緑の丘の上の
集合団地へ向かう白い軽トラは
荷台に自分を乗せ
その上り坂を進んでゆく。
当時3歳かそこらの自分は
荷台に立ち上がり
新しい何かが始まるように感じていたのを
今も憶えている。
そしてこれが、
自分が思い出せる
最古の自分の記憶だった。
それは今も変わらない。
それから30年後くらいか
笹塚辺りを歩いていたら
携帯に着信。
兄からだ。
「今、話せるか?」「落ち着いて聞けよ?」
落ち着かない感じの兄は
行政書士から来たと言うその手紙を読み上げる。
予想すらしてなかったその内容を
理解しようと頭の中で整理しながら
何かがついに現実になったような、
そんな感覚もあった。
その手紙は、要するに
あなた達のお父さんが死にました。
いついつが49日なんで
聞いた事も無い山口のドイナカに
実印持って御登場下さい、
ってな内容だったんだけど
自分は親父の下の名前を知らなかったし、
この手紙に書いてあるらしい苗字は
自分の幼少期のそれとは違うし、
と言うか、、、
名前も顔も知らない、
生きてるか死んでるかも知らない誰かが
死んだって、
それが実父だと言われても
自分が何を感じているのか
兄になんと返せばいいのか思いつかず
実の父が死んだと言うのに泣く事も慌てる事も出来ず
ただ少しずつ息を吸い込みながら
大して動きもしない思考を巡らせた。
暑くも寒くもない春過ぎの笹塚で。
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