有名人の診療は、難しい点があります。
なぜか。
それは、語ったことが事実だとして報じられるからです。
もちろん一般の方のブログでも、それはそうです。
当たり前ですが、人は自身が受け取ったように発信するものです。私も同じです。
しかしそれが本当にそのままそうだったのかはわかりません。
例えば、医者がこう言いました、とブログで書いたとしても、その医者が本当にそういうことを言ったのか、そういうニュアンスだったのかは正確にはわかりません。
その場を見ていないから何とも言えないのです。
ですから、出てきた情報だけをもとに、診療の良し悪しを判断できない、ということは強調しておきます。
そこには何らかの事情があるかもしれないからです。
例えば、有名人の方がある情報は伏せて、ある情報は伏せないで、発信したとすると、専門家は出ている情報だけを元に「なんで、こういう対応になったのか」と批判することがあります。
実際に診療している側からすると、「いや、それは◯◯だから」と伏せられた理由からそういう事情になっているのだと説明できますが(しかし当然のごとく守秘義務がありますので、公に説明はしません)、それを知らない専門家の視点からすると「なんでこうなっているの?」と見えるものです。
それで問題ない診療をしている医療者が、他の医療者に批判されることがあるのです。本当に難しいところです。
というわけで、批判ではなく、あくまで印象ですが。
昨日も紹介した上記の記事ですが、1ヶ月前からアレルギー症状に苦しんでおり、つらかったのだとうかがわれます。
ただそれはアレルギー症状に伴う夜間の睡眠障害ですから、アレルギー症状に対応する薬剤1剤でまず経過を見るということが一法として考えられるとは存じます。
というのも、抗アレルギー剤は個人差がありますが、眠くなりうる薬剤です。
そして連夜の睡眠障害があったとしても、睡眠薬は(出すとしても)基本的に一剤で開始するのがベターでありましょう。
もちろん処方側としては、サウナで血流が良くなっている状況の、運転前に3剤を併用して飲むとは思っていないでしょう。
危ないことをしたわけで、事故などでの肉体的被害が誰にもなかったのは本当に幸いでした。
昨日のブログに引用した記事
にて、「ベルソムラ20ミリグラム」1錠(眠りの質を高める)とありました。
「眠りの質を高める」と書いてあると、上乗せすると眠りの質を高めてくれるような印象がありますが、基本は睡眠薬であり、元々眠れている人の睡眠の質を改善させるために飲む薬剤ではないわけです。
ベルソムラは確かに良い薬剤で、私もしばしば処方しますが、今年NHKの「ガッテン!」で糖尿病に効くと紹介されて物議を醸しました。
どんな薬剤も副作用がありますから、過剰な持ち上げもまた良くないものです。
レンドルミンはベンゾジアゼピン系の睡眠薬であり、ベルソムラはオレキシン受容体拮抗作用の睡眠薬です。
睡眠薬が2剤最初から併用、というのは(伏せられた情報がない限り)、原則的ではありません。
この2剤がなぜ最初から併用されたのか、とあくまで出ている情報から推測した時に、もし、先述の記事に処方意図が書いてある通り
(下記引用)
ベルソムラ20ミリグラム→眠りの質を高める
レンドルミンD錠0・25ミリグラム→熟睡できる
(引用ここまで)
とベルソムラがあくまで「質」の意図で上乗せされているのだったら、それはベルソムラの過剰な持ち上げが、一般診療医の処方行為にまで影響していることが危惧されます。
今回は運転前の服用という不測の事態があったこともありますが、医師側にも慎重な処方が必要なことを示唆しているものと考えられます。
もちろん伏せられた情報があるのかもしれませんので、批判ではなく、自身も含めて気をつけなくてはいけないと再確認する出来事であったということです。
そしてまた患者さんも、診療の場で十分質問し、疑問を解消しておくことが重要だと存じます。