アーミテージレポート表紙

※このアーミテージ・レポート2012に今回の安保法制が提言されていました。(リンクは文末)



参議院平和安全法制特別委員会
委員長 鴻池祥肇 様

拝啓

秋冷の候 益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。また、困難な今回の安保法制審議に対しましては、磯崎陽輔首相補佐官に対する毅然たる態度を表明され、さすが良識の府を担う自民党ベテラン議員の風格に希望の光を見た思いでございました。

 さて、今回の安保法制は2012年のアーミテージ・レポートに端を発した日本政府に対する、アメリカ合衆国の指示に沿った作業であり、必ずしも日本国の国益や日本国民の幸福追求権に沿ったものではありません。日本国の将来を十分に構想し、全国民的な議論と対話を経ないまま、当法案審議を打ち切り、採決行為に臨むことは憲政の常道に反します。

 以下、想定されるいくつかの問題点を指摘させて頂き、採決を差し止めて頂きますよう、伏してお願い申し上げる次第です。

■アメリカが想定するイスラム国に対する大規模空爆と掃討作戦

 来年、アメリカ大統領選挙で3代目のブッシュ政権が誕生すれば、二人の米国人ジャーナリストが殺害された米国として、同じく二名の人質が殺害された日本と協力して、イスラム国に対する大規模な空爆と掃討作戦が実行されるかもしれません。

 そのためにこそ、今回の安保法制が必要なのであり、関連法案は、いずれが欠けても、日本の自衛隊はイスラム国に対するアメリカの軍事行動に参加することが出来ません。

 ここが今回の安保法制の肝の部分です。憲法学者のほぼ全員が違憲であると指摘しているように、本来は憲法改正が先行すべき法案を強行採決することは、立憲政治に対する冒とくであると断じざるを得ません。

■体制としての安保法制と日本人が選択することになる悲劇

 周辺事態に関しては、日米安保条約がある限り、中国や朝鮮半島から日本が直接武力攻撃を仕掛けられることは現実的想定ではありません。

しかし、イスラム国に対して、オバマ氏が大統領権限の発動によって相応な報復攻撃を行わなかったことが、アメリカ合衆国の内部に不満として溜まっています。だから、対テロ戦争は既に始まっているものと見なして、日本をその反撃の戦いに巻き込むことで、アメリカ合衆国一国が浴びる国際世論の反発をかわす。さらに、その戦費も日本に負担させるためにこそ、アメリカ合衆国にとって、今回の安保法制が不可欠だったわけです。

 問題は、この対テロ戦争にこのまま踏み込んでもいいという日本国民側のコンセンサスがあるかないかなのだと思います。

 ここに踏み込めば、中東に多数ある日本人学校の子どもたちが人質にされて、一人ずつ殺されていく。東京の地下鉄はもはや安心して利用できなくなる。そのような事態が起きた時に初めて、これら関連法案を一括で法制化したことが誤りであったなどと反省しても、その時には、血で血を洗う戦争の泥沼に、私たちはもはや、はまって抜け出せなくなっていることでしょう。

■十字軍に遡る欧米vs.イスラム世界の歴史と日本の役割

私はクリスチャンでもある日本人です。アメリカが足を踏み入れて抜け出せないでいる対テロ戦争の歴史的、宗教的、民族的な問題の本質がよく見えている一人でもあります。ですから、キリスト教世界とイスラム教世界がこのような憎しみの連鎖を十字軍の歴史以来、断ち切れていないことに対して、私は日本国こそが、欧米諸国とイスラム世界の和平を執り成すことのできる唯一の国民国家であると確信しています。

アメリカとの同盟関係は世界で最重要な二国間関係であることは否定できない事実です。しかし、今こそ、日本国がアメリカ合衆国による占領70年から脱皮して、『等身大の日米関係』を築き始めるために、アメリカ合衆国に対しても毅然たる態度を表明し、日米両国の国民が過去の歴史を振り返り、それぞれに為すべきことを為してこそ初めて、日米同盟が世界平和に真に貢献する力となることでしょう。

これ以上、私は愛する祖国・日本国が「アメリカのポチ公」だと見られ続けていることに耐えられません。国家としての独立自尊、誇りを取り戻すためには、アメリカ合衆国の特に軍産複合体の影響とその傘下に甘んじて、追米思想を続ける政治を手放さなければならないと痛感しています。

どうぞ、今回の安保法制関連法案の採決を差し止めて頂き、参議院が「良識の府」であることを示して頂きますよう、心からお願い申し上げます。

敬具


瀬戸健一郎(せとけん)
Kenichiro Seto (Setoken)

参考:

演説ビデオ『安保法制を認めるな!~平和主義と立憲政治を守るために。』
https://youtu.be/ky0H08ETs2Y?list=LLXKXcG3_6LugDpNz7dVkT9w
ブログ記事『イスラム国の人質事件に思う~アメリカの外交政策とパレスチナ問題の本質』
http://ameblo.jp/setokenichiro/entry-11980880689.html
アーミテージ・レポート2012(原文)
http://csis.org/files/publication/120810_Armitage_USJapanAlliance_Web.pdf
アーミテージ・レポート2012(邦文)海上自衛隊ホームページ内
http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-033.html


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