進行肺がんでお腹が痛い、という患者さんがいます。

 

 

胃が痛い、などの訴えを繰り返しされる方もいます。

 

 

肺がんの胸膜転移や骨転移などがあって、もともと痛みが存在するので医療用麻薬を使っていても、なぜかお腹の痛みだけは取れない。

 

 

思えば、昔々、私がホスピスに勤務していた10年前くらいも、そのようなケースはたびたびあったと記憶しています。

 

 

医師同士でも話し合い、医療用麻薬で取りづらいわけですから、胃粘膜障害か、はたまた機能的な痛みなのかと目して加療したものでした。

 

 

中には患者さんも医療者も、精神的負荷が胃に来やすいと思い込んでいたり。

 

 

肺がんで、胃、というのがなかなか結びつかなかったのですね。

 

 

胃カメラを受ける患者さんもいましたが、何も出てこない。

 

 

するとやはり機能的なものや精神的なものなのかと結論されることも多かったです。

 

 

なるべく不必要な検査を避けるホスピス(+10年前という昔)に比べて、現在勤務している病院は急性期病院ですから、画像検査はすでに為されていることが多いです。

 

 

それで「腹痛・胃痛」の訴えがある進行肺がんの患者さんの腹部CTを見ると……

 

 

実は、腹部のリンパ節転移がある症例がたびたび見つかるのですね(※これは胃カメラではわかりません)。

 

 

腹腔動脈や大動脈の周囲などに、リンパ節転移があるのです。

 

 

これらのリンパ節の周囲には神経叢(神経の小集団)がありますから、しばしば難治性の神経障害性の痛みを引き起こします。

 

 

実はこれが、「肺がんなのに胃が痛い」という訴えの患者さんたちの痛みの原因となっているのです。

 

 

神経の痛みなので、しばしば、モルヒネなどの医療用麻薬は「効きますが、効ききれないこともあります」したがって、他の手段の組み合わせ(他の鎮痛薬や神経ブロック)が肝要となります。

 

 

がんの患者さんの症状緩和医療において、画像検査が重要だと思わせる一例だと思います。