さわさわさわ、さわさわさわ。
再び風が吹いてきた。
「ゼロに引き戻す力、それを空の働きという。」
うさぎには、さわやかさんの声が、理解できないことも多い。
そんな時、うさぎの心に、歌が響いてくる。
♪呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも心躍る 夢を見たい
かなしみは 数えきれないけれど
その向こうできっと あなたに会える
繰り返すあやまちの そのたび ひとは
ただ青い空の 青さを知る
果てしなく 道は続いて見えるけれど
この両手は 光を抱ける
さよならのときの 静かな胸
ゼロになるからだが 耳をすませる
生きている不思議 死んでいく不思議
花も風も街も みんな同じ
呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも何度でも 夢を描こう
かなしみの数を 言い尽くすより
同じくちびるで そっとうたおう
閉じていく思い出の そのなかにいつも
忘れたくない ささやきを聞く
こなごなに砕かれた 鏡の上にも
新しい景色が 映される
はじまりの朝の 静かな窓
ゼロになるからだ 充たされてゆけ
海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
わたしのなかに
見つけられたから
宮崎駿監督のジブリ映画「千と千尋の神隠し」のテーマ曲が、うさぎの口をついて出てきた。
こうして、またうさぎのもとに、歌が帰ってきた。
退院を待ってくれていた、音楽サークルの生徒さんたちに連絡して、
うさぎは、また音楽の仕事を再開した。
ハッピーも学校のブラスバンドで、音楽を奏で始め、ライトも、かっちゃんが幼い時に使っていたバイオリンを弾きだした。
さわさわさわ、さわさわさわ。
「聴こえない音を聴き、見えないものの姿を見よ。」
さわやかさんは、相変わらず、訳の分からないことを囁いてくる。
音楽のもたらすハーモニーの力で、うさぎの心は、深い安らぎを取り戻していった。
そんなある日、かっちゃんが面白い本を買ってきた。
真っ赤な表紙のその本の中には、うさぎが知りたがっていた死んだあとの世界のことや、ハッピーが口にしていた、地球の生命システムについての情報がいっぱいだった。
特別な音を聞いて、約30分寝ているだけで、自分で確かめられるという。
うさぎは、本に書いてあったところに電話して、『ヘミシンクCD』というものを送ってもらった。
ヘッドホンをして、『ゲートウェイ・エクスペリエンス』の最初のCDを聞いた。
うさぎのからだは、細かく振動し、何か新しい世界へと誘われていくのがわかった。
「これは!」という手ごたえがあった。
うさぎは、家事仕事の合間に、それこそ寝食を忘れてヘミシンクCDを聞きまくった。
だんだん睡眠時間が短くなり、夜中に起きだして、CDを聞こうとしたところ、かっちゃんに怒られた。
かっちゃんは、またうさぎが、入院しなくてはいけないような状態になるのを、恐れていたのだ。
うさぎは、かっちゃんと約束して、毎朝4時半に起きて、かっちゃんと一緒にヘミシンクCDを聞くことにした。もう、夜中にCDを聞くことはなくなった。
一緒にヘミシンクのセミナーをやっているところに出かけ、フォーカス10と呼ばれる状態から順に、12→15→21→27と進んでいった。
ヘミシンクの本場、アメリカ・ヴァージニアにあるモンロー研究所にも行って、亡くなったはずのモンローさんの魂とコンタクトしてきた。モンローさんは、ヘミシンクという音の技術を開発した人だ。
短い時間だったけれど、心が自分の体からぬけて、部屋の天井から自分の体を見下ろす体験もした。