振り返った答え
「今日仕事終わってから、泊まりに来てもいい?」
「いいよ。」
「じゃー、あとでメールするね。」
君はしばらく僕と目線を合わせ、少し照れながら小さく手を振った。
僕は当たり前のように手を振って、君の後ろ姿を見送った。
君は僕の熱い視線を背中に感じていないかのようにそのまま僕の視界から消えていった。
それだけのことさ、たったそれだけのことだったのさ!!
ほんの数秒の出来事に僕は、ふと妙な寂しさを感じていた。
ひょっとしたら、君が本当に消えていきそうで、僕の記憶から完全に消去しそうで・・・・・・・・・・・・
蒸し暑い夏なのに、背中が凍りつくほどの震えを感じていた。なぜだろう。なぜなんだろう!!!
今日の夜また会えるのに・・・・・・すぐまた君とキスできるのに・・・・・・・・
歴史の偶然か、時代の変化か、時は悲しくも僕に同じワンシーンを作り出してしまった。
翌朝君と僕は、同じ場所で同じセリフを言い、同じように手を振った。
また同じ気分を味わわなければならないのか?不安というよどんだ空気を吸いながら、僕はまたも当たり前のように君の背中を見送った。
絶望の崖っぷちで君が出した答えは、再度僕を振り返り、見たこともない大きな手と忘れることがない笑顔を僕の瞳に焼き付けることだった。
うれしかった。とてもうれしかった。飛び上がりたかった。
不安から解放され、晴れ間が見えた自分には手を振り返すことも忘れていた。
ただ僕の笑顔だけが君に答えていた。
今年の残暑も厳しくなりそうだ。