適応外、皆さんはご存知ですか?

 

当ブログは医療者ではない読者の方が多いと存じます。

 

「適応外」という言葉、皆さんはご存知でしょうか?

 

日本の保険診療制度の中では、この薬剤はこの病気に対して使用される、ということが定まっています。

 

問題は、ある薬剤がその定められている病気以外にも実際には効くことです。

 

例えば大変有名な鎮痛薬であるロキソニン。

 

ロキソニンは当然のごとく、がんの痛みにも効きます。

 

しかし適応症の中に「がんの痛み」は入っていません。

 

ロキソニンの添付文書

 

がんの痛みにロキソニンを使用することは「適応外」使用ということになってしまいます。

 

すると有効な薬剤を用いたにもかかわらず、医療機関はその行為に対する報酬をカットされてしまいます

 

すると、本当は効果のあるそれらの薬剤を使いにくい―そのようになります。

 

 

年々厳しくなる適応外使用

 

もちろん無軌道な処方は厳しく扱われるべきです。

 

しかし必要な薬剤すらも、使用できない状況が形作られてしまっています。

 

例えば、札幌のいまいホームケアクリニックの今井浩平先生がまとめられている下記のリスト。

 

保険で認められていない在宅緩和ケアの薬のリスト~病院から在宅につなぐときに参考にしてください

 
これを見ると、実は緩和医療の重要な薬剤が複数「適応外」となってしまっているのです。
 
ただ一般の皆さんに知っておいて頂きたいことは、「適応外」というのはあくまでそのように「保険上」の問題であって、有効ではないということでもないし、標準的治療ではない、ということも意味しない、ということです。
 
最近では、在宅における重要な鎮静系の薬剤である、セニラン坐剤までやり玉に上がっているそうです。
 
 
これは本当に困ったことで、最終末期の患者さんの苦痛が(注射薬以外の方法で)緩和し難いことになってしまいます。
 
もちろん適応外であるということが覆されるためには研究の集積も必要でしょうし、緩和医療界の権威で厚生労働省などとつながりがある先生方のお働きがないとなかなか難しいのではないでしょうか。
 
いずれにせよこんな事情が現場にある、ということは一般の皆さんも知っておいたほうが良いかもしれないと思い、記しました。
 
繰り返しですが、「適応外=悪」ではありません。あくまで制度上の問題、ということなのです(※もちろん文献やガイドラインなどの何らの裏付けもない独自治療の適応外使用は、妥当性に疑問があります。ここで挙げたのは、文献やガイドラインの裏付けがあるにもかかわらずに、保険上適応外使用となっている薬剤のことです)。