成宮寛貴さんが引退で、驚きました。
友人(?)が彼を媒体に売ったことは明確であり、怖い世界だと思いますね。
さて、WELQ問題。
DeNA運営の医療・健康情報サイト「WELQ」で盗用や怪しい内容の記事が掲載されていた問題です。
創業者であり、会長である、南場智子さんらの会見がありました。
「WELQでガン調べて愕然…」 夫の看病で社長引退、南場会長が語った言葉 「ネットは役に立たない」
(以下引用)
「家族の闘病が始まった時から、ネット情報を徹底的に調べた。『ガンに効くキノコ』など、ネット情報がそれほど役に立たない、ネット情報が信頼できないと思った」
「メドウェッジ」(ブログ筆者注;南場会長の関わった医療メディア)について、南場会長は「学術論文を一般の家族や健康に関心がある人に届けることが目的で、医療のプロが書いていたが、想定ほどユーザー数が伸びなかった」と振り返りました。
(中略)
「専門的な情報を素人に届けることを事業として続けられる状態の解を見つけることができなかった」と反省の弁を口にしました。
(以上引用)
私はこの問題があることを知ったのは、ごく最近でした。
しかしネットで医学的な事柄を検索すると、「WELQ」名義の記事が検索でよくヒットをし、どんな媒体なのだろうかと思ってはいました。
今回指摘されているように、検索結果で上位になるような技術が駆使されていたようです。だからよくヒットするのでした。
それなのに内容は、盗用や疑問符が付くものが少なからずあったわけです。
一方で、南場会長の発言引用部分の後半にあるように、
「学術論文を一般の家族や健康に関心がある人に届けることが目的」(のサイトは)「医療のプロが書いていたが、想定ほどユーザー数が伸びなかった」「専門的な情報を素人に届けることを事業として続けられる状態の解を見つけることができなかった」とあります。
これは私が医療情報をわかりやすくお届けしようと書いていても、感じることです。
正確さは、つまらなさや、どっちつかずに見えることと表裏一体です。
今回のWELQの記事で、代表的なものとして広まった「肩こりの原因が”幽霊”」というものは、くだらないにしても、ややもすると”クリックしてしまうパワー”としては、私が書く”医療用麻薬の真実”よりも上回ってしまうことは想像に難くありません。
そしてまた、検索で上位になるような技術駆使は、何でも検索する世の中において強大な力を発揮します。
WELQに限らず、検索して出て来るものは、根拠が怪しいものも数知れず、また私がよくがんに関連することを検索するために、それに反応して、脇に出て来る広告の「これでがんが治った」「◯割の人に効果の最新治療」などの医療もどきもひどいものです(一部の本当の医師がやっている治療だからより根が深いわけですが)。
人はどうしても面白そうなものに興味を持ってしまいます。私もそうです。
しかしそれでクリックすれば、ますますそのような情報を利することに、結果的にはつながりかねません。
もちろん正確さを伝える側にも、わかりやすく、時には面白く書く工夫も必要だとは思います。
ただ南場会長が「ネット情報が信頼できない」と語っているように、例えばがんになった方やご家族などの当事者が真剣に検索する場合には、数知れない嘘や罠を嗅ぎ分ける相当な力量が必要になり、医療知識が全くない方には厳しいだろうというのも事実です。
正直なところ、「誰が書いているか」という観点で、一定の正確性の判定をするのが、私は最適な方法だと思います。医学情報においては、医師のまともな書き手がいます。それを読むことが、過不足なく、偏り少ない情報を得る一つの策だと考えます。
ただもう一つ難しいのは、テレビに出ているからとか、有名大学の教授だとか、そのような信頼性を担保するように見える肩書きもまた、信頼出来ないことも多いことです。特に、テレビに出ているからと無批判に信じる人は少ないと思いますが、有名大学の教授ともなると、それなりに信じる方も多いことでしょう。しかし地雷は潜んでいます。患者さんを診ること、実地の臨床が得意な人が書いているとは限らないからです。
また医師というと何でも知っているイメージもあるかもしれませんが、専門外のことまでは精通しているとは限りません。例えば、緩和ケアの海外の本を読むと、医療大麻に関する言及もある(注;ただし今の日本の解禁論者が言うほどの、バラ色の薬としては当然紹介されておらず、学術的に真面目に書かれています)のですが、高樹沙耶さんの事件の際も、「医療大麻などない」という発言をする医師には驚くと同時に、さもありなんと思いました。
なかなか専門外の最新のことはわからないのですが、目立つことを書くとクリックされるのと同じ理屈が、テレビでも存在しているわけです。
医師の私でも、誰が正確性の高い記事を書いているかの判定が難しい場合もあるのですが、それでも医学のトレーニングと実地臨床の経験を数多く踏んでいるので、まだましだと存じます。
なるべく、これからも、信頼できる医師が書いているサイトは継続的にお伝えしていきたいと思っています。
いずれにせよ、ネットの広大な海に溺れないためにも、「潜れて溺れないしっかりとした」装備を持って、ゆめ浅層だけで「見た」と思わず、深層まで潜ってみる、しっかりとした装備を持って(これがリテラシーだと思います)、これが最適だと考えます。
SEOと呼ばれる、検索エンジンで上位になる技術が駆使されている昨今では、ますます「浅い海」はキワモノに遭遇する危険性を意識しなければならないでしょう。
皆さんが、正確性の高い医学情報にたどり着けることを願っています。