前回は、テーゼとアンチテーゼという矛盾する内容の言説を区別することによって、「自由」が右派と左派ではどのように異なる意味を持つかを考えました。自由論は一言で言うと次のとおりです。「他人に危害を加えない限り、自由は尊重されるべきだ」(ミル)

 

◇ブルジョワ革命とプロレタリア革命ってなに?

 

「革命」(revolution)とは、(ア)従来の被支配階級が支配階級から国家権力を奪い、社会組織を急激に変革すること。(イ)ある状態が急激に発展、変動すること。【広辞苑】

 

民衆が蜂起して王政を力で倒し、マリーアントワネットをギロチンで処刑する。「革命」というと、フランス革命を思い浮かべる方が多いと思います。あの暴力革命がヨーロッパ各地に広がり、自分も民衆に処刑されるのではないかと、各国の王侯貴族は戦々恐々としたに違いありません。しかし、あの革命にはブルジョワ革命とプロレタリア革命という二つの段階があったことはあまり意識されていないかもしれません。

 

土地や農機具などの財産や生産手段のすべてを王侯貴族が独占的に所有していた時代に、産業革命によって工業化が進むと、特に都市周辺地域で工場や機械といった私有財産や生産手段を所有する中産階級が誕生します。彼らこそがブルジョワジーです。彼らが当時の支配階級であった王侯貴族を倒し、国家権力を奪い取った事件がブルジョワ革命(別名:市民革命)です。これにより民主主義と資本主義が台頭しました。

 

ブルジョワ革命は確かに絶対王政や封建制を崩壊させて、王侯貴族から市民が国家権力を奪い取って、民主主義を実現させたのですが、同時に、生産手段や私有財産を蓄積したブルジョワジーと生産手段も私有財産も持たないプロレタリアートの格差が広がりました。プロレタリアートがブルジョワジーから生産手段を奪い取ることによって、市民間格差を是正しようという思想から、プロレタリア革命(別名:社会主義革命)がロシア革命を生み出します。

 

「万国の労働者よ団結せよ」(マルクス&エンゲルス)共産党宣言のこの言説が、プロレタリア革命の原動力であり、今日にいたる社会主義、社会民主主義のイデオロギーの源泉です。

 

≪左派ポピュリズムの視点≫

・自由の結果がもたらす資本家の労働者からの搾取は不当である。

・機会の平等だけでなく、結果の平等が課題である。

 

≪右派ポピュリズムの視点≫

・自由の結果がもたらす資本家には利益追求の自由が認められる。

・機会の平等さえ認められていれば、結果の平等は問わない。

 

(つづく)

 

ポリティカルセオリスト

瀬戸健一郎

Kenichiro Seto