さわさわさわ、さわさわさわ。
さわやかさんが、うさぎの耳元でつぶやいた。
「熊本のたぬきさんに、モンロー研究所でもらったボールペンを渡しに行ってね。」
うさぎは、熊本からたぬきさんが遊びに来る、という知らせを聞いた。
それから間もなく、たぬきのマルさんが、東京へ遊びに来た。
マルさんも、ヘミシンクという音を聞いていて、新しいお家まで建てたそうだ。
うさぎは、はじめてマルさんに会ったはずなのに、何だか懐かしいような気がして、
さわやかさんの言うとおりに、ボールペンを渡した。
それからうさぎは、ときどきマルさんに会いたくなって、
「お話をしに来てください。」
と熊本に手紙を送った。
マルさんは、喜んで東京まで来てくれて、みんなの前でヘミシンクについてのお話をしてくれた。
それからうさぎは、何度もたぬきのマルさんと、ヘミシンクのワークショップをするようになった。
かごめかごめのメッセージのように、陰のマルさんと、陽のうさぎは、2匹で籠目になっていた。
二匹のエネルギーで、みんなを囲むと、みんなの中の龍のエネルギーが目覚めて、籠の外へ出ていくのだ。
日本のみんなが、龍となり、アセンションという宇宙の一大イベントを盛り上げるのが、
うさぎとたぬきの仕事だ。
かつて、「カチカチ山」という昔話の中で、たぬきさんの背中を火傷させてしまったうさぎは、たぬきさんにあやまって、仲直りがしたかったのだ。
龍のかみさまは、粋な計らいをしてくれた。
うさぎは、たぬきのマルさんと協力して、日本のパワースポットとして有名になった、分杭峠の近くの宿で、ヘミシンクの合宿をするようになった。
その合宿がきっかけとなって、多くの龍のエネルギーが目覚めることとなるだろう。
たぬきのマルさんは、モンロー研究所に行って、モンローさんの魂とお話しして、
その体験を1冊の本にまとめた。
その本がきっかけとなって、日本に住む多くの人たちが、ヘミシンクに出会い、見えないものの声を聴くことになるだろう。
うさぎはそうなることを意図して、龍の神様に祈った。
ざわざわざわ、ガサガサガサ。
「そろそろ僕の出番かな?」
さわやかさんではない、別の存在が、うさぎの前に姿を現した。
「あっ!あの時のお侍さんだ!!」
「せつこ、起きろよ!」と20年以上も前に、うさぎの寝床に現れた男の人が、再び登場したのだ。
今度は、もう怖くはなかった。
20年以上も、そばで見守り、この時を待ってくれたお侍さんに、心の底から「ありがとう。」と言いたかった。
お侍さんは、うさぎの過去世で、今生のガイドでもあった。
毎朝、かっちゃんと一緒にヘミシンクを聞く中で、そのことは明らかになっていった。
ヘミシンクを聞いていないときにも、ときどき過去世の情報が降りてくることがあった。
ある日、とても天気のいい、気持ちのいい朝に、うさぎが洗濯をしていた時、洗濯機の上に、突然シャーマンの男の人の顔が見えてきた。
大きな鷲のような鼻の、上半身裸の茶色っぽい顔の男のひとが、頭に薬草でできた冠をかぶり、藁葺の小屋の中で、病人を治療している。小屋の中は、薬草をいぶした煙でいっぱいだった。
なぜだかうさぎは、この男の人が、自分であるような気がした。
やがて、このシャーマンは、白人の襲来によって、村人の多くの命を救うことができず、自分の予知能力の未熟さを嘆き、罪悪感を持つこととなった。
うさぎの中の「申し訳ない。」という思いが、この過去世の情報からきていることを知り、その思いを開放することができた。
ある夜、うさぎは家族でテレビを見ていた。
あるテレビドラマの中で、どうしても気になる人物がいた。
『野風さん』と呼ばれるその人は、江戸時代『花魁(おいらん)』としてその人生の一部を過ごしたひとだ。『籠の中の鳥』であった野風さんが、遊郭から外に出て、愛する人と出会い、子供を身ごもり、自由に生きてく。
野風さんの気持ちが、痛いようにハートに響き、うさぎは大粒の涙を流した。
うさぎは、まるで自分の過去世の情報を、テレビドラマとして見せられているような気がした。
うさぎが、モンロー研究所に行った後、日本の熱海で受けた、ライフラインというプログラムの中で、頭の中に浮かんだ物語と、ほとんど同じだったのだ。