その日は何とも平穏な日だった。トーマスはパーシーと一緒に昨日の事故で工場送りになったスタンリーに代って入れ替え作業を手伝っていた。「ジェームスが牽いてきた客車を片付けに行くからここは頼んだよ。」「任せてよ。」
パーシーが客車の片付けに行った後、トーマスが1人で入れ替え作業をしているところへオリバーがやって来た。「貨物列車を取りに来たよ。」「ああ、待ってて。今取りに行くから。」
トーマスがその場を離れたのと入れ違いに何とハリーが貨物列車を押してきてオリバーに繋げた。貨物列車の後ろにはオリバーの相方であるトードではなく、厄介者で知られているクリンクが繋がっていた。「ありがとうトーマス。」オリバーは貨物列車を持ってきたのがトーマスではなくとはハリー気づかないまま出発していった。
 
オリバーはアールズバーグを目指して走っていた。厄介者のブレーキ車であるクリンクはオリバーを足を引っ張るチャンスを伺っていた。クリンクが急にブレーキをかけたのでオリバーの速度は一気に落ちた。
「何だ?急にスピードが落ち始めたぞ……。」オリバーはクリンクがブレーキをかけているとは知らずに懸命に列車を引っ張った。そんなオリバーを貨車が馬鹿にする。「へっへっへ、どうしたオリバー!」「急がないと日が暮れちまうぞ!」「もっと全力で引っ張ってみろよ!」オリバーはさらに力を込めて列車を引っ張った。
何とかオリバーはアールズバーグにやって来た。依然クリンクはブレーキをかけたままだ。「ワシがブレーキを外したらオリバーを思い切り押し出せんだ。」クリンクが貨車たちに囁きかけた。「へへへ、了解。」
クリンクがブレーキを外したのでオリバーは前につんのめった。それを皮切りに貨車たちがオリバーを押し始める。「それ、押せ!押せ!押せ!」オリバーはブレーキをかけて、線路にしがみつきながらアールズバーグに続く坂道を下っていく。
と、突然汽笛が聞こえてきて反対側からダックが坂道を登って来るのが見えた。「オリバー!」ダックの悲鳴を聞いてオリバーはギョッとした。「トード何してるんだ、ブレーキをかけるんだ!」「残念ながらここにいるのはトードじゃないぜ。」クリンクは意地悪く笑った。次の瞬間にはオリバーとダックは正面衝突していた。
一方その頃客車の片付けに行っていたパーシーがナップフォード駅の構内に戻って来ていた。彼は貨物列車と一緒にいるトーマスに気づいて声をかけた。「あれトーマス、どうしたの?」「オリバーが貨物列車を取りに来たんだけど、戻ってきたらいないんだ。どこに行ったか知らない?」
パーシーが答える前にジュディとジェロームを牽いたトードが通りかかった。「どこ行くのエドワード。」「アールズバーグだよ、オリバーが事故を起こしたんだって。」パーシーに聞かれたエドワードがそう答えるのを聞いてトーマスは仰天した。「オリバーだって!?……でも貨物列車を渡してないのにどうしてオリバーはアールズバーグなんかに行ったんだろう……。」
 
エドワードがジュディとジェロームそれから救援隊をアールズバーグに連れてきてすぐに救助活動が始まった。トップハムハット卿もウィンストンに乗ってやって来た。「残念だよ。君は貨車の扱いが上手いと思っていたんだが。」「すみません。でも僕が危険を知らせたのにトードがブレーキをかけなかったんです。」ジェロームに吊り上げられながらオリバーが答えた。
「どう言う事だトード。君がこんなミスをするだなんて珍しいじゃないか。」トップハムハット卿が後ろを振り返って言った。そこへ砂利の貨車を牽いたマイクが通りかかった。「おやオリバー、君がトード以外のブレーキ車を牽いてるだなんて珍しいね。」
「トード以外のブレーキ車だって?」トップハムハット卿が声を上げると、バラバラに壊れたクリンクを見てエドワードが答えた。「オリバーが牽いてるブレーキ車はトードなんかじゃありません。彼はクリンクです。」「どうしてオリバーがクリンクなんかを牽いてるんだね。彼は古いブレーキ車だからなるべく使わないようにしていたのに。」
「僕がクリンクを繋げたわけじゃありません。」「それでは誰が繋げたと言うのだね?」トップハムハット卿に聞かれたオリバーは少し考えてから口を開いた。「……多分トーマスじゃないでしょうか?列車を持ってきたのはトーマスですし。」オリバーが言うとトップハムハット卿は厳しい口調で言った。「ふむ、それでトーマスに詳しく聞くしかないな。」
 
トーマスがナップフォード駅の構内でパーシーと働いているところへトップハムハット卿の青いセダンが駆けこんできた。トップハムハット卿はセダンから降りると険しい表情でトーマスに歩み寄って来た。「トーマス!どうしてオリバーの列車にクリンクを繋げたんだね。あのブレーキ車は古くて危ないから使わないように言っていたはずだぞ。君のせいでオリバーとダックが事故を起こして整備工場に入る事になってしまったではないか。」
トップハムハット卿の言葉を聞いてホームや構内にいた機関車たちはトーマスの方を見た。「何の事ですか?僕はクリンクなんかオリバーの列車に繋げてませんよ!」「だがオリバーに列車を渡したのは君じゃないのかね?」「それが僕が列車を渡す前にオリバーがいなくなってたんです。」「だがオリバーは列車を牽いて……一体どうなってるというのだね?」
「トーマスがオリバーの列車にクリンクを繋げてないのは僕が保証しますよ。」様子を見ていたパーシーが切り出した。「僕が客車を片付けて戻って来た時にトーマスがオリバーの列車を用意してたのを見ましたから。」それを聞いたトップハムハット卿は考え考え、答えた。「うーむ、この事件については詳しく調べんと行かんようだな。とにかくトーマス、君はスタンリーが帰ってくるまでもう暫くここを手伝ってくれ。君が留守の間、支線はライアンに任せている。」
その様子をディーゼルが不敵な笑みを浮かべて見ていた。それからディーゼルはこの事を報告しに、ディーゼル整備工場へ引き返して行った。
 
ディーゼルが戻って来ると、整備工場ではディーゼル10が待ち構えていた。「それで、どうだった?」「上手く行ったみたいだぞダックとオリバーが事故に遭ったのはトーマスのせいだって疑われてたぜ?」
「俺の言った通りだろ?作戦通りだ!」スタンがディーゼル10の隣に現れて得意げに言った。「しかしこんなに上手く作戦通り行くとはなあ。お前がクリンクを利用してただなんて誰も気づかないだろうよ。」何とスタンはブレーキ車のクリンクと手を組み、オリバーに事故を引き起こさせるように仕向けていたのだ。
「そうだろうデニス?」スタンがノーマンの方を見ながら得意げに言う。「あー、俺はノーマンだぞ?」「何だっていいさ。」デニスと間違われた事をノーマンは訂正したが、スタンは素っ気なく跳ねのけた。
「そんな事より蒸気機関車を2台も工場送りにした!今にトップハムハット卿は空いた穴を埋めるために俺たちを手伝いに寄越すはずだ。」スタンがずる賢そうな笑みを浮かべて言ったところへ奇妙な音が辺りに響いた。「ほら、局長さんのお出ましだぜ。」そう言ってスタンはトップハムハット卿に気づかれないように工場の奥に姿を消した。
トップハムハット卿はウィンストンから降りると工場にいるディーゼル機関車たちに言った。「ダックとオリバーが事故に遭って整備工場で修理される事になった。ハリー、バート。ダック達が工場から戻るまで君たちに支線の仕事を任せたいんだ。」
「もちろん、喜んで引き受けます!」「奴らが戻って来るまでとは言わずにずっと働いてても良いですよ?」ハリーとバートは笑いながら工場を出ていくと、トップハムハット卿もウィンストンに乗って引き上げていった。
トップハムハット卿がいなくなると再びスタンが姿を現した。「さあ、作戦を第2段階に移すぞ。ディーゼル、お前はトーマスの評判を落としてこい。」「良いけど、何でそんな事するんだ?」「仲たがいさせるんだよ。そうすれば誰も奴を助けてくれない。評判が下がればトップハムハット卿からの信頼も下がってお払い箱にされる!そうやって1台ずつ蒸気機関車を追い払って、ディーゼル機関車の鉄道にするんだよ!」スタンが声高らかに計画の全貌を披露した。
ディーゼルが警笛を鳴らして工場を出ていくと、スタンはディーゼル10の方を見て言った。「お前にも一仕事してもらうぞディーゼル10。トーマスの仕業に見せかけて他の機関車を事故に遭わせるんだ。」「なんで俺がそんな事をしなきゃならないんだ。ハリーかバートにでもやらせればいいじゃないか。」
「ソドー島の奴らに復讐したんだろ?だったら黙って俺の言うとおりにしろ!行け!」スタンに怒鳴られ、ディーゼル10は渋々工場を出て行った。ディーゼル10とスタンのやり取りを部品の貨車を受け取りに来たフィリップが怪訝そうに見ていたが、部品を受け取るとすぐに引き返して行った。
 
ライアンはナップフォード操車場にアニーとクララベルを受け取りに来た。操車場には他の機関車の姿は見当たらなかったが……ディーゼル10が貨車の陰に隠れてライアンの様子を伺っていた。「やあ、久しぶりだねアニーにクララベル。」「あら、こんにちはライアン。ここに何しに来たの?」「トーマスがスタンリーの代わりをしてる間に僕がトーマスの代わりをする事になったんだ。」
ライアンはアニーとクララベルを連結すると、陽気に汽笛を鳴らして走り出した。その汽笛を合図にディーゼル10は目の前にある石炭の貨車を押してライアンの線路に割り込んだ。
貨車が自分の方に突っ込んでくるのを見てライアンは叫んだ。「うわあ!危ない!」彼は目を瞑って急ブレーキをかけたが間に合わず貨車に突っ込んでいった。騒音を立ててライアンは貨車に乗り上げ、貨車は大破した。後ろの貨車も脱線してしまっている。
ディーゼル10は作戦通りライアンを事故に遭わせると、ほくそ笑んでその場から逃げ出した。ところがそこへ貨車を取りに来たトーマスが駆け付けた。「ディーゼル10!?」「タンポポ頭!?そこにいるなんてびっくりしたぞ……。」「それはこっちの台詞だよ!そこで何してるの?」「なんでいちいちお前に教えなきゃならないんだ?」
その時トーマスはライアンが貨車にぶつかって脱線しているのを見つけた。それと同時に彼はディーゼル10がわざとライアンを事故に遭わせたのだと気づいた。「君がライアンを事故に遭わせたのか……そうか、オリバーとダックを事故に巻き込んだのも君の仕業だったんだな!」「知るもんか!」ディーゼル10はそう叫ぶや否や操車場を飛び出して行った。
「待て!」トーマスはディーゼル10を追いかけようとしたが機関士が引き留めた。「待つんだトーマス、まずはライアンを助けよう。」「そうだね、パーシーを呼んで一緒にロッキーを連れて来よう。待っててねライアン!すぐに戻るから!」
「トーマス!」走り出そうとしたトーマスに誰かが声をかけた。驚いたトーマスが振り返るとそこにはウィンストンに乗って島の見回りをしていたトップハムハット卿が立っていた。
「これは一体全体どう言う事なんだね?何故ライアンが脱線してるんだ!」トップハムハット卿はライアンを見て言った。「君がライアンを事故に遭わせたのかね?」「違います!これはディーゼル10が……。」「話は後で聞く。とにかく今はクレーン車を連れてきなさい。」
 
間もなくトーマスはパーシーとロッキーを連れて来た。パーシーとロッキーが事故現場の片づけをしている間にトーマスはトップハムハット卿に問い詰められていた。「ですからディーゼル10がライアンを事故に遭わせたんです!」「だがそのディーゼル10はいないじゃないか。おまけにあの時操車場にいたのは君だけだったではないか。」
「お願いです!信じてください!」「信じてやりたいが、証拠が無いからな……。それに君にはダックとオリバーを事故に遭わせた疑いもあるんだ。」「そ、そんなあ……。」「悪いが君には暫くゴミ集積場で働いてもらおう。」「承知しました……。」トップハムハット卿の命令には逆らえない。トーマスは重い足取りで操車場を後にした。
そんなトーマスを見てゴードンとジェームスが囁いた。「僕はトーマスがライアンを事故に遭わせたと思うな……。だって彼の代わりに支線を任された上に客車も取られたんでしょ?」「俺もそう思うぞ。となるとダックとオリバーを事故に遭わせたのもやっぱりアイツなんじゃ……。」
「トーマスがそんな事するはずないじゃないか!」ゴードンとジェームスの話声を聞いたパーシーが怒鳴った。「トーマスは優しくて友達思いの僕の親友だ!彼がそんな事するわけ……ないでしょ。あり得ないよ。」寂しそうに呟くパーシーを見てゴードンとジェームスは気まずそうに走り去った。
その時パーシーは事故現場の傍の線路にオイル漏れの後があるのに気がついた。「トップハムハット卿!そこの線路にディーゼルオイルのシミがあります!見て!オイルのシミがずーっと続いてる!」パーシーが叫んだ。「もしかしたら本当にディーゼル10が来てたのかも。」
「ふむ。ではこのオイルを辿って行ってディーゼル10に辿り着けば犯人が明確となる訳だ。」トップハムハット卿がオイルの跡を目で辿り、遠くを見つめて言った。
 
ディーゼル10がディーゼル整備工場の二階で休んでいるところへトップハムハット卿がウィンストンに乗ってやって来た。「ディーゼル10、ナップフォード操車場でライアンが事故に遭ったんだ。」「そ、そうなんですか。それは気の毒だなあ。」ディーゼル10はしどろもどろに答えた。
「その事故現場からオイルの跡が見つかって、辿って来るとここに辿り着いたんだ。君がライアンを事故に遭わせた犯人か?」「ち、違いますよ!」ディーゼル10は作戦がバレるのではないかとヒヤヒヤだ。
「ディーゼル10はずっとここにいましたよ。」工場の奥から声がした。「今の声は誰だね?あまり聞かない声だが。」「ああ、ディーゼルですよ!今日はちょっと調子が悪いみたいなんです!」ディーゼル10が咄嗟に叫んだ。
「ふむ……そうか。」「第一、オイル漏れなんか誰でもしますし、オイルのシミがここまで続いてただけで俺が犯人だとは言えないでしょう!」「確かにそうだが、トーマスが君がライアンを事故に遭わせたところを見たと言っているんだ。」
「見たのはトーマスだけでしょう?トーマスが俺に罪を擦り付けてる事もあり得ますよ!」ディーゼル10は必死に言った。トップハムハット卿は難しい顔をして頷いた。「君の言う事も一理ある。とにかくこの事故の真相が分かるまで、君はここにいなさい。私の目は誤魔化されんからな!必ず犯人は突き止める!」トップハムハット卿はディーゼル10の目を疑いで睨みながら厳しい口調で言った。
トップハムハット卿がいなくなると、工場の奥からスタンがゆっくりと姿を現した。その顔には怒りの表情が浮かび上がっている。「この間抜けめ!お前のせいで危うく俺の計画が台無しになるところだったじゃないか!そんなんだからお前はいつまで経ってもこの島を乗っ取れないし、蒸気機関車に馬鹿にされるんだ!」スタンが喚き散らした。
「たった1度の失敗だ。誰も気にしやしないだろう。」「黙れ!」スタンが大きく警笛を鳴らして怒鳴ったので他のディーゼル達は顔をしかめた。「俺が来るまでお前は何度失敗してると思うんだ?正直言ってお前にはリーダーの素質は無いのさ。」スタンはそう言い放つと他のディーゼル機関車達の方を向いた。「そう思うだろ?」
「確かに……スタンの計画の方が上手く行ってる。」「それに比べてディーゼル10は俺たちを脅して、威張って、偉そうに指図する癖に失敗ばかりしてるし……。」ハリーとバートが口を開いた。「俺もスタンの方がリーダーに向いてると思うな。」ディーゼルが言うと、他の機関車たちも納得し始めた。
それを見てディーゼル10はたじろいだ。「ちょちょ、ちょっと待て!俺を裏切るつもりか?この俺を?」「ディーゼル10がリーダーに相応しいと思う奴はいるか?」スタンが尋ねたが、誰もそれには答えず気まずそうに眼をそらした。「ほらな?見ろ、もうお前はリーダーに相応しくないって事さ。これからはコイツじゃなくて俺がリーダーだ。もう誰もお前の言う事なんか聞きやしない。」スタンが得意げに言った。
もうここに誰も自分の味方はいない、そう思うとディーゼル10は居心地が悪かった。「分かった、そうか!お前らが俺よりコイツの方がリーダーに相応しいと思うならコイツをリーダーにすれば良いさ!誰がお前らの事なんか気にするか!」ディーゼル10はそう吐き捨てると工場を出て行った。
スタンは勝ち誇った顔でディーゼル10の後姿を見ていた。「ディーゼル10の事は放っておけ。負け犬の遠吠えだ。それより俺たちは計画を進行させるぞ。」その様子をまたもやフィリップが怪しげな顔で見ていた。
 
夕方。トーマスは最後のゴミの貨車を集積場に運び終えて、空の貨車と一緒にナップフォードの構内に戻るところだった。ナップフォードに戻る途中、トーマスはジャンクションで重連して陶土の貨車を運んでいるビルとベンに会った。
「あ、ビル見てよ!トーマスだ!」ベンが叫んだ。「君、よくも僕らを『車輪のついた出し巻き卵』だなんて馬鹿にしてくれたな!」「え?何の話だい?」ビルに言われたトーマスは何の事かさっぱり分からずに目を丸くした。
「しらばくれても無駄だよ!皆君が僕らの事をそんな風に呼んでるって言ってたもん!」「言ってないよ、そんな事!」トーマスは全然身に覚えのない事だった。「言ってたよ!」「言ってないよ!」「言った!」「言ってないってば!」
「もう良いよ、行こうベン。」トーマスと言い争うベンをビルが宥めた。「覚えておけよトーマス、僕らは君の事許さないからな!」走り去りながらベンが怒鳴った。トーマスはキツネにつままれたような顔でそこにいた。
 
トーマスはクタクタに疲れて機関庫に帰って来た。構内の仕事や事故の後片付けをしたり、ゴミの貨車を運んだり、やる事が沢山あったからだ。ティドマス機関庫に帰ってきたトーマスはあるものを見てびっくりした。ゴードンが自分の機関庫のスペースにいるではないか。その脇にヘンリーとジェームス、ドナルドとダグラスもいる。彼らはトーマスを睨んでいた。
「そこを退いてくれないゴードン?僕疲れてるから早く休みたいんだ。」トーマスが言ったがゴードンが言い放った。「へっ、お断りだね。仲間を事故に遭わせるお前なんかをここに入れる訳には行かないのさ。」「どう言う事だい?何の事か分からないよ!」トーマスには身に覚えのない事だった。
「ふん、しらばくれちゃって!」と、ジェームス。「君はライアンが君の支線を走るのが嫌で事故を起こさせたんだろ!ダックやオリバーを事故に遭わせたのも彼らが君と同じ程素晴らしい支線を持ってる事に僻んだからじゃないのか?」ヘンリーも問い詰めた。「おかげで我々は。」「嫌いなディーゼル機関車と一緒にしなくてはならないのです!」「おまけに彼らは仕事の邪魔ばかり。」「それで遅れたら怒られるのは我々なのに。」ドナルドとダグラスが順番に言った。
「濡れ衣だよ!僕そんな事しないよ!」「嘘つくな!」トーマスが言い返すとゴードンとジェームスとヘンリーが声を揃えて言った。「もうお前は俺たちの仲間じゃない。とっとと俺たちの機関庫から出ていくんだな!」ゴードンが蒸気を浴びせかけながら言った。
トーマスは向きを変えると居場所を探して悲しそうに機関庫を離れていった。丁度そこへパーシーが帰って来た。「トーマス?」パーシーが心配そうに呼びかけたが、トーマスは何も言わずに走り去った。「いなくなってせいせいしたよ。」ジェームスが吐き捨てた。