Ken Seto 2015

日本を愛するキリスト者の会の理事として、会報の巻頭言の執筆の依頼がありました。ここでは、クリスチャン向けの記事を少しアレンジして、ブログ記事にまとめましたので、ご一読頂けたら幸いです。

 

■トランプ大統領の発言が変わった真の理由とは?

 

「日本の人々が米軍を受け入れてくれていることに感謝したい。」とトランプ大統領が2月10日に行われた日米首脳会談後の共同記者会見で述べました。それまで、「日本は米軍の駐留経費を全額負担するべきだ。さもなければ、米軍は日本から撤退する。」などと述べていたのですから、驚きました。

 

実は今でも、多くのアメリカ人たちは、「日米安全保障条約はアメリカにとって不平等な条約だ。」と考えています。それは同条約が、アメリカが日本を防衛する義務を規定しているものの、日本がアメリカを防衛する義務が規定されていないことに原因があります。

 

私たち日米両国の国民はいずれも、「アメリカが一方的に日本を防衛する義務がある」という点だけが強調されるので、実は日米安全保障条約が将来に亘って、①日本にアメリカ軍が駐留し続けることを決め、②その駐留経費を日本が負担し続けることを決めた条約であるとは理解していません。

 

恐らく、トランプ大統領はかつて海兵隊の猛将と呼ばれたマティス国防長官から懇切丁寧なレクチャーを受け、日本駐留が実はアメリカ合衆国の前方展開という独自の軍事戦略上、不可欠な選択であり、その駐留経費を日本に肩代わりさせているのだから、日米安全保障条約はアメリカにとって格段に優位性が高いのだと理解できたからこそ、自らの発言を大きく変えたのだと思います。

 

■これまでも、これからも、アメリカ・ファースト

 

実はトランプ政権以前から、アメリカ合衆国は常に「アメリカ・ファースト」でした。アメリカの論理で、アメリカの国益を最大化するために、あらゆる世界戦略を展開し続けてきたのです。

 

第二次世界大戦でチャーチル英首相から援軍要請があった時も、ヒトラーがアメリカ合衆国に参戦の口実を与えず、アメリカ国民の世論も反戦ムード一色だったので、ルーズベルト大統領は参戦がアメリカ合衆国の覇権拡大に大きなチャンスだと分かっていても、動くに動けませんでした。

 

ですから、大日本帝国による真珠湾攻撃は、ルーズベルト大統領が参戦に舵を切る絶好のチャンスだったわけです。

 

「真珠湾を忘れるな」を合言葉に、ルーズベルト大統領は日本悪玉説を捏造し、戦争支持へと国民世論を喚起。遂に日独伊三国同盟を口実に、ヨーロッパの対独戦線に参戦して、アメリカ合衆国は世界の覇権国家になりました。

 

■戦後70年経って明かされる歴史の真実

 

近年、公開されたアメリカ公文書館の極秘資料によると、ルーズベルト大統領は真珠湾攻撃から1年以上も前に日本の暗号解読に成功しており、前任者のフーバー大統領は自身の回顧録の中で、ルーズベルト大統領は日本による真珠湾攻撃を事前に察知していながら、これを黙殺したと証言しています。

 

さらにヴェノナ文書によると、ルーズベルト政権内部には、約200名のコミンテルンのスパイが入り込んでおり、日本への最後通牒ともいえる「ハルノート」を起草したデクスター・ホワイトがその一人であったことも分かっています。

 

アメリカ合衆国の参戦は、日独がソ連の脅威にならないように動いたルーズベルト政権内部のコミンテルンのスパイたちの成果でもあったわけです。

 

しかしながら、これらの事実は日本でもアメリカでも、学校の歴史教科書には出てきません。ですから、日本が卑劣な奇襲攻撃を真珠湾に仕掛けたことが、太平洋戦争の原因であり、徹底抗戦を続ける大日本帝国との戦争を終わらせるために、広島と長崎への原爆投下は正しい決断だったと理解するのが、今でもアメリカ人の常識です。

 

■求められる戦後70年の総括と真の独立と解放

 

そして日本が二度とアメリカにとって脅威とならないように、マッカーサーは日本を完全に武装解除するため、War Guilt Information Programを周到に計画し、実行しました。これは、徹底的に戦争に対する罪責感を日本人に浸透させ、精神的にも日本人を武装解除させる洗脳プログラムでした。

 

アメリカ合衆国が自国の国益のために描いた日本悪玉説などのシナリオが、今も日本人の誇りと愛国心を縛り上げています。日本国も日本人も、マッカーサーが残した洗脳プログラムから解放されて、健全なセルフイメージを回復し、真の独立と自由を勝ち取らなければなりません。そうすれば、日本人はさらに大きな可能性を開花させることができるでしょう。

 

そのためには、毅然と世界に向けて日本を主張することが大事です。謙譲は日本人の美徳のひとつですが、自らを卑下するのではなく、裁くのでもなく、戦後70年の節目を総括することが今こそ求められているのではないでしょうか。

 

■平和憲法、平和主義、平和教育

 

平和憲法、平和教育、平和主義といった概念も、アメリカの占領目的から出てきた方便だという見方も可能です。しかし、日本人の血が、平和憲法を日本の国是と定め、武力によらない平和をつくるため、様々な人道支援活動を世界中に展開してきた根底には、平和主義と平和教育があったことは、紛れもない事実なのであります。

 

専守防衛に徹する自衛隊の存在は必要であり、もっと実行戦力を高めていく必要があるとは思いますが、アメリカの世界戦略に追従する形で自衛隊が海外に進出することには、もっと慎重な対応が必要だと思います。一昨年、安倍政権が強行採決した平和安全法制には大きな問題があります。

 

海外に派遣された自衛官の軍事行動が、確実に違法性を阻却されるような法整備と軍法会議などの内部統制機関の設置がなければ、世界の自由と民主主義を守るための停戦監視機能や駆け付け警護などの役割を自衛隊に担わせることさえ、簡単に決断できることではないと私は思います。

 

■積極的平和主義vs.積極的平和

 

安倍総理は、積極的平和主義と言いながら、自衛隊を積極的に活用して抑止力を強めようと考えているようですが、「抑止力で戦争のない状態を維持」することを、ノルウェーの社会学者ヨハン・ガルトゥング氏は「消極的平和」と呼びました。

 

ヨハン・ガルトゥング氏は1950年代に、単に戦争がない状態ではなく、社会に差別や抑圧、貧困や格差がない状態のことを「積極的平和」と定義していますが、現在も90歳を超えてご健在の同氏が、日本の安倍総理の「積極的平和主義」は、自分が定義した「積極的平和」とは180度違う概念であると不快感を表明されています。

 

私は日本を愛するキリスト者として、あえて次の聖書箇所を胸に刻み、今後とも世界に向けて日本を主張し続ける所存です。

 

平和をつくるものは幸いです。その人たちは神の子どもと呼ばれるから。

(マタイ5:9)

 

瀬戸健一郎(せとけん)

Kenichiro Seto (Ken Seto)

コムリサーチ合同会社代表

元・埼玉県草加市議会議員