尼崎の在宅医の長尾和宏先生がメサペインが在宅医は処方できないと公式ブログとアピタルのサイトで仰っています。



メサペイン問題



《1945》 寝たきりになっても必要な"メサドン受診"



私には在宅医が処方できないということは初耳だったので、販売元に尋ねると、条件が揃えば処方できるとの回答でした。


つまり在宅医だからだめ、という規制はないようです。


症状緩和をあまねく供与するために、当然のことだと思います。


また長尾先生のクリニックはおそらく要件を満たすのではないかと思います。


ただメサペインは半減期が長いため、すなわち増量してもその増量した結果が正しいかどうかの判定が数日後となり、また多いと思って減らしても、減らした分の濃度になるにも数日かかるため、正直あまり扱いやすい薬剤とは言えないと考えます。


メサペインはQT延長という心電図上の異常を来すことがあり、これは命に関わる不整脈を起こす可能性があるのですが、それなのに止めてもすぐに濃度が下がるわけではない、という難しさがあるため、医師でもオンラインの試験に合格しないと処方できないという制限がかかっています(もちろん試験は在宅医でも受けられます)。


同様に例えば呼吸抑制が出た場合に、減らしたり止めても、すぐにそれが回復しない可能性があります。


ではなぜそんな薬剤が出たか。もちろんメリットがいくつかあって、安い、NMDA受容体拮抗作用という鎮痛に対して良い効果を併せ持っていることなどがあります。


作用する場所はモルヒネやオキシコドン(予想通り一瞬にしてブームが去りました!)などと同じ、脊髄や脳に存在するオピオイド受容体という部分です。


ただメサペインを緩和医療医が考える時というのは、基本的に難治性の痛みの時であると思います。


しかし難治性の痛みも、非薬物療法、例えば放射線照射や神経ブロックが有効です。


特に神経ブロックを行えば、私は個人的にはメサペインは要らないのではないかと思いますし、私も使用を考える局面がありません。


長尾先生はモルヒネの持続皮下注射を一度も使ったことがないと以前書いていらっしゃいました。


当ブログでも何度か述べて来ているように、調節性に富み、経口よりも早い追加投与効果が得られる医療用麻薬の持続皮下注射は、ぜひ先生にもご施行いただきたいと思います。


実際私の地域の在宅医の先生は、持続皮下注射をよくご施行くださっており、それで症状緩和が達成されていると感じます。



また確かに、長尾先生が挙げていらっしゃる事例も、先生が処方の資格を得て頂いて、処方医と相談の上に先生がメサペインを継続処方できるようになれば患者さんのためになると思います。


それもあって、公式ブログのコメント欄にメッセージを送らせて頂きました。


先生がブログで述べていらっしゃる

「メサペインを人質にとり患者さんを地域にいさせないようにする。 いや、もしかしたら在宅医にがん患者さんを診させないため?」

というご心配は杞憂であると思います。実際私のような病院医も在宅医の先生のおかげさまで、患者さんにシームレスな緩和ケアが提供できていることを強く感じております。


医師同士、医療者同士の良い協力のもとに、切れ目のない緩和ケア・緩和医療が提供されること、及びその体制の深まりを、心から願っています。