ザイザルの謎 | 幸せ家族計画!

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しがないいち新生児科医のプライベートなブログです。

日経メディカルで「レボ○○」という薬のマニアックな話 というトピックが紹介されていました。抗ヒスタミン薬である「ザイザル」というなんだかカッコイイ名前の薬についての説明がマニアックにかつ分かりやすく説明されています。

抗ヒスタミン薬といえば抗アレルギー薬とも言い換えられるように、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹などに使用されます。僕も鼻炎を発症したときに、昨年インフルエンザに罹ったときに頼んでもいないのに処方された「アレグラ」の残りを使ったりします。

「ザイザル」は「アレグラ」とはまた別の抗ヒスタミン薬「ジルテック」の改良型だそうです。どう違うかというと、ザイザルが純粋なR体であるのに対して、ジルテックはラセミ体であるということらしいです。

高校の有機化学でやった「光学異性体」というやつですね。代ゼミの亀田先生が「不斉炭素原子」のことを「キラルセンター」と呼んでいたのが懐かしいです。忘れた人は教科書でも開いてください。僕はウィキペディア を開きました(笑)

光学異性体はその回旋方向によって「R体」「S体」に分類されて、それぞれ呼称する際には頭に「D-」「L-」がつきます。また「R体」「S体」が混在しているものを「ラセミ体」と呼びます。

「ジルテック」はラセミ体で、「ザイザル」は純粋なR体。薬効としてはS体よりもR体のほうが強いので、両者が混在するジルテックより純粋なR体のザイザルのほうがより高い効果が期待できる。というのがこの改良の意義だそうです。

ザイザルは一般化学名を「レボセチリジン酸」というようです。そして日経メディカルの記事では頭に「レボ」が薬は鏡像体が分離されているから高い薬効があるんだ、的な書き方がされています。薬効についてはいい。しかし、R体であるザイザルがなぜ「D-セチリジン酸」ではなく「L(レボ)-セチリジン酸」なのか?!

実際この記事では他の例として、ラセミ体オフロキサシンに対してS体のレボフロキサシンを紹介しています。S体をレボフロキサシンと呼ぶのは分かる。しかし何故R体のザイザルはレボセチリジン酸か?

もしかしたら、R体S体の区別とD-L-の呼称は相関しないのではないのか、と思って、頭に「レボ」とつく薬の構造式を色々な調べてみました。

レボホリナート(中毒治療薬)
Monocalcium N-(4-{[(6 S)-2-amino-5-formyl-1,4,5,6,7,8-hexahydro-4-oxopteridin6-yl]methylamino}benzoyl)-L-glutamate

レボブピバカイン(麻酔薬)
(-)-(2S)-1-butyl-N-(2,6-dimethylphenyl)piperidine-2-carboxamide monohydrochloride

レボノルゲストレル(経口避妊薬)
(-)-13- ethyl -17- hydroxy -18,19- dinor -17α- pregn -4-en -20- yn -3- one

レボチロキシン(甲状腺ホルモン製剤)
Monosodium O- (4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)-3,5-diiodo-L-tyrosinatehydrate

レボドパ(パーキンソン病治療薬)
3-Hydroxy-L-tyrosine

これらを見る限りでは、「レボノルゲストレル」以外はどこかに「S」または「L」が入っています。ここから考えられる可能性は三つ。まずR体に「レボ」をつけるのは間違っていて、ザイザルの命名は特例あるいは間違いだったという可能性。そして、鏡像体の命名には「R体」=「D-」、「S体」=「L-」以外の法則があるという可能性。最後に、実はレボセチリジン酸はIUPACの正式名称ではないという可能性。

それじゃあってことでIUPAC のページを開いたけれど、Chiralityの項目を開いたところで断念。もう夜中…。はよ寝なかん。。。

もし、ご存知の方(もしくはIUPACに果敢に攻め込んだ猛者)がいらっしゃったらご教授賜りたいものです。