【若葉のころ:7】冬の怪談は朝礼台の下で | 西山夕焼け通信 1970~1979

西山夕焼け通信 1970~1979

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1970年に小学校に入学し、
1979年に中学を卒業した彼らも
すでに60代になった。
これからの人生を
西山の夕焼けのごとく
あざやかに彩るために配信していきます 

この物語はフィクションであり、

実在する人物や学校とは

いっさい関係がありません。

冬の怪談は

朝礼台の下で

著:里中満

 

グラウンドに面した木造校舎と

プレハブ校舎は楽しかった。

12歳から13歳へ。

男子は身体を動かしたい盛りだったのだろう。

休み時間のたびにたいてい

バレーボールを

蹴飛ばして遊んでいたものだ。

しかし3学期の冬ともなると

さすがにじっとしていたくなる。

グラウンドにある朝礼台の下に

4人が集まった。

四角形の四辺の棒に

4人が腰かける。

台を屋根に隠れ家のよう。

密談でもするような雰囲気だ。

そこで、

話上手なK君が怖い話を始めた。

 

子どもらが野球をやっていると、

子ども好きの

お兄さんのような人がやってきて

ノックをしたりして一緒に

遊んでくれてたらしいわ。

ええ人やったんやろうなぁ。

子どもらも大好きなお兄さん

いつも野球するときは一緒に遊んでたらしいわ。

それがなぁ、

お兄さんが交通事故に遭って

両手両足を切断することに。

そやから退院しても

お兄さんは野球に行けへん。

それがなぁ、

子どもらが家まで来て、

「また野球、一緒にやろ!

お兄さんしかできひんことあるから」

そらお兄さんにしたら

嬉しいわなぁ。

喜んで一緒に行ったんや。

……。

それがなぁ。

……。

野球やってるやんかぁ、子どもらが。

……。

お兄さん何に使われてたと思う?

お兄さんしかできひんこと?

……。

ほら両手両足を切断すると

ちょうど5角形になるやろ……。

……。

なんの形やろうか、野球で五角形って。

……。

お兄さんホームベースとして

使われてたんや。

……。

子どもは点が入るたびに

お兄さんの身体を踏んづけて

喜んでたんや。

 

台の下の4人は

ゾゾーーッ!

「うわぁ、メチャ怖いやんけ!」

怖さに歓喜。

誰かが

「もっともっと怖い話ないんか!」

とK君にリクエストしていた。

 

その冬は

ベーシティ・ローラーズが流行り、

女子の間では

タータンチェックのマフラーが流行っていた。

そんな中1の冬。

男子はまだまだガキだった。

恋バナより怖い話。

ちなみにK君、

それからずっと

座談の名手でいてくれている。

今もなお。