落語家の桂歌丸さんが亡くなったとの報が昨日もたらされました。

 

深く哀悼の意を表します。

 

前の円楽さんが司会で、歌丸さんが答える側だった頃はよく笑点を見ていました。

 

最近はお痩せになっていて、心配していました。

 

歌丸さんがかかっていた慢性閉塞性肺疾患も、がんと同様に悪液質を起こす病気です。

 

繊細な医療とケアが必要になります。

 

次の記事を拝読すると、苦しまれたとのこと……。

 

桂歌丸さん、最期に見せた弱音 弟子の桂歌春が告白「とてもつらかった」

 

(以下引用)

 

『苦しい、楽にしてくれ』と言っていました。<中略>

 「こんなことを言っていいのかどうかわからないですが、本当の安楽死というのは、一番苦しい時にさせてあげるのが、意味があるんじゃないかなと、その時は思いました。本当に苦しかったんだと思います。だけど、それを乗り越えて生き返った訳ですから、また何度も何度も奇跡を起こしているから、またきっと蘇るだろうと思って、そのことは言いませんでしたけど、やっぱりそれだけつらいとか、本当に見ている方もつらいし。最後まで呼吸器をつけていたものですから、鼻の頭がすりむけていまして、いつも痛がっていたんですけど、これが痛がっていることだったんだなと。2ヶ月も飲み食いできないのもツラいし、呼吸も苦しいし、つらかっただろうし、本当に全部から解放されて『師匠、お疲れ様でした』という言葉を最期にかけました」。

 

(以上引用)

 

息苦しさ、痛みなど、緩和ケアの対象となる症状を自覚されておられたようです。

 

腸閉塞(これも緩和ケアの対象)もあったと報じられていましたね。

 

 

慢性閉塞性肺疾患というと、一般の皆さんはあまり馴染みがないかもしれません。

 

しかし男性では死因の8位で、少なくないものです。

 

 

緩和ケア診療加算が取れるようになるということは、すなわち緩和ケアの資源がそこに投入されることを政策的に誘導するということになります。

 

それで慢性心不全が緩和ケアチームで診療加算が取れるようになり、今は慢性心不全の緩和ケアが旬の話題です。

 

けれども緩和ケアが必要な病気は他にもたくさんあり(参考;Global atlas of palliative care at the end of life.<英文>)、まだまだその普及には長い道のりです。

 

慢性閉塞性肺疾患の緩和ケアについて下記にて説明しました。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD : 肺気腫・慢性気管支炎等)の緩和ケア

 

 

呼吸困難は有名ですが、咳や痛み、うつなど多岐にわたる問題が生じ得ますし、家族ケアも重要です。

 

緩和ケアに意識的な呼吸器科医ならば対応してくれるとは思いますが、緩和ケアチームも病院によっては対処してくれることがあります(私の所属チームでもそうしていました)。

 

しっかり症状を和らげるべきなのは、がんの方と変わりはありません。

 

一方で、海外の文献ですら、呼吸困難に対して有効な医療用麻薬が(本来心配が少ない呼吸状態への懸念等から)使われることが医療者に躊躇されている現象が認められる由が記載されています<参考;Differences in health care utilization at the end of life among patients with chronic obstructive pulmonary disease and patients with lung cancer.(英文)>。

 

日本でも実際には相当数の必要ケースが、緩和ケア介入を受けずに最後の時間を迎えていると捉えられます。

 

慢性閉塞性肺疾患の緩和ケアの普及を願います。