sho先生のご指摘。ぜひ上のリンク先をご覧ください。

 

少し長めですが、引用します。

 

「日本のがん治療の大きな問題の一つが、各診療科別であることだ。

 

頭頚部がん(咽頭がんや舌がんなど)は耳鼻咽喉科、子宮がんや卵巣がんは婦人科、消化器がんは腹部外科、肺がんは呼吸器外科となっている。

米国ではがんの診断と手術は各診療科別だが、抗がん剤治療は腫瘍内科が一手に担っている。

日本では、各診療科で抗がん剤治療を行うことが、今でも一般的だ。

腫瘍内科医は本邦に1000人以上いるが、全てを担っているケースは多くなく、過半数は、各診療科がおこなっている。

 

たしかに原発巣の治療に関しては、専門領域の力が重要だが、抗がん剤の副作用は全身に出てくる。またがんの転移もしかり。

 

主治医の専門外臓器での副作用や転移の治療は、不慣れであることが普通だが、より大きな問題は、その発見も遅れる事が多いことだ。

なぜなら、副作用の8割は患者さんの自覚症状であり、骨転移や脳転移なども、通常の胸腹部CT検査の範囲外なので、申告がないと全くわからないから。

 

それどころか症状の申告があっても、不慣れなためか、無視あるいは軽視して、患者さんが長く苦しみ、対処が遅れるケースもよくある」

 

 

これは本当に「その通り」の鋭い指摘です。

 

掘り下げると非常に深い話題ですが、端的に言うと、医療の情報が格段に多くなり、医師は自分の専門分野だけでも最新の知識を更新してゆくのが大変、という現状があります。

 

専門分野以外のことはけして明るいわけではありません。

 

私も患者経験がありますから、医師が何でも知っていて、何でも対応してくれる、ということに期待する気持ちもわかります。

 

しかし医師側の立場を経験すると、それは容易ではないことがわかります。非常に難しい問題です。

 

 

アメリカではホスピタリストという仕組みがあります。

 

「ホスピタリスト」とは?アメリカと日本の医療体制の違いと、日本の病院が抱える課題点

 

ホスピタリストという病院に常駐する総合診療医が担当医になり、全身管理を行い(←ここが重要)、各専門家をチームに入れて加療するとのこと。

 

日本でも、(内科ではない)各専門科で、当該臓器のがんの患者さんを診療し、全身問題が出た際に対処が遅れたり、苦手意識を持っているケースがあります。

 

私は緩和ケア医ですが、元々内科医だったこともあり、全身問題へのご助言を申し上げることも度々でした。

 

中には差し出がましいと嫌がられる場合もありましたが、何よりも患者さんのためですし、実際多くの医師がそれを歓迎してくれました。

 

もちろんチーム医療を知悉している、各科の医師の懐の深さからそのような仕事ができてきたわけでもあります。

 

全身を診る支援を行い、各科+内科+緩和ケア科で診ているような場合と似た形式を作り上げてきたとも言えると存じます。

 

腫瘍内科医がメインで診療したり、あるいは緩和ケア医を併診に付けたりすることは、がん診療において擬似的なホスピタリスト体制を構築していると言えるかもしれません。

 

 

大きな病院で勤務していると、各科が必死に専門外のことに取り組む体制は非合理的だと感じます。

 

アメリカのホスピタリストのように、病棟専門の内科医が診て、その他の専門的なことを他科が対処してくれる、というのが患者さんにとっては確かに利益になると思いますし、

 

日本ではすぐにそのシステムを作るのが難しくても、がんのケースにおいては、腫瘍内科医や緩和ケア医などの全身を診る科をチームに入れることである程度は似た形式を作ることができるのではないかと思います。

 

CTの見逃しも、もちろん医療の受け手の皆さんからすると驚き不安になるところだと思いますが、専門分化が高度に進んだ現在は起こるべくして起こります。

 

支える体制を構築することで問題に対処する、これが引き続き求められているでしょう。