マッケンジーを乗せたマックは4日かけて走り続けた。ある時は沢山の車と一緒に大都会の高速道路を、またある時は川の上に渡る橋を渡り、そしてまたある時は、車通りの少ない町はずれの田園地帯や山間を走った。そして5日目の昼頃にマックは荒野と岩山に囲まれたオーナメント・バレーに辿り着いた。
マッケンジーはマックのトレーラーの窓から外を覗いた。見渡す限り荒野が広がり、人っ子一人見当たらなかった。「本当にここであってるのマック。」「もうすぐ着くさ。オーナメント・バレーまで戻って来てるからな。」無線越しにマックが答えた。
窓の外にマックイーンのイラストの横に「マックイーンの故郷、ラジエーター・スプリングスにようこそ」と書かれた寂れた大きな看板が見えてきた。不意にマックが停車したかと思うと、無線からマックが話しかけた。「着いたぞ坊や、ここがラジエーター・スプリングスだ。」
扉を開けてトレーラーから出てきたマッケンジーは言葉を失った。マックイーンの故郷、ラジエーター・スプリングスは古ぼけた建物が立ち並び、車の姿はどこにも見当たらない小さな寂しい町だった。
「ここであってるのかマック、ここにマックイーンがいるとはとても思えないんだけど。」マッケンジーが問い詰めた。「でも、そこの看板にもラジエーター・スプリングスって書いてあっただろう?」
「あら、お客さん?」声がした方を振り返ると、ガソリンスタンドから店主、フローが出てきた。「まあ、一応そうだけど。」「お客さんよ!皆、お客さん!」「お客さん?」「お客さんって言った?」フローの声でルイジやグイド、ラモーン、サージにフィルモアが店から出てきた。
車達に囲まれてマッケンジーが戸惑っていると、1台の青いポルシェが現れた。「こんにちは、私はサリー。サリー・カレラ。オーナメント・バレーの玄関口、キャブレター群で一番可愛い、愛と思いやりに溢れたラジエーター・スプリングスにようこそ。ご用件は何でしょう?タイヤ?ガソリン?お土産?何でもおっしゃってください。」
「いや、俺、車を探してて……。」「車?こんなところに探しに来る車なんているのかい?」町で1番年寄りのリジーがぶっきらぼうに言った。「マックイーンを探しに来たんだってさ。」マックが答えた。「ああ、マックイーンならウイリー・ヴュートにいると思うよ。俺が連れてってやるよ。」そう言うとメーターはマッケンジーをレッカーしていった。
 
「いやあ、まるでマックイーンが来た時を思い出すよ。あの時のマックイーンはあんたと違ってこの町に迷い込んでね。最初はこの町から出たがってたんだけど、だんだんこの町も町の皆の事も気に入って今じゃすっかり仲良しさ。ところであんたはここに何しに来たんだい?」「マックイーンに教えを請いに来たんだ。」
マッケンジーがこの町に来た理由を話すとメーターは立ち止まった。「どうしたメーター。」「あー。この町に来てくれたのは嬉しいけど、それは諦めた方が良いかも。」「どうして?」「……まあ、色々あるんだよ。」メーターは意味深げに言って、再び進み始めた。
メーターはウイリー・ヴュートの谷底までレッカーしてくるとマッケンジーからフックを外した。「さあ、着いたよ。いつもマックイーンはここにいる事が多いんだ。でも見当たらないな。きっと近くにいるはずだから探してくるよ!」マッケンジーが答える前にメーターは飛び出して行った。
メーターが駆けだしたのを見送ったマッケンジーは不意に遠くの方からエンジン音が近づいてくるのを耳にしてゆっくりと振り返った。埃っぽい乾いた荒野の彼方から太陽の光を受けて車体を赤く煌めかせて1台の車がマッケンジーめがけて突っ込んでくる。
マッケンジーが慌てて飛び退こうとする前に車はマッケンジーにぶつかる寸前で彼の目の前で砂埃を上げて急停車した。砂埃が晴れるとマッケンジーの前に一昔前の古いレーシングカーが姿を現した。赤い車体の横腹には大きな金色の稲妻のステッカーが貼られている。
マッケンジーの口から思わずその車の名前が漏れた。「ライトニング・マックイーン?」「そうだけど。」マッケンジーの前に突如として現れたこの車こそが、マッケンジーが探していたライトニング・マックイーンだったのだ!
「君は?」「お、俺はフラッシュ・マッケンジー。あんたに俺をプロのレーサーになるように指導してもらいたくてここに来たんだ。マックイーン、俺の事を指導してくれないか?」マッケンジーはマックイーンの返事を待った。
マックイーンは暫く考え込んでいたようだったが……やがてマッケンジーに砂を浴びせて、立ち去った。「おいちょっと、どこ行くんだよ!」砂煙に咳き込みながらマッケンジーはマックイーンの後を追いかけた。
マックイーンのスピードもテクニックも衰えていなかった。彼よりはるかに若いマッケンジーですら追いつけなかった。「やるな、流石伝説のレーサー!」マッケンジーはそう呟いた。
突然目の前を走っていたマックイーンがハンドルを右に切った。するとマックイーンは左へと曲がったのだ。ドリフトだ。そのまま彼はウイリー・ヴュートの谷を後にした。マックイーンのテクニックに目を奪われていたマッケンジーは前をよく見ておらず、深い穴に落ち、斜面を滑り落ちて麓のサボテンの茂みに突っ込んだ。
マッケンジーが悲鳴を上げたのを聞きつけたメーターが駆けつけて、穴の上からひょっこり顔を覗かせた。「あー、思い出すよ。マックイーンもそこに落ちた事があるんだよ。」
 
町に戻ったマッケンジーはマックイーンがガレージのドアを乱暴に開けて入っていったのに続いてた。「話を聞いてくれよ!」「俺はお前のコーチになんてならない!分かったらさっさと出て行け!」
「あんたは俺の憧れなんだ!あんたがレースを楽しんでる姿やコーチしてる姿に憧れてこの世界に入ったんだ!あんたに憧れてレースを始めた!あんたに憧れてレーサーになる夢を持った!俺はレースに生きているあんたみたいなレーサーになりたいんだ!そのあんたにコーチしてもらいたいんだよ!」「諦めろ。俺はレースを捨てたんだ。」
マックイーンの冷たい言葉にマッケンジーの心は傷ついた。「そうかい。分かったよ。あんたがそんな事を言う奴だとは思わなかった。俺が憧れていたライトニング・マックイーンはレースに生きている奴だったのに。」そう言うとマッケンジーはドアを乱暴に開けてガレージの外へ飛び出して行った。
1人になった暗いガレージにマックイーンの重いため息が流れた。マックイーンは壁に飾られた師匠のドックと自分が並走しているトレーニング中のところを撮った写真を眺めて独り言を呟いた。「ドックがいてくれたら答えてもらえるのに。俺が彼に走りを教える資格があるのか……。」
「またドックに助けを求めてたの?」自分だけがいるはずのガレージに突然声が響き、マックイーンはハッとして振り返った。サリーがガレージの扉を開けて、マックイーンを見つめていた。「ああ、やあサリー。ドックならもしかしたら俺が誰かに走りを教えてもいいのかどうか答えてくれるかもしれないと思ってね。」
「そうね……、ドックなら彼にあなた自身にどうするか判断させたんじゃないのかしら。」サリーが考えながら答えを出した。「え、どうして?」「自分の人生だもの。道の選択は自分で決めるものよ。それにあのレーシングカー君にレースの極意を教えるのはあなたにとっても、皆にとってもチャンスじゃないかしら?」
「どういう意味?」「あなたがあのレーシングカー君をプロのレーサーとして育て上げれば、あなたはレース界に戻れるし、この町もまた注目されるのよ。このチャンスを逃せばこの町も、あなたの人生もこのまま終わってしまう。」「でも僕にそんな資格なんて……。」サリーはマックイーンがレース界から身を引いた理由を引きずっていると分かっていた。
「誰にでもやり直すチャンスはあるのよ。あとはあなたがそのチャンスを掴むか棒に振るかよ。」マックイーンは壁一面に張られた自分の写真を見た。自分がルーキーだった時の写真、ドックにコーチしてもらっている時の写真、ワールドグランプリに出た時の写真、クルーズをコーチしている時の写真……。
写真を見ているうちに自分が輝いていた時の時代の記憶が蘇って来た。サーキットに戻れるチャンス……か。マックイーンの顔に徐々に笑みが広がって来た。「そうだね、俺はこのチャンスを無駄にはしないよ。」
フローのV8カフェでラジエーター・スプリングスの住民達は項垂れるマッケンジーを励ましていた。「そう落ち込むなよ兄ちゃん。マックイーンもそのうち気が変わってお前さんに教える気になるよ。」ラモーンが慰めた。
「さあさあ、そんなに気を落とさないで、喉乾いたでしょ?オイルを飲んで元気を出して。」フローがオイル缶を差し出して言った。「俺の作ったオーガニックオイルを試すか?」フィルモアが自分の作ったオイルを勧めると「あの気持ち悪い燃料は飲まん方が良いぞ。胸やけがして気分が悪くなる!」とサージがすかさず言った。
そこへマックイーンがやって来た。「そこで何やってるんだマッケンジー。トレーニングを始めるぞ。」「何だよ、俺にレースを教えてくれないんじゃないのか?」「教えるよ。教えなくていいのか?」「え?今なんて……。」「だから、レースのコーチをしなくていいのか?」
「本気で言ってるのか?」「本気さ。早くしないとまた気が変わるぞ。」それを聞いてマッケンジーだけでなく町の住民全員が笑顔になった。メーターがサリーに気づいて耳打ちした。「流石、サリーだね。」「当り前よメーター、私を誰だと思ってるの?」サリーはクスクス笑って答えた。
 
マックイーンはマッケンジーをトレーニングする為にメーター、ルイジとグイド、サージそれからクルーズにトレーニングの手伝いを頼んだ。マックイーンはまずマッケンジーのスピード、テクニック、スタミナを確かめる事にした。
「まずはウイリー・ヴュートをクルーズより先に3周してゴールしてみるんだ。」「えっ、でもマックイーンさん、私……。」「大丈夫だクルーズ。3周だけ。頼むよ。」自分の提案に困惑するクルーズをマックイーンは宥めた。
「彼女より先に3周?そんなの余裕だ、楽勝だね。」「そうか?それならやってみろ、お手並み拝見と行こうか。ルイジ!」「位置について、よーい、はいスタート!」ルイジの合図でマッケンジーとクルーズはスタートした。
マッケンジーはスタートダッシュを切り、クルーズの前に立っていた。最初の2周はマッケンジーが優位に立っていたが、3周半した辺りでマッケンジーに異変が現れた。視界がぼやけたかと思うと息苦しくなってスピードが落ち始めた。スピード・レース・アカデミーの最終レースの時と同じように。
「どうした坊や、スピードが落ちてるぞ!」マックイーンが叫んだが、その声はマッケンジーに届いていなかった。マッケンジーのスピードが落ちた隙にクルーズはマッケンジーを追い抜かした。クルーズの後姿が遠くなってくのを見ているしかないマッケンジーの頭の中にスピード・レース・アカデミーの最終レースでトロイに抜かされた時の記憶が蘇った。
クルーズが先にフィニッシュラインを通過し、マッケンジーが少し遅れてフィニッシュラインを通過した。フィニッシュラインを越えたところで息を切らしながら立ちすくむマッケンジーを見てマックイーンは口を開いた。「よし、何をすれば良いのか分かった。」
 
マックイーンは今度はウイリー・ヴュートの外れの荒野にマッケンジー達を連れてきた。マッケンジーの前にタイヤをタイヤを山盛り持ってきたグイドが現れた。「ここで何するの?」マッケンジーの質問にマックイーンが答えた。「レース中は何が起きるか分からない。相手の動きや突然のクラッシュ、それを乗り切るのに瞬発力が必要だ。だからまずは瞬発力を鍛えるトレーニングをするんだ。グイド、始めてくれ。」
マックイーンの合図とともにグイドはマッケンジーめがけてタイヤを投げつけ始めた。「え?何?うわっ!」突然の出来事にマッケンジーの頭は混乱して追いつけなかった。「そのタイヤを他のレーサーだと思って避けろ!」マックイーンが叫んだ。「そん、なの、無理、だよ!」マッケンジーは懸命に身を翻したが、避ける方向にグイドが投げたタイヤが飛んでくるのでマッケンジーはもろにタイヤを食らった。
 
次にマックイーンはサージにマッケンジーのトレーニングをしてもらう事にした。「さっきの走りを見たところ、お前にはスタミナがない。サージ、彼に体力をつけてやってくれ。」「了解だライトニング。訓練生、位置につけ!」サージの怒鳴り声が響き、マッケンジーは思わず背筋を伸ばした。
「今からワシが貴様をビシバシ鍛えていくからな!覚悟しろ!」「サー、イエッサー!」サージはマックのフロントグリルとマッケンジーの後部バンパーを紐で結んで、ニュートラルのマックを引っ張らせた。「アクセル全開!エンジンをフルで回せ!」うんうん喘ぐマッケンジーに向かってサージが怒鳴った。「頑張れ坊や!」マックが後ろから応援したが、その声はマッケンジーに届いていなかった。
 
最後にマックイーンはマッケンジーを牧草地に連れてきた。牧草地には何十頭ものブルドーザーがいた。「ここで何するの?」「今に分かる。始めてくれメーター。」「了解、チーフ。」ブルドーザーの向こう側にいたメーターは無線越しに堪えると、クラクションを鳴らした。メーターのクラクションに驚いたブルドーザー達は咆哮を上げて一斉に走り出した。
「ヒャッホー!あっちだ、それ行けー!」メーターがケーブルを鞭代わりにして誘導すると、ブルドーザー達はまっすぐマッケンジーの方に向かって突進していった。「ねえ。あのブルドーザー、俺の方に向かってきてない?」「振り切らないと踏みつぶされるぞ!」マックイーンが怒鳴ると、マッケンジーは慌てて向きを変えて走り出した。
マッケンジーはブルドーザーに踏みつぶされまいとエンジン全開で走ったが、スタートが遅れたのと滑りやすい草地に足を取られ、すぐにブルドーザーに追いつかれた。ブルドーザーの群れの先頭が1台、また1台と追いつき始め、マッケンジーはあっという間に彼らの群れに飲み込まれて砂煙で見えなくなってしまった。
ブルドーザー牛の群れが行ってしまい、砂煙が収まるとマックイーンとメーターはブルドーザーのキャタピラーの跡塗れになったマッケンジーに追いついた。「あのブルドーザーを他のレーサーだと思え。今のスタートの様子だとお前はあっという間にしんがりだ。出だしでトップに出てもあの速度じゃすぐに他の奴に追いつかれる。これがお前のトレーニングメニューだ。開幕戦まで2週間、このトレーニングをみっちりやるぞ。今日はここまでだ。明日に備えて今休め。」マックイーンはそう言って引き返して行った。
「こんなトレーニングしてたらレースまでに身が持たないよ!」置き去りにされたマッケンジーの叫び声が牧草地に響き渡った。
 
マックイーンのトレーニングは過酷なものだった。マッケンジーが今まで体験した事のないトレーニングばかりだった。毎朝クルーズとレースを行い、その時にタイムを計られた。クルーズの後から車3台分の差でフィニッシュするマッケンジーと速度計測器に表示された速度を見てマックイーンは顔をしかめていた。「まだまだだ。全然だめだ。本気でデビューしたいのか?そんなタイムじゃプロのレーサーと渡り合えないぞ!」
クルーズとのレースの後はラジエーター・スプリングスの仲間達がマッケンジーのトレーニングの相手を務めた。初めは慣れないトレーニングにマッケンジーはついて行けずにいたが、トレーニングを繰り返すうちに少しずつトレーニングに慣れ始め、それに合わせてマッケンジーのタイムも少しずつ伸び始めた。だが、マッケンジーがクルーズとほんの数秒の差でフィニッシュする様になってもマックイーンはまだ納得がいっていないようだった。
ピストン・カップ開幕戦の1週間前、マックイーンはマッケンジーに言った。「レースまであと1週間だ。仕上げに向けてトレーニングのハードルを上げるぞ。覚悟はできてるか?」「ああ、いつでもできてるさ。」マックイーンの問いかけにマッケンジーはにんまりと微笑んで答えた。
「グイド、ハードルを上げてやれ!」反射神経のトレーニングを手伝っていたグイドはハードルを上げろと言われ、1個ずつ放り投げていたタイヤの数を増やして、一斉にマッケンジーめがけて放り投げた。雨あられと降り注ぐタイヤも、今のマッケンジーにはスローモーションのように見えていた。彼は焦る事なく、舞うようにして全てのタイヤをかわした。
次にマッケンジーは体力づくりのトレーニングを行った。今まではニュートラルのマックを引っ張っていたが、その日はニュートラルのマックの他にメーター、サージ、ルイジとグイドが乗ったトレーラーも一緒に牽かなくてはならなかった。「どうしたそれで全力か?もっと本気を出せ!お前の実力を見せてみろ!」マックイーンが檄を飛ばした。メインストリートで行われるトレーニングを見て、ラジエーター・スプリングスの住民たちもマッケンジーに声援を送った。
最後にマックイーンは追いかけて来るブルドーザー牛を振り切るトレーニングをマッケンジーにさせた。雪崩の如く迫るブルドーザー牛を見たマックイーンはマッケンジーに向かって叫んだ。「もっとスピードを出せ!追いつかれるぞ!」
マッケンジーは懸命にスピードを上げていたが、先頭のブルドーザー2頭に左右を挟まれてしまった。マッケンジーに追いついたブルドーザーの1頭は彼に並ぶと体当たりしようと突進してきた。突進される寸前、マッケンジーはスピードを落としてブルドーザー牛の突進をかわした。勢いづいたブルドーザーが反対側のブルドーザーに激突してもんどりうち、多重事故を引き起こしている間にマッケンジーは一気に加速してブルドーザー達を振り切った。
「良いぞ、よくやった!」目の前を弾丸の様に通り過ぎていくマッケンジーをマックイーンが褒めた。隣にいたグイドが見せた速度計測器に表示されたマッケンジーのタイムを見てマックイーンは満足げに頷いた。「プロと渡り合う準備ができたな。」「って事はマッケンジーはピストン・カップにデビューできるのか?」メーターがマックイーンに尋ねた。「ああ、そういう事になるね。」
マックイーンの答えを聞き、マッケンジーだけでなく周りにいたメーター、ルイジ、グイド、クルーズも歓声を上げ、マッケンジーを囲んだ。「でもマックイーン、俺にはスポンサーがいないんだ。スポンサー無しじゃレースには出られないって分かってるよね?」「ああ、分かってるさ。スポンサーなら良いスポンサーを知ってる。」
マッケンジーはラモーンの店に連れて行かれ、新しいペイントを施してもらった。車体の横にはマックイーンを連想させる稲妻模様にラジエーター・スプリングスを意味する「R/S」の白い文字でペイントしてもらい、ボンネットにも同じようにラジエーター・スプリングスのイニシャルをペイントしてもらった。それから後部バンパーには町のシンボルの山「ラジエーター・キャップ・マウンテン」とロゴマークをデザインしてもらった。
次にマクゲイルはルイジの店で真新しいタイヤに履き替えた。タイヤには「ルイジのカサ・デラ・タイヤ」の文字が彫られている。「うちのタイヤは他のどのレーサーが使ってるタイヤよりも性能が良いタイヤだよ。」ルイジが自慢げに言った。
更にフィルモアの店でマクゲイルのためだけに調合されたフィルモアの燃料を試飲した。「これを飲めば目が回って、口から火を噴くほど速く走れるようになるはずだよ。」フィルモアが言った通り、マクゲイルはカッと目を見開いて悶えると、口から火を噴き、猛スピードでフィルモアの店を飛び出して行った。「すげぇ……。」取り残されたフィルモアはあっけに取られて言った。
最後にマクゲイルはリジーの店でステッカーを貼ってもらった。マッケンジーが貼られたのは「コージー・コーン・モーテル」や「メーターのレッカー屋」、「ルイジのカサ・デラ・タイヤ」などのラジエーター・スプリングスの住民達が経営する店のステッカーだった。
リジーの店を出たマッケンジーを仲間たちが見に来て、ラジエーター・スプリングス使用のマッケンジーを住民達が囲んで口々に感想を言った。「かっこいいぞマッケンジー!」「ラジエーター・スプリングス使用のマクゲイルだ!」「見て!ウチの店のステッカーが貼られてる!」
やって来たマックイーンにマクゲイルはボディを見せた。「これってどういう……。」「お前のスポンサーはこの町と町の皆だ!ラジエーター・スプリングス人気回復委員会にチャッドって言う知り合いがいるんだ。彼にこの町をお前のスポンサーにしても良いかって聞いたら彼は大賛成してくれてね。町の皆も自分の店を上げて支援してくれるって言ったんだ。」
マックイーンが説明するとマッケンジーは町の皆の顔を見渡した。出会って間もない自分の為にこんなにも良くしてくれたと思うと胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。「皆、本当にありがとう!」「何、お安い御用さ。」「君とこの町のためなら何でもするよ。」ラモーンとルイジが言った。「あなたが勝てばあなただけじゃなくてこの町も注目される。あなたはこの町の期待よ。」サリーも言った。
「さあ、マッケンジー。俺みたいなレーサーになる用意はできたか?」マックイーンの問いかけにマッケンジーは力強く答えた。「ああ、いつでもできてるさ!」
 
続く
 
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