思えば死ぬる機会は何度もあったのでしょうが、そのたびごとに潔くなれずおめおめと生きてしまい、それゆえ実に多くの人を不幸にしました。
誰かの肩により掛かっては共に倒れ…。
誰かの肩により掛かっては共に倒れ…。
誰かの腕をつかんでは共に堕ち…。
誰かの脚にしがみついては共に沈み…。
なりふり構わず生に執着するその特異性たるや、例えば何かの加減で生れ落ちる時代が違えども、 戦地において戦友らが勇ましく散りゆく中、私は塹壕で歩兵銃を抱きかかえながら小便を漏らし、そして、もはやこれまでと分かるや否や慌ててフンドシを脱いで白旗をこしらえては、敵の虜囚となりて生き延びたことでしょう。
いつの世も不思議と、志ある者が容易く逝き、無益の者ほどしぶとく生きるのだと思います。
願わくば、心身ともどもデータベースに放り込まれ、そこからまた更に多次元配列の深層へと格納され、閉ざされた空間で何をする訳でもなくぼんやりと、私に対して無条件に優しかった頃のあの人を思いながら無に帰したい。
なりふり構わず生に執着するその特異性たるや、
いつの世も不思議と、志ある者が容易く逝き、
願わくば、心身ともどもデータベースに放り込まれ、
そうすれば、もう誰かを不幸にすることも、恥を晒して生きることもせずに済むのですから。