$草加市議会議員 瀬戸健一郎 オフィシャルブログ「だれもが幸せなまちをつくろう!」Powered by Ameba-世界と議会

※昨年の10月18日に憲政記念館に寄稿した私の小論が、ようやく今年の1月20日付けで出版されました。
※自民党の選挙公約だった国土強靭化計画やインフレターゲット2%ありきの公共投資策は、この小論の寄稿後に発表されたものでしたが、似て非なるものであると自負しております。
※市議会議員という立場ながら、世界の中のニッポンを構想し、現状を分析し、処方箋を立て、日本国のあるべき姿を示さずにはいられなかった昨秋の心境が伝われば幸いです。


一般財団法人 尾崎行雄記念財団 www.ozakiyukio.or.jp

世界と議会 World and Parliament 2012年度冬号

◇特別寄稿◇――――――――――――――――――――

日本を変える
  ―日本型情報スーパーハイウェイ構想と国土維新計画

瀬戸 健一郎
(草加市議会議員)


グローバル化した世界の中で生き残るためには、グローカルな発想としくみが必要であり、国家という垣根を、いかに低く、シームレスにしていくことができるかという問題を解決していかなければなりません。

インターネットで世界中がつながり、世界中の人とモノが速く安全に行き交うことができる時代であればこそ、「情報」と「物流」を制することが国家の浮沈と国民の幸福を左右する重要な課題なのではないでしょうか。

そこで、日本国内の情報インフラを整備推進し、世界への発信力を向上させる「日本型情報スーパーハイウェイ構想」と、東京もしくは大阪に人とモノが半日で往復できる「国土維新計画」を私は提案します。


■日本型情報スーパーハイウェイ構想

①すべての国民の情報アクセスを平準化


大都市周辺自治体のみならず、地方の山村や農村、全国すべての世帯に光ファイバーによる高速通信回線を普及させ、TV電話のような新しい情報コミュニケーション機器を介して、医療過疎地の独居高齢者が自宅に居ながらにして医師の診断を受けたり、視聴者参加型プログラムに参加したり、さらには国や地域の課題解決のためのディスカッションやアンケートに参加するなど、すべての国民の情報アクセスを平準化することを提案します。

これを実現するために、国土全域における情報のアクセシビリティを充足する情報インフラを整備することが「日本型情報スーパーハイウェイ構想」のハード面の基本ビジョンであり、日本全世帯に普及する新しいコミュニティ参加ツールとして、これまでの電話やテレビのように、だれもがストレスなく操作できる汎用性の高い双方向のハイビジョン情報伝達ツールの研究開発を助成し、独居高齢者も孤立させない新しい社会参加モデルをめざすべきと考えます。

このシステムを通じて、将来は選挙での投票はもとより、直接民主制に近い住民投票や住民意向調査などが物理的に容易となり、「e-デモクラシー」が実現できることを期待します。IT分野を取り入れた日本型デモクラシーを建て上げていくことは世界にも大きく貢献することになるだろうと考えます。

②すべての国民が商品出品者になれる

 高級料亭の料理に添えられる草木、草花、葉っぱを採取して販売する山村があるように、日本の地方の農家や町工場が自慢の作物や製品を世界に販売するために必要な情報発信力を情報インフラが可能にします。ポータルサイトの企画運営、多言語サポートを含む情報発信のためのサポート、電子決済システムなど、すべての国民が商品出品者になれる新しい公共サービスを提案します。

 小さな農家の高級果物や町工場の高精度加工品など、高品質な作物や製品をウェブ上に直結させることが「日本型情報スーパーハイウェイ構想」のソフト面の基本ビジョンです。地方に潜在している、これらの「ニッポンの底力」を開拓し、世界市場に情報発信するサポート機能を地方自治体が担うことで、地方が活性化し、日本全体が元気になるだろうと考えます。

■国土維新計画

①2つの国際ハブ空港の整備


 国内外に同時に向けた本格的なハブ空港がないことが将来の日本を国際社会の中で空洞化させる大きな要因になることが懸念されます。日本を経由すれば世界中の都市にアクセスできるということが、日本を世界の中心に据える物理的な条件であることは言うまでもありません。東京国際空港と関西国際空港の拡張による2つの国際ハブ空港の整備は最大級の国家プロジェクトです。

 仮称「大阪都法」という地方自治法の改正によって、東京一極集中が東京―大阪二極化にむかう可能性が現実的に動き出そうとしていますが、2つの国際空港をハブ空港化することで、台風襲来時にも日本の空の玄関の一方は閉鎖されることはなくなり、日本を経由する国際便の大幅な増便によって、新東京国際空港(成田)の機能が減少することもないだろうと考えます。

②リニアモーターによる新たな高速軌道交通路の確保

東京国際空港と関西国際空港の国際ハブ空港化によって、日本への世界からの人とモノの流れが拡大します。本来、ハブ空港は国内外の空路を接続するものですが、東京―大阪間の人とモノの移動はすでに国内最大規模であり、距離的にも比較的近いため、現在でも空路と新幹線が競合する区間です。これがリニアモーターで結ばれれば、移動時間は一時間圏内となり、東京―大阪の2極が陸路でも有機的に結ばれることになります。

リニアモーターの路線計画は、東京国際空港(羽田)から比較的距離のある新東京国際空港(成田)への延伸を含め検討する必要があると思いますが、基本的に東京―大阪の2つのハブ機能(心臓)を結ぶ大動脈としての機能として位置付けるべきであり、国土維新計画は、日本列島全体として世界のハブ機能を有機的に担うことをめざすべきであると考えます。

③整備新幹線計画と高速自動車国道計画の検証と推進

東京―大阪二極化に伴う均衡ある国土の開発を推進するため、これまでの整備新幹線計画と高速自動車国道計画の戦略的な見直しが必要だと考えます。さらに平行在来線を含む軌道交通網と一般国道を含む道路網をこれらと有機的に接続し、全国どこからでも東京もしくは大阪と半日で往復できる陸路を確保し、地方都市間は空路で結ぶことが国土維新計画のもうひとつの課題です。

国土維新計画のような国家プロジェクトは国民的なコンセンサス形成を図りながら推進することが必要であり、環境アセスメントが重要です。さらに、このプロジェクトは、全国を網羅した毛細血管としての機能を担う地方道路の整備事業と同時進行することが望ましく、この分野についての都道府県や市町村の権限を強化し、国と地方の財政構造を抜本的に見直し、交付金制度に代る新しい地方間財政格差の調整制度も検討することが不可欠であると考えます。

■日本を変える

本稿で提案する「日本型情報スーパーハイウェイ構想」と「国土維新計画」を推進することによって、大規模な内需拡大が実現し、大きな景気浮揚効果も生み出すことになりますが、これまでの公共事業よりも明確なビジョンと日本再生に向けた投資的な事業であることから、日本は新たな国家モデルを世界に示すことが期待されます。

さらにこのプロジェクトを推進することによって、国と地方の役割分担の明確化と財源配分の抜本的な見直しが迫られ、国税と地方税の税源区分や課税方式の多様化を含む大きな税制改正と意思決定システムのIT化を含む国と地方の統治機構の改革が実現することでしょう。

日本を変える。~これらのプロジェクトを推進するプロセスの中で、日本人は日本型デモクラシーを確立していくこととなり、個人が活かされ、地域コミュニティや国家との関係が明確になり、自由と参加の有効感覚が実感できる土壌を完成させることができると信じます。

日本全国に「だれもが幸せなまち」を実現させていきたいと希望します。

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以上


この小論は、国立国会図書館でも閲覧していただくことができますが、購入をご希望の方は一部400円で頒布されているとのことです。詳しくは、憲政記念館(尾崎行雄記念財団)までお問い合わせください。

瀬戸健一郎
Kenichiro Seto
草加市議会議員
Soka City Councilor