緩和ケアと言えば、がんの「末期」
しかしそうではなく、末期だけではなく全病期における緩和ケアが重要となっていることは、ブログでも度々触れている通りです。
がんと並んで旧来から対象疾患になっている「後天性免疫不全症候群」(AIDS)が治療の改善によって、実際に緩和ケアを行う機会が少ない状況の中、
極めて重要な疾患が緩和ケアの対象として明記されることになりました。
―それは末期の心不全
今年の4月、とうとう末期心不全が、診療報酬上の適応疾患に加わったのです。
がんと違って、対象は「末期の」心不全、ということになります。
私は元々、循環器内科医から要請があれば末期心不全の症状緩和に関わっていたので、特にこれまで通りと変わりありません。
適応疾患として明記されたので、堂々と緩和ケアを行うことができるようになった(?)のが、良かったことでしょうか。
数多くの研究があるわけではないのですが、一般には、モルヒネが末期心不全の呼吸困難に有効なことが報告されています。
がんの痛みに使用するよりもかなり少ない量で緩和できるとも言われており、先般も内服モルヒネ換算4.8mg/日(持続)という非常に少量の使用で、大きく呼吸困難緩和が図れた事例がありました。
がんの痛みの場合は、内服モルヒネ換算20mg/日程度から開始しますので、その1/4程度の量です。
開始後、はたから見てもとても楽そうになっていたので、良かったと思いました。
もちろんのこと、呼吸回数が大きく減じるような呼吸抑制はなく、意識も清明です。
息苦しさだけを緩和した、ということになります。
「鎮静」させて緩和するのではなく、呼吸中枢への作用等で効いています。
まだまだ一般にモルヒネ=鎮静、という誤解がありますが、実際はそうではないのです。
がんに限らず、緩和ケアで症状緩和のためにできることは種々あります。
そんな一例でありました。