届いた書類。
……の中に、見慣れない紙が一枚。
ん?
き、
キター!
病名が不十分なので、あなたが処方した薬の分のお金を、あなたのクリニックに支払うお金から差し引きます、と書いてあります(意訳)。
デキサメタゾン口腔用軟膏の分。
えっ……おかしい。
口内炎と病名は付けたよ。
びらんがあると診療録にも記載している。
患者さんの口内炎が良くなってほしいと思って処方した薬の分のお金を、なぜに診療報酬から引かれなければならないのか。
悩むことしばし。
もう一度、デキサメタゾン口腔用軟膏の適応症を見ると「びらん又は潰瘍を伴う難治性口内炎及び舌炎」と書いてある。
しかし「こうないえん」と検索しても、電子カルテでは口内炎の病名しか出てきません。
それで口内炎の病名を付けました。
も、もしかして……?
その時、ある仮説が浮上しました。
「なんちせい」と入力したらどうでしょうか……
あ、あった!
「難治性口内炎」
そう、口内炎だと通らず(減額になる)、難治性口内炎だと通る(減額にならない)のです。
それにしても……
こうやって引っかけ問題のように、「あ、これは口内炎だから減額~!」とか査定側はやっているんだろうな、と思うと、一生懸命診療している側はげんなりです。
ある種、典型的なカモネギなのでしょう。知らないあなたが悪い、とばかりに。
なお「難治性舌炎」という病名はないので、「舌炎」で通るよう。
なぜ、口内炎ではダメで、舌炎ならばOKで、難治性口内炎でもOKなのか。
それは「そう決められている」からに他なりません。
もちろん保険のルールでやることは大事で、私が難治性を付けなかったのが悪いのですが、実質的には難治の口内炎でも病名に”難治性”がないからといって薬価分を払えだなんて……。
いろいろ考えさせられます。
患者さんは薬のお金を3割分薬局に払った、私は薬のお金を全額(10割)払った(ことになる)。そのお金は保険者に(その後7割は薬局?3割は保険者?)。
どうも心情的には納得し難いですね、これ。罰ゲームみたいですね。
医療用麻薬も高価で、緩和ケア薬の中には高価なものもあります。
数万円単位のものが査定されたら……大変なことになってしまいますね。
薬代が医者の自腹……なのに、患者さんも普通に3割払わねばならない(ので患者さんにも特にメリットもない!)というクリニックにならぬよう、頑張ります。