「瀬津」という姓の出自は

滋賀県にある。

「瀬」は速いという意で、

「津」は港という意なので

“流れが速い港”を表す。

琵琶湖のなかで流れが速くなるのは……?

くびれた部分。琵琶湖大橋が架かるところ。

その西岸に堅田、真野(まの)があり、

今も何軒かの瀬津が暮らしている。

中世の末期、堅田衆と呼ばれる自治組織があった。

「堅田湖賊伝説」とも。

海の賊ではなくて、湖の賊。

ご先祖さま、琵琶湖の暴走族だったのか?

 

もとい。中山さんの話だ。

和邇(わに)は真野の北にあたる。

子どもの元気なあいさつに応えながら、

のどかな湖岸を散歩している中山さん。

ある日、散歩中に求人される。

そのフツーのようで

フツーでないエピソード。

町場ではありえない、地域の温かさとか

人とのかかわりあい方に

心の豊かさを感じる。

 

そして

『琵琶湖周航の歌』

1917年発祥の歌。

第三高校(現京大)の学生歌として歌い継がれ、

1971年に加藤登紀子さんが歌って

世に広まった。

その情感溢れるメロディもさることながら、

詩が心を震わせる。

 

二番の詩の

色使いがたまらない。

松は緑に 砂白き
雄松が里の 乙女子は
赤い椿の 森蔭に
はかない恋に 泣くとかや

 

………

歌を歌いなれていくとともに

中山さんは地域に馴染んでいったのだろう。

 

なんていい話なんだ。