当ブログの読者さんである加藤さんが毎日新聞の取材に応えた記事がインターネットで読めます。



第2部 検証・基本法10年/2 道半ばの痛み治療



他の薬剤だったら、自分で試してみる、ということができるのですが、医療用麻薬についてはそれは不可能です。


よって、実際に使用した、あるいは使用している患者さんが、その良い部分を発信してくださることはとても大きいことです。


なかなか緩和医療科にかかることができなかったところで、直接緩和医療科に相談し、


”医療用麻薬を使うと日常の痛みが治まり、趣味の山登りも再開した。


「痛みが消え、病気の前より積極的になった気がする」”



とのこと。良かったです。



聖隷三方原(せいれいみかたはら)病院の森田達也先生の最後のコメント


「法制定後、国は病院にさまざまな条件を課してきたが、多くの病院はそれに従うのに精いっぱい。要件化されたために質問票の配布ばかりにこだわる施設も多く、患者の立場から必要な体制を検討する必要がある」


のご指摘は鋭く、これは私個人の意見なのですが、外形的なことでやらねばいけないことがとても増えたために、本筋(患者さんを実際に診療すること)に影響している側面があり、上からの一律な義務の賦課は、各病院の担当者がそれぞれのアプローチで院内の緩和ケア普及を図ることに寄与しているのか疑問に思うこともしばしばではあります。


国としても、緩和を普及するシステムを考え、このようなことを整備しなさいという形でそれを具現化しようとするわけですが、現場の改革は常にトップダウンで進むわけではなく、それが常に最良なわけでもなく、むしろある種の施設にとっては実情にそぐわない一律義務化が現場からの改革の妨げとなってしまってはいけないと、何でも政策で解決することに懐疑的な立場からは思います。また個別性と、一律義務との不合致も感じます。


また働きかけるのは、医療者ばかりではなく、黙っていても何でも供与されて当たり前、という層への働きかけも重要でしょう。病院はコンビニとは違い、黙っているだけで良い買い物ができるわけではありません。現場ではまだまだたくさん「緩和ケアなんて末期」という一般の方がいます。全体の意識がもう少し変わらなければ、いくら医療者側の義務を増やしてもダメなのではないでしょうか。


まずはACの広告で、国民的アイドル(男女2パターン)にでも(?)出演してもらって、「緩和ケアは末期ではないよ」「がんの患者さんで苦痛がある人は早い段階から受けて。まずはお医者さんに相談を」くらい繰り返し言ってもらえば良いと思います。



ただ今回の医療用麻薬の件でも、患者さん・ご家族の立場から多くの方が発信してくださっています。


世の中のことはなかなか劇的には変わりませんが、それでも少しずつ、医療用麻薬や緩和ケアに対する考えも変化してきていると感じる今日このごろです。



少なくとも、私がホスピスに研修しに行った11年前、一般の方に緩和医療を伝える一般書を自身として初出版した10年前とは、本当に大きく変わりました。数多くの方たちの間断なき努力の賜物だと感じています。