
基本的にはコメディなので、『なめくじに聞いてみろ』の方が、なんかなめくじに聞いてみたくなるのだ。
んでもって、1967年には東宝で『殺人狂時代』ってーなタイトルで映画化もされたのだ。
主人公、桔梗信治がオヤジの負の遺産、殺し屋を始末してまわる、ってな設定は、ヒトラーの宝石にまつわるストーリーに変わってしまったが、まあ面白ければよかろー。
監督は岡本喜八ってーなこれまた暴走気味でちと干されてた監督で、クランク・アップされた『殺人狂時代』はクレージー・キャッツか若大将シリーズの添え物での公開だったらしーのだが、封切り一週間前に『殺人狂時代』だけ、大人の事情で公開中止になったのだ。
しばらくして、突然『殺人狂時代』は公開されたのだが、突然すぎて宣伝もしなかったらしく、もちろん客は不入りでこれまた公開打ち切り。
とほほほ。
もともと007にインスパイアされて書かれた『なめくじに聞いてみろ』は、『殺人狂時代』で数奇な運命をたどり、そのユニークなスタイルは鈴木清順監督の『殺しの烙印』をも巻き込んで、モンキー・パンチの『ルパン三世』へと受け継がれ、とーぜんブラックで、おとぼけで、非情で、ビビッドなのだ。
『なめくじに聞いてみろ』 都筑道夫 扶桑社
『殺人狂時代』 監督・・・岡本喜八 脚本・・・小川英 山崎忠昭 岡本喜八
桔梗信治・・・仲代達矢 鶴巻啓子・・・団令子 大友ビル・・・ 砂塚秀夫 溝呂木省吾・・・天本英世
小説はなめくじに聞かなくても買えるのだが、映画の方はDVDが出てるのでレンタルビデオで探すか、なめくじに聞いてみてくれ。