七夜月 おぬしの涙 どこへ行く 泣くなら雫 手に落とせ
七月の雨はきまぐれに流れていく。
雲の色が変わり、突風とともに横なぶりの雨が降る。
軒先に避難しても意味をなさず、しぶきのようにして叩きつける雨粒のせいであっという間に全身が濡れネズミとなってしまう。
足もとの靴がじっとりと湿り、袖にはりつくシャツがからだをひやりと冷ましていく。
「うへぇ~」
容赦なく空から打ちつけてくる雨の攻撃は非情なもので、巻き上げるような風をひきつれては、激しく力強くひたぶるに乱舞を繰り返す。
その情熱に・・・子ども心が「この雨たちに濡れて走りまわるのも楽しそうそうかもね・・・」と肘をついてくる。
情熱に感化されるこころより、濡れたあとが面倒だと大人のこころが自制する。風邪でもひいたらどうするんだ。
耳にいるのは雨の音。少し暗くなった世界に車のライトがぽつぽつ灯る。
閉じ込められたような空間でも・・・市井の人たちが行き来する。色とりどりの傘たちが揺れながら動いていく。
濡れた体を車に閉じ込めて、家路へと急ぐ。
灰色の空間を泳ぐようにして。
大雨をもたらした雲が流れ去っていくと、驚くほどの静寂さ。
ぽとりぽとりと滴り落ちる雫の音が響いてくるばかり。
この際に・・・とおそばせながら買い物袋を抱えて外にかけだす。
濡れたアスファルトのくぼみには水溜まりができて、水面には街灯のあかりが幻想的に輝いていた。西の空を染める黄昏は雲のカーテンに覆われてすっかり隠れてしまっている。どこかのネオンが雲の中を乱反射して、ほんのりと色をつける。
明日の天気はどうだろう?
ああ・・・でもまた雨雲がかかってくるのかな?お天気アプリの予想では、あと数時間の後に猛烈な雨を降らせる気概の雨雲が流れてくるそうだ。
足早に買い物をすませて家に帰り、一日の役目を果たして夜半になるころに、外から「バタバタ」と大きな音が響いてきた。
カーテンをのけて外を眺めてみると、予想が的中したのか、南風に煽られて滝のような雨が降っている。
天から流れてくるのは五月雨か。昼間の雨に負けぬくらいに降りつける。
ガラス窓の表面をどんどん流れていくあまの川。
この雲のうえにはきっと、天の川が流れているのだろうに・・・。
風にあおられてしぶきのようにして地面を叩きつける雨粒たち。
どこもひどい被害がなければいいのにな・・・。
そう願いながら、静かに床に就く。
朝になり、いつものようにタイマーが鳴り目を覚ます。
カーテンをのけて外を眺めてみると、うっすらと明るくなった青空が見えていて、濡れた地面が夜半の雨の痕跡を残していた。
土砂降りの雨の音は、ひとつひとつの記憶を整理する。
水害を起こした・・・あの日のことを思い出し、またこうして静かな朝を迎えることもあってみたり。
ひとつひとつ・・・雨を楽しみ、雨を恐れ、雨に感謝し、空をみる。
まだまだ続く梅雨空に、雨の恵みに感謝して、先まえの用心を誓いあう。
