緩和ケアというと、末期というイメージがあります。
しかし、末期に限らないことは、このブログを御覧の皆さんも耳にタコができていると思います。
もう1つ。
名前が緩和なので、症状を緩和するのが緩和ケアだと思われています。
それなので、症状が出て、緩和ケアにかかると思われています。
確かに「症状緩和」が緩和ケアの一部であるのは事実です。
しかし、全部ではありません。
実際に、世界保健機関(WHO)の定義でも、症状を和らげることによって、と症状緩和はあくまで手段であり、
生活の質を上げるアプローチが緩和ケアであることが記されています。
語弊を承知で言えば、がん治療は攻めの治療です。
身体に負担をかけますが、悪い部分をそれでなくしたり縮めたりします。
ただ、治療には守りも必要です。心身をぼろぼろにしてしまってはいけません。
心身を守らなくてはいけません。
守る治療・ケアとは、強い治療と病気に負けない心身をつくるお手伝いをする治療でありケアです。
緩和ケアは、がん治療の補助なのではなく、むしろ両輪で、欠くことのできないものであり、
それが揃うことで、より安全に、より遠くに行ける、それが早期緩和ケアの要諦です。
一方で、そのような「症状緩和だけではない」緩和ケアは、今でも十分に提供できているとは言い難いです。
その理由は簡単で、真の専門家が少ないからです。
あるいはいても、時間が不足しがちな病院医療では、症状緩和で手一杯で、それに終始することもあります。
また症状緩和が緩和ケアと同義だと捉えられているケースも残念ながら存在します。
注目される新しい概念「アクティブ緩和ケア」において、がん治療医の押川勝太郎先生は、
「がんの防災」を提唱されています。
”防災”は言い得て妙で、本当の緩和ケアは「防災的」なのです。
問題を起こらないようにするお手伝いが、早期からの緩和ケアにおいては重要となります。
健康が非常にクローズアップされる時代。
病気にならない健康法はメディアでも盛んに取り上げられ、皆さんもいくつか取り組まれていたりすることでしょう。
しかし病気になってからも、健康を保つアプローチは重要であり、またそれは単に身体の健康だけを意味しません。
心の平安をできるだけ保つことや、不安の解消は、病気だからこそ、より重要なのです。
もちろん、1粒で明日から心身の健康を保てる薬剤はありませんし、一言で心身の健康が回復するわけではありません。
しかし話すことを通して、元々ご自身が持っている力や良いところを引き出してゆく(多くの場合に、時間をかけて)、それが防災的な心身をつくることに役立ちます。
「病気になっても、心身の健康を保つ力を支える」のが、緩和ケアなのだ、というあまりまだ知られていない考えが、少しでも広まってくれることを願ってやみません。