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10倍のモルヒネ投与 患者死亡

 

 

というニュースが出ています。

 

 

 

 

クリックすると出て来る記事が下記です。

 

<医療ミス>10倍のモルヒネ投与、女性死亡 水戸の病院

 

モルヒネ10倍誤投与、心筋症の女性死亡…水戸

 

 

ただ、実はこのいずれの記事も情報が少なすぎて、全貌がわかりません(10/3の病院の記者会見で詳細な状況がわかることでしょう)。

 

 

「痛み止めの塩酸モルヒネを2・5ミリグラム投与するはずが、10倍の25ミリグラム投与したという。女性はその後、意識不明の重体となり」(毎日新聞)

 

 

「14日に行った手術で、モルヒネを本来の10倍の25ミリ・グラム投与したところ、女性は一時心肺停止状態となり、26日午後7時頃に呼吸不全で死亡した」(読売新聞)

 

とありますが、25mgをどれくらいのスピードで、どの経路で使用し、”その後”というのはどれくらい後に意識障害などが出現したのかでも、モルヒネがどれだけ影響したのかという解釈は異なります。

 

その点では、見出しを読むと、一般の方の多くは間違いなく、「10倍モルヒネ投与→死亡」とモルヒネ投与が死の直接原因であったと感じると思いますが、実際はそれほど簡単には断言できないです。

 

私が心配するのは、なるほどモルヒネ25mgというのは大変な量なのだと、今医療用麻薬を使用していらっしゃる患者さんやそのご家族が心配されることです。あるいは10倍という言葉がひとり歩きすることです。

 

実はがんの痛みの場合に、モルヒネは内服モルヒネ換算で20mg/日程度から開始します。一日かけてモルヒネ25mgというのは、けして多い量ではありません(注;ただ注射薬は効力が2〜3倍なので、注射薬の25mgは内服モルヒネ換算50〜75mgです)。

 

ただ同じ用量でも、1日かけて飲み薬や持続注射で投与するのと、一気に注射するのでは全く異なります。

 

 

また本例では、モルヒネ2.5mg投与するところに、10倍量の25mg投与ということなのですが、

 

 

持続投与していないところに2.5mg注射しようとしたのを、間違って25mg注射したのか、

 

 

ある程度の量を持続投与しているところに、追加で2.5mg投与するのが、25mgになってしまったのか、

 

 

実はそのようなことでも重大度は異なります。

 

 

それまでモルヒネを使ったことがない患者さんに、25mgの注射液を急速静注するのは危険な行為ですが、もともと(必要性があって)一定量のモルヒネを使用している患者さんの場合に追加で25mgを投与するのは前者に比べれば危険度は相対的には下がります。

 

 

当例は「医療ミス」とのことですし、もちろん違うでしょうが、例えば一日600mg/日モルヒネ持続注射を行っている患者さんに25mgを追加投与するのは「妥当な医療」です(患者さんの痛みが強い場合に、医療用麻薬の注射薬1日量の1/24を追加投与するのは正当な医療)。


また(これも当例の場合と異なりますが)、がんの患者さんの症状緩和においては、疼痛が取れる量まで医療用麻薬を増量しますから、初期開始量の10倍投与に至ったりすることは稀ではなく、「10倍! 大変な量だ!?」というのも一概に言えません。


くれぐれも、いかなる場合もモルヒネ25mgが致死的に多い、などと思わないで頂きたいと思います(特に25mg/日という一日かけて25mgというのはむしろ初期開始量に近いです。安全です)。あるいは以前のモルヒネ量と10倍の量に(一日の)使用量がなってしまっているので命に影響が及ぶのではないかと心配される必要もありません。10mg/日を増量していって100mg/日になる、ということも普通にあることです。


あくまで、急速に、一定以上の量を、これまで使用したことがない患者さんに使用することで問題になります。


ただもしそうだったとしても、モルヒネには拮抗薬があるので、それをすぐに使用すれば過量による効果を打ち消すことも可能です。


以上のように、専門家の目からすると、まだまだ状況が不明な一方で、見出しは10倍のモルヒネ投与により患者さんが死亡したとほぼ確定的に感じるものとなってしまっています。


速報として各社は報じたのでしょうが、記者会見を待って報じるのでも良かったのではないかとも思います。

 


いずれにせよ、医療者が基本的な医療用麻薬の使用法に習熟することは変わらず重要でしょう。安全な医療が引き続き確保されることを願ってやみません。