えがく手に 乗りし想いは 色をつけ 紙にひろがる 大宇宙
以前こちらで紹介したことがありました、昭和から平成のアニメにおいて名だたる作品の美術(背景)を創り上げてこられた「椋尾篁(むくおたかむら)」さん。
4月に故郷の佐世保市において開催される「椋尾篁展」なのですが、今回取り組まれたクラファンもストレッチゴールをはるかに超えた金額を達成することができました。
改めて、椋尾さんの絵を愛しこのクラファンを応援して下さった方達がたくさんおられたのだと思い、とても嬉しくなりました。
わたしも微少ながら・・・椋尾さんの叔父様が作られた酒器セットにて応援させてもらいましたが、そちらの返礼品が無事に届きました。
叔父様になられる「中里末太郎(陽山)」氏は昭和の三川内焼を代表する陶工です。
薄手の白磁作りに長けておられた方で、「卵殻手」においてはその技術は神業ともよばれたそうです。
三川内のドンバイ塀から陶祖神社にぬけていく道のわきに、かつての陽山窯の建物跡が見られます。残念ながら、陽山窯は平成3年に閉められました。
今や新しく手に入るような一品ではありますまいな。見惚れるほどの白さ。
ご覧いただきたいのが、白地の器に映り込む影であります。ただの自然光だけでもこれ程までに影が映り込むのですから、器の薄さを感じてもらえると思います。
こうして手に取ってみると、とにかく軽い・・・喩えるならば、ウズラの卵のような軽さ。
「卵殻手」と呼ばれるように、まさに卵の殻のような繊細さを保っていて、口の当たる先端は滑らかなカーブをえがきながら空間との境界線に向けて極限まで薄さを保っております。
先端を定規で測ってみましたが、1㎜どころか・・・0.5?もっと細いような?
うちで使っている、来客用に使われていたお江戸でござるの湯呑や盃も薄いのですが、あれは日用ものとして丈夫に作られていたのか、0.7㎜はありました。
別に薄さ勝負を挑むというものではなくって、これら薄づくりの器が持つ魅力とは手にしてはじめてわかるものだと思いました。
手に取った瞬間に指先にぴたりと添い、口の先に器の先端を付けると、まるで本能に語り掛けてくるかのような「気持ちの良さ」を与えてくれます。
大袈裟ではなく、口とは本来生物が持ち合わせた「快」「不快」のセンサーが集中しているところなのだということを知らしめるような体験でした。
言うなれば、器と人が和合するかのように添うのです。これらは他の器では体験したことがない感覚でして、究極の技法と言わざるをえない。
自分は酒を嗜まないので、この器を如何に添わせるべきか思案中であります。今は亡き陽山さんの薄づくりの作品かと思うと・・・軽々しく使えない。
ご先祖様達へのお神酒入れにしようかな・・・う~む・・しばらくは眺めてニヤニヤしていると思います。
ところで、今週末(4月25日土曜日より)に佐世保市博物館島瀬美術センターにて開催される「椋尾篁展~アニメ背景美術の先駆者~」ですが、キービジュアルもカッコいいですね。
今ではCGを使って近未来チックな都市図を作り出すことができますが、人の手に握られた筆先の一筆にて描かれる世界は、手先の微妙な強弱の影響を受けながらも唯一無二の世界を創り出された生身の財産といってもいいのではないでしょうか。
椋尾さんの一筆一筆がのったそれらの原画や史料を直にこの眼に留めることができるのですから、今からホント愉しみです。5月24日日曜日まで開催とのことなので、機会があられる方は是非足を運ばれては如何でしょう?
今回の展示会用のHPを見つけたので、勝手ながらも貼ってみました。奥様が撮影された写真にうつる椋尾さんの自然な表情にご本人の人柄がにじみ出ているように思います。
心洗われるような自然の風景も、想像力を掻き立てるような近未来都市も、全ては彼の一筆にて生まれたのですね。


