薬の添付文書は細大漏らさず書いてあるものです。

 

 

従って、稀なことまで記載されています。

 

 

薬局でもらう薬剤説明書にも副作用はいろいろと書かれています。

 

 

もちろんどんな薬剤にも副作用があります。

 

 

主作用マイナス副作用が上回ることの予測のもとに処方は為されます。

 

 

さて、最近は調べるのにネットを使用される患者さんやご家族も増えています。

 

 

それ自体は良いことです。

 

 

「医療用麻薬って便秘がひどいんですってね」

 

 

医療用麻薬を処方しようとすると、そう仰る患者さんもいて、皆さん勉強されていると感じます。

 

 

確かに「何もアクションしなければ」便秘になります。

 

 

従って、医療用麻薬使用時は下剤を併せて投与することが必要です。

 

 

中には「この薬剤を始めてから、お腹が張って張って……。便秘のせいではないですか? だから中止したいんです。痛みはまだ残っていますが」という患者さんもおられます。

 

 

しかしここで注意したいのは、お腹の中にがんがある場合、そこからの痛みである内臓痛は、しばしば「痛み」である以上に「腹部の不快感」として感じるケースもあるということです。

 

 

内臓痛は「痛」の字が使われているものの、患者さんには「不快感」としての症状が前景に立つことがありますから、「痛みの一種ですよ」と言っても、「いえ、痛みじゃないんです!」と仰られ、治療開始が難しい場合も散見されます。

 

ただ内臓痛は本来医療用麻薬がよく効きますから、「数カ月の痛みがモルヒネでほとんど消えました!」等と嬉しい報告をもらえるのが内臓痛でもあります。その一方での、「不快感」であるがゆえの、コミュニケーション及び治療開始の一定の困難性があるのです。中には医療者も、自己申告を全て信じて、痛みと認識していないケースもあります。

 

「お腹が張っている」という理由は様々に存在します。

 

腫瘍自体かもしれないですし(例えば転移性の肝腫瘍による肝腫大)、がん性腹膜炎かもしれない。腹水があるのかもしれない。あるいは本当に高度の便秘かもしれません。腹部X線やCTなどを行って、それを鑑別します。

 

「お腹が張っている」のが、腫瘍性やがん性腹膜炎からの内臓痛由来であったら、むしろモルヒネなどの医療用麻薬は張っている感覚を和らげるほうに働きます。ただし腹水などで張っていると、効果は乏しいかもしれず、医療者はそんな様々なことを考えて医療用麻薬治療を行っています。

 

症状をきちんと申告することはとても大切ですし、一方で文字情報は自分に完全に当てはまるとは限らないわけですから、まずは原因についてしっかり医療者に尋ねるということが重要でしょう。

 

症状緩和の治療をいかなる場合でも併行して受けることは重要です。

 

医療用麻薬治療は、何ら大仰なものではなく、適切に使えば一般の方が考えているよりはずっと副作用は少ないものです。

 

良好なコミュニケーションがそれを下支えします。

 

このような情報も皆さんのお役に立つと幸いです。