ひとたび薬物依存症になってしまうと、「意志の力で止める」ということは困難です。


下記の国立精神・神経医療研究センター病院さんのサイトの説明が参考になります。



国立精神・神経医療研究センター病院 薬物依存症外来



(以下引用)


薬物依存症とは、自分の意志では薬物の使用をコントロールできなくなってしまう障害です。薬物のせいで仕事や信用を失ったり、家族がバラバラになったり、逮捕されて刑務所に服役したり、あるいは精神科病院に入院したりしても、なかなか薬物をやめることができません。「もう二度と使わない」と何回も誓い、「これが最後の一回」と何十回も決意しながらも、また手を出してしまう。つまり、「わかってはいるけどやめられない」、それが薬物依存症なのです。

薬物依存症はれっきとした精神医学的障害です。決して意志が弱いからでも反省が足りないからでもありません。そして精神医学的障害である以上、いくら説教や叱責、あるいは罰を与えても、それでよくなるものではないのです。なぜなら、薬物を使ったことのある脳は、いつまでも薬物の快感を記憶していて、自分でも気づかないうちに、その人の思考や感情を支配してしまうからです。ですから、薬物依存症に対する専門治療が必要なのです。


(以上引用。改行ブログ筆者)


ポイントは、「決して意志が弱いからでも反省が足りないからでもありません」というところです。


悪いことをすれば罰を受けるのは当然です。


しかし罰を受けるのが分かっていても、脳に求薬する回路ができあがってしまうのが依存であり、薬を止めることができないのです。


精神論ではどうにもなりません。だから専門家による治療が必要です。


大病院で勤務していると、年間何例か「ソセゴン注射依存」の患者さんを見聞きすることがあると思います。そのような患者さんの求めるままにソセゴン注射を行えば、ますます依存は悪化します。しかしそのような患者さんは病識がなく、自分に異常があるとも思っていません。だから上記のような依存症外来に行くことは稀です。非常に悩ましい問題です。


薬物依存は病気であり、治療しないと良くなりません。


さらに言えば、一度形成されてしまった依存を完全にリセットする方法もありませんから、依存を形成するということは非常に恐ろしいことです。一度治療をして断薬できても、ふとしたきっかけでまた使用が始まってしまうことも少なくありません。


出来心で手を出してしまうと、一生が激変してしまいます。


覚せい剤は強力な中枢神経刺激効果を持つので、ストレスが多い仕事、不安が多い人が、何らか入手できるコネクションがある場合に、その良い効果のみを聞いてつい使ってみたくなってしまう薬剤かもしれません。


芸能関係の方は人気商売で、将来への不安とも不即不離でしょうから、またハードスケジュールの中の疲労あるいは睡眠不足を払拭するために、さらにはコネクションもあるでしょうから、手を出しがちなのだと思います。そのような方を利用しようとする悪い人も近づいて来がちなところなども影響しているかもしれません。


覚せい剤は精神病を誘発することもあり、それも恐ろしい点です。


清原さんの件はとても残念でしたが、このような事件をもとに、「けして手を出さないことの重要性」がより周知すると良いと考えます。