※ミッションオリエンテッドな(使命を帯びた)知事と議員の対話が政治を活性化させる。埼玉を変える。日本を変える。~2015年2月11日 草加駅東口アコスホールで行われた山川百合子県政報告会より

■土屋義彦という政治家~隠れた権力者たちの思惑の中で・・・

「権力によらない、ひまわりのような県政を!」それまで5期20年間の長期政権を担った畑和埼玉県知事を破って誕生した土屋義彦知事がいつも口にされていた言葉です。草加市で開催されている草加市ハープフェスティバルに皇后陛下が行啓された折、当時、草加市議会議長として陛下をお迎えする私の耳元で、土屋知事は「皇后陛下は私を庶民派の変わり者だと思っておられるんだよ。」と囁き、私の緊張をほぐして下さいました。大きくて、気さくで、とても優しい方でした。それでもいざ、陛下を目の前に迎えられると埼玉県民を代表し、サッと背筋を伸ばし、直立不動で、だれよりも緊張した面持ちで陛下のご挨拶を受け止めておられたのが印象的でした。

権力―。これが難しい。私は土屋義彦知事から偉そうな権力の匂いやオーラを感じたことがありませんでしたし、県庁の職員もやりがいをもって活性化していたようですが、政治的判断に必要以上に踏み込んでくる職員には「そのようなことは選挙に勝ってから言いなさい。」と諌めておられたというエピソードも耳にしていました。政治家の領分をわきまえ、行政権力に対して抑制の効いた政治家でしたが、実の娘さんがその父親の権力を笠に着て、自分の経営する会社の運営に父親の政治資金を流用したために、土屋知事は3期目の任期を1年残して、引責辞任しました。

権力は権力者本人よりも、その取り巻きが要注意なのだと私は思いました。

土屋知事ご自身の誕生の背景に畑県政の長期化を懸念する声があったのも事実ですが、長年、埼玉県議会の多数派でありながら、畑革新県政の下で行政権力から離れている自民党埼玉県議団の焦りもありました。しかし、現職の参議院議長、三権の長の職にあった土屋義彦という政治家が自民党県議団に操られるはずもありませんでした。出馬表明の後に吹き荒れた「土屋降ろし」に対抗したのは、埼玉県下のすべての保守系市議会議員団でした。私もその一人です。

権力は権力者本人よりも、その取り巻きが要注意なのだと私は今も思っています。

■長期政権の弊害を憂うより、政治が活性化されていることが大事。

知事や市町村長の多選は権力構造を固定化させ、長期政権は様々な弊害を生む。確かにそのような懸念は「流れる水は腐らず」という諺を逆説的に連想させます。確かに「淀んだ水は腐る」などと、諺本来の教訓を裏読みすることは可能ですが、それは裏読みに過ぎないと私はあえて申し上げたいと思います。「流れる水は腐らず」という諺の本旨は、常に活性化された状態を保っていきましょう。常に改善の努力をしていきましょう。立ち止まらず、常に前を見て進んでいきましょう。ということであり、これがこの諺の教訓の正しい理解なのだと思います。

長期政権はその裏側で自分たちの党派が実権を握れない人々の権力に対する執念を駆り立てるのかもしれません。デモクラシーの世の中で、人々の期待と支持が受けられれば、政権交代は可能です。しかし、権力構造が長期政権の下で固定化されてくると、これを崩すことは難しい。その権力構造がその社会の秩序にまでなっている可能性があるからです。

多くの独裁政治が行われてきた国家で起きていたことはこのことです。そして国民はその秩序の中で生きることが当たり前となり、幸せだとすら感じるようになります。「淀む水は腐る」のではなくて、「流れる水は腐らず」が本旨です。常に国民の幸福追求の権利が保障され、常に言論の自由をはじめとする自由と平等が保障され、常に国民個々人の可能性を開花させる環境に向けて発展し続ける社会であれば問題はありません。

アメリカ合衆国の大統領の任期が2期までと憲法で定められているのも、アメリカ国民が政治権力への不信から定めたものではなく、よりよき国家となるために不断の努力をしていく覚悟から定めた全国民的なコンセンサスなのであって、現実に今年、共和党、民主党、各党の内部において多くのポスト・オバマの大統領候補が名乗りを上げています。このことで、4年に一度、アメリカ合衆国は国家の最高権力者を選択する全国民的な政治参加の機会を乗り越え、彼らのデモクラシーを活性化させ続けているのです。

日本の政治についても、自民党が一党独裁で長期政権を担うことの弊害を考えれば、自民党以外の政党が万年野党に成り下がるのではなく、当事者意識をもって政権政党たらんとする努力は不可欠ではあるものの、一方で自民党の党内政治が派閥の力学と揶揄されながらも、常に活性化していたからこそ、55年体制は総体的に国民の支持を得ていたわけで、私は自民党がかつての政治のプロ集団としての活力を失っていることの方が、むしろ今日的な問題だと感じています。

■埼玉県知事の在任期間に関する条例について

前段に権力とよばれるものの実態や政治が活性化されているという状態について論じてきましたが、そろそろ本稿の主題に議論を進めていきたいと思います。今回、上田清司埼玉県知事が4選出馬を表明したことについて問題視されているのは、上田清司知事が2003年の最初の知事選挙でマニフェストに明記し、就任直後の2004年に自ら知事提案して制定した「埼玉県知事の在任期間に関する条例」が存在することです。以下がその条例です。

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埼玉県知事の在任期間に関する条例

     平成16年8月3日
     条例第52号

埼玉県知事の在任期間に関する条例をここに公布する。
埼玉県知事の在任期間に関する条例
(目的)
第一条 この条例は、知事が幅広い権限を有する地位にあることにかんがみ、知事の職に同一の者が長期にわたり在任することにより生ずるおそれのある弊害を防止するため、知事の在任期間について定め、もって清新で活力のある県政の確保を図ることを目的とする。
(在任期間)
第二条 知事の職にある者は、その職に連続して三期(各期における在任期間が四年に満たない場合も、これを一期とする。)を超えて在任しないよう努めるものとする。
附 則
この条例は、公布の日から施行し、同日に知事の職にある者について適用する。

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これによれば、埼玉県知事の職にある者は、4期目以降の選挙に立候補しないように努力することになっていますので、上田清司知事の4選出馬表明はこの条例に違反していると自民党県議団は反発し、天皇陛下の執刀医である順天堂大学の天野篤教授に今年8月に行われる埼玉県知事選挙に立候補するよう要請したことが報道されました。

■法の精神と法令遵守の観点から上田知事4選問題を考える

法体系全体を考えれば、その頂点に最高法規としての憲法があり、その下に法律があります。この法律を運用するために、各省庁が政令や省令を定め、都道府県条例があり、市町村条例がこれに倣って各地方自治体の議会が制定します。1945年に日本でも女性参政権が認められ、1947年5月3日に施行された日本国憲法において地方自治が規定されて以来、それまで政府の任命職であった知事が都道府県民によって直接、選挙で選ばれるようになりました。

官選の知事職が公選制に変わり、民意によって自由に知事を選べる仕組みに変わったというのに、そもそも憲法でも法律でも規定されていない知事の任期制限を条例で規定するということの意義がまず問われるべきではないでしょうか。

言うまでもなく、アメリカ大統領の任期制限は明確に憲法において規定されているのであって、下位の法令が国民の権利を制限しているわけではないのです。

また、埼玉県知事の在任期間に関する条例も、憲法や法律の規定を侵害することがないように、任期を制限する規定にはなっておらず、あくまでも「努力規定」とか、「理念規定」と呼ばれる条例として定められているのです。

埼玉県の最高権力者たる「知事の職にある者」が、権力に執着して自らの権力基盤の延命に奔走することを戒める条例としての意義は大きいと思います。しかしそれは、現に知事の職にある者が努力目標として規定されている任期を超えることを理由に、750万県民のための県政を放り投げても構わないという理屈にはなりませんし、埼玉県民にも常に現県政に対する審判を下す権利は保障されているべきです。

一部の人々の権力闘争の中で、一般県民の選択肢が奪われるようなことにでもなれば、それは憲法の精神に反することであり、法令遵守の本筋を曲げる枝葉末節な議論に陥る危険性を考慮しなければならないと思います。

■想定される上田知事4選に対する否定的議論の盲点について

今後、想定される次のような議論について考えてみたいと思います。「埼玉県知事自らが制定した条例を破って4選を目指すようでは、県民を条例に従わせることはできない」という議論です。確かに、この議論には一定の共感が県民各界各層に浸透する可能性があります。

ここで問題になるのは、努力規定である当該条例を破った、もっと分かりやすく言えば、条例違反をしたという証拠が示せる議論であるかどうかというポイントです。明確な任期制限を規定した条例でない限り、4期目の立候補をすること自体が条例違反にはなりません。

それでは4期目の立候補をしないで済むような「努力」を上田清司知事がしなかったことが条例違反だと証明できるでしょうか。上田知事が正式に立候補表明したのは一昨日の6月18日のことで、正に任期満了間近のことです。デモクラシーの社会で、権力者が後継者を育て、後継者指名を行い、自らの引退後の選挙に候補者を擁立するというのは健全なことではありません。これでは頭だけが挿げ替えられても既存の権力構造は温存される危険性が大きいからです。

つまり条例の趣旨と精神を尊重して上田清司知事に出来ることは、自らの権力に執着せず、既存の権力構造を延命させるための政争に自らを駆り立てることのないように、真摯に、誠実に、自重自戒しながらも、自らに与えられた職務職責を全うすること以外にはなかったというのが現実です。

むしろ問題なのは、埼玉県知事の在任期間に関する条例を最高権力者である上田清司知事本人が知事提案して制定しているにも関わらず、その目標期限が今年の8月に迫っているのに、上田県政に対する客観的な総括とポスト上田県政をどのようにしていくのかという議論をせずに、間際になって天皇陛下のご威光を頼りに稀有な心臓外科医を知事候補に立てようなどと画策する人々の真意の方だと思います。私はそのような人々の責任管と当事者意識が理解できません。

畑政権の20年、土屋県政の11年、そして上田県政12年の通算43年間に亘り、埼玉県民は片側で自民党の単独過半数を埼玉県議会では支持しながら、それとは一線を画す埼玉県知事を選んできたと言えるのだと思います。埼玉県民の二元代表制に対する絶妙なバランス感覚が、これまでの時代時代に叶った埼玉県土の発展を切り拓く原動力だったのだと思います。

今回も冷静に埼玉県政の中身をじっくりと見極め、埼玉県民として賢明な政治判断をしていきたいものです。

■なぜ、上田きよし知事は4選を目指すべきなのか

上田清司知事が就任の翌年2004年に埼玉県知事の在任期間に関する条例を制定した頃は全国各地で知事や市町村長の多選が問題だと議論されていました。多選批判は大きな国民世論でもあったのです。そのような民意を敏感に察知していち早く条例化させた上田知事の実行力には敬意を申し上げたいと思いますが、実際の政治は自ら期限を区切って充分な成果が創り出せるほど、単純なものではないのではないでしょうか。また、政治家の任期を決めるのは、本人の使命感と意欲と気力体力が限界に達しない限り、主権者の側なのだという真実をむしろ政治家は謙虚に受け止めるべきなのだと思います。もちろん、権力への執着は本末転倒の自己中心的な論理です。

私が上田清司知事の4選出馬を支持する最大の理由は、上田清司知事の問題意識や問題解決能力、行政機構を動かす手腕とリーダーシップが卓越していて、自らの権力誇示をせず、権力基盤の安定のために既存の権力に媚びない政治姿勢、そして何よりも県民目線で常に県政の課題、日本の課題、市町村の実情を見つめる誠実さがあり、それを凌ぐ他の知事候補が見当たらないことです。

当然、選挙告示までに我こそはという候補者は出てくることと思いますが、その時いち有権者として、上田清司知事を基準に候補者選択できる環境は、埼玉県の最高権力者を選ぶために埼玉県民が保障されるべきデモクラシーの大前提のセイフティネットとして担保されるべきだと思います。

冒頭のYoutube再生リストを是非ともご覧いただき、上田きよし知事という政治家の人柄と実績、そしてこれから4年間の上田県政に期待できるものを皆様ご自身が感じられるか否かを、是非ともご判断頂ければと思います。ただし、このブログ記事は上田清司現職知事を多選自粛条例を理由に排除しないことの意義を論じる意図で公開するものであり、その他の候補者の立候補を妨げる目的のものでは断固としてないことを最後に申し上げておきたいと思います。

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瀬戸健一郎(せとけん)
Ken☆ichiro Seto



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