今年は年初からゴシップ的大事件が相次いでいる年です。



そしてその中でも大きな存在感を示しているのが、週刊文春です。



当事者のことに関しては私はコメントする立場にありませんが、この雑誌が一ヶ月足らずでタレント一人をテレビから消し、大臣を退かせたのです。



特にタレントの件では、とにかく話題の出し方が見事なものでした。



文春は2つ目の記事がより強烈だなどと言われますが、今回は釈明会見、SMAPの件の後に、3つ目の記事で致命的なLINEを暴露しました。



擁護していた人たちも、沈黙せざるを得ませんでした。



記事のインパクトを最大にする戦略が練られていることをうかがわせます。



まさしくこの点で、プロフェッショナルな方たちの集団だと思います。



近年、医療現場もこのような雑誌に時に翻弄されてきました。


週刊文春を出している文藝春秋こそ、近藤誠さんの論を積極的に広めてきた会社です。


近藤誠さんの主著の一つである『患者よ、がんと闘うな』に特に名前を挙げて感謝されている松井清人氏は、現在文藝春秋の社長です。


非血液のがんは概ね症状が出るまで放置で良いと主張する、極論で、世界的にも特異な「がん放置」法を広めたのは、けして近藤誠医師という提唱者一人だけの力ではなく、この論を広めようと力を尽くした、端的に言えば最大限売れるように行動した出版社の力は大きかったと考えます。


ただそのような力をもってしても、相当誤っているものを信じさせるのは無理だったのだと思います。多くの有名人も、標準的ながん治療を受け、治られ、あるいは大変な中に治療を続けられています。



最近になって小保方さんの手記も発売になり、よく売れて商売的には成功しているようですが、冷静にみている人も多いようです。


強大なメディアを使って、科学の分野において特異な主張を、一般社会に正当化させるという試みは、その最高にうまくいった例の一つが近藤さんなのだと思いますが、インターネット発信の隆盛とともに、以前ほどの力は減じているとは感じます。


ただ健康や医療に関するトピックは、変わらず人々の関心事であり続け、そのニーズに呼応するように取り上げ続けられる中で、また同じような根拠に乏しい情報が拡散することもあるでしょう。


健康や医療はゴシップ記事とは異なり、比較的正しい情報は「あまりおもしろくない」という特徴があります。


そこには「これ1つやれば健康になる」「がんが治るにはこの3つの習慣」「がんがこの方法で消えた」などの文字がないはずです。そんなまっとうな情報をこそしっかり摂取するのが大切でしょう。


いずれにせよ、争点がないことまで争点化してしまうくらい、メディアは強大な力を有しています。


情報を吟味して、真贋を慎重に判断する姿勢が引き続き重要であり続けるでしょう。