最近ご覧になってくださっている方が増えているので、昨年末の記載を一部加筆再掲します。



このようなことを知っておくと、役に立つと思うためです。



がん放置療法は提唱者の力で広がったように認識されています。



しかし、どんな論も流行らせてくれる人たちがいなければ、それは消えてゆくのみです。



提唱者はメディアを利用することが上手だったし、またメディアもそのブランディングに大きな力を発揮しました。「論が素晴らしいから広がる」というような意見が支援者の間にあるのは、ブランディングがうまくいってきた結果と言えると私は思います。



患者の味方。医療界の不正と闘う孤高の存在。



そのイメージを構築するのに成功したのは、企業の戦略が要因の一つだと思います。



例えば営業的に大成功した本である、一昨年のベストセラー『医者に殺されない47の心得』、昨年のベストセラー『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』、共通点はありませんか?


ちゃんと戦略を構築した方が解説くださっています。


下のサイトをご覧ください(2015年10月15日現在リンク確認)。


ヒット作の仕掛人 アスコム編集長に聞くベストセラーの作り方


(以下引用)


・ヒットメーカーの黒川氏は、編集方針として「広く深く刺す」という大きなテーマを持っている。例えば、『医者に殺されない~』の著者、近藤誠氏は、がん治療のエキスパートである。すると多くの編集者は、「がんの本」を作りたがる。しかし、近藤氏が警鐘を鳴らしてるのは、より広い視野に立った「過剰医療の危険性」なのだと黒川氏は指摘する。


(ブログ筆者解説;但しこの黒川さんや支援者の方々は彼の意図を「過剰医療の危険性」を訴えていると好意的に解釈していますが、実際は効果がありそうなものまで叩いており、そのような主張には実はなっていません。

医師にも過剰医療の問題を的確に偏りなく指摘している先生は数多くいます。それに比べると近藤さんは必要なものまで退ける傾向が強く、「過剰医療の危険性」というよりは「医療を過剰に危険性があると主張する」というのが本態でしょう。

しかし「単なる医療否定ではない、叩いているのは過剰な医療なのだ」「お金儲けの医療界と孤高に闘う、患者の味方である」とイメージを構築することで、医療に疑問を持つ幅広い層に訴求するという戦略が透けて見えます。そしてこのような売るための巧みな戦略の結果として、そのイメージを付与することに成功した、と言えるかもしれません)

<なお、より深く過剰な医療の一つである過剰診断を知りたい方はこちらのNATROM先生のブログがお勧めです→「過剰診断」とは何か ”過剰診断の存在は「がんもどき理論」を正当化しない”



引用を続けます。『医者に殺されない47の心得』を流行らせたヒットメーカーのインタビューの続き。


・テーマ設定を特定の「がん」に絞ってしまえば、そこに関心のある人にしか届かない。そうではなく、より普遍的な話題として切ることで多くの読者の関心を惹き付けられると考えている。



・広告訴求は5字にこだわる(中略)

「殺されない」、「ふくろはぎ」、「たまねぎ氷」はいずれも字数は5。新聞の半五段広告に縦書きでタイトルを記して出稿する際、最も目立つのがこの「5字」なのだという。インパクトを与え、目を引かせるというわけだ。



・タイトルづけに関しても並々ならぬこだわりをみせる。『医者に殺されない~』もなかなかセンセーショナルだが、やはり先述の「広く」という方針とクロスする部分がある。


「ひとことで言うとどんな本なのか。ひとことで複数のターゲットに突き刺さる言葉は何なのかを考え、キーワードを探します」


その上で言葉を抽出していくと、「そんなに多くの言葉は出てこない」。最終的には「感覚的な部分が大きい」ともいうが、なるほど「医者に殺されない」と言われれば、治療中の人から患者を抱えている家族はもちろん、健康な人の関心をも引くことができるだろう。



・「読者が本を知る場所は、①書店、②広告、③プロモーション(テレビ、ネットなど)の3つです。多くの編集者は『書店』のことだけを考えがちですが、読者の多くは広告やプロモーションで知るのが現実でしょう」


(以上引用。原文ママ)


ちゃんと『医者に殺されない47の心得』『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』を仕掛けた方自身が上記のように解説くださっています。


『医者に殺されない47の心得』の広告・プロモはすごいと感じていましたが、やはりそう意図して行っていると仕掛け人の方がご自身で解説くださっているのです。



いずれにせよ、「論が素晴らしい」「論が正しい」、そのようなことと関係なく、論は拡散します(例えばSTAP細胞の時のことが思い出されます。媒体でたくさん取り扱われれば、認知度は増えます。それがまた取り扱われることを増やし、爆発的に広がります)。その過程において、情報を扱う企業のはたしている力は大きいのです。



このように購買して頂くための技術も進化しています。ある種「何でもあり」です。


ただ本を広めているのは、購入者自身とそれに感応した売る側、取り上げる側です。


買う人がいるから、刷られ、広告効果が高いので宣伝され、ますます広まるのです。


単一原因と言うよりは、世の中の多くの人の営為によってそれは広がって来ている、そういう循環を形成しているというのが私の考える主因です。


私からの提案としては、やはり、タイトルに踊らされず、「単純化」「善悪論」「陰謀論」は割り引いて捉える、また目を通して明らかにそうであるものは「見ない」「買わない」が結局変な思想に取りつかれることなく、不信が強くならず、生活の質を下げないと思います。


そして「単純化」「善悪論」「陰謀論」が取り上げられず下火になれば、自ずと良識的な情報が残るのではないかというものです。



私たち全員がもっと情報を冷静に吟味する力を養うことを試されている時期であると思います。



「3薬以上の薬剤を飲んでいるけれども大丈夫でしょうか」と真剣に聞かれることも出てきています。


それは近藤誠さんの本に『一度に3種類以上の薬剤を出す医者を信用するな』(「医者に殺されない47の心得」心得12)とあるからです。額面通り信じられています。


売るために行われるキャッチーな表現の数々に、私たちは取り込まれることなく、バランスを取った立ち位置で歩んでいきましょう。



ところで、近藤さんは大概腕を組んで表紙に佇んでいます。


腕を組んで権威と闘う患者の味方のイメージを付与しているのではないかと感じます。(なお私個人としては腕組みが示す心理につい思いをはせてしまいます。率直に言ってあの画は苦手です)


これもイメージ戦略なのかもしれません。


しかし川島さんのことを暴露することで患者の味方のイメージは揺らいでしまいました。


次はどのような戦略で来るのか、あるいはこれら出版社はまた別の存在を見つけてそちらにシフトするのか。


目を光らせていかなくてはいけませんね。



いつもお読みくださり、ありがとうございます。
それでは皆さん、また。
失礼します。