昨日の話の続きです。



骨転移→麻痺→整形外科への紹介


というのは度々見かけるようになりました。


しかし、もちろん、誰もが手術を受けられるだけの体力や総合的状態であるとは限りません。


すると「もう治療はありません」となってしまうことがあります。


実はまだ、放射線科に紹介するという道が残っています。


ただ確かに、私が医者になった頃は、腫瘍学的緊急症のことを学校であまり教えられなかったということもあり、


脊椎転移→脊髄圧迫→すぐに依頼(整形外科あるいは放射線科)しないと大変


ということをあまり知らない医療者もいますし、


知っていても整形外科が唯一の選択肢になっている場合があります。


とてもよくまとまっているページがあったのでぜひご覧になってください。


骨転移に対する放射線治療は進歩してきています


(リンクは記事の2ページめに貼っていますが、できれば1~4ページまで読んで頂くと良いでしょう)


リンク先の記事図1の骨転移の治療のアルゴリズムをご覧になって頂ければと思いますが、


脊髄圧迫が出たらまずはステロイド(これが投与されていない場合もあります)。


そしてすぐに手術適応の有無を整形外科に紹介して判断してもらい、手術不能ならば放射線科に放射線治療の相談、それがアルゴリズムに記されています。


「放射線治療」と聞くと、非常に拒絶的な反応をされる患者さんもいます。


イメージで嫌がられていることがしばしばあります。


けれども、今の放射線治療は、病巣に集中的に、かつ選択的に、放射線を照射することができるようになっており、恐れる必要はない(メリットのほうがずっと大きい)と言えます。


ぜひ放射線治療の専門家たる放射線科医のお話を良く聴いて頂きたいと思います。



骨転移からの脊髄圧迫は、強い痛みが出る場合もあります。


背中の痛みや、両下肢への強いしびれです。


上の記事の3ページめにもありますように、「痛みが強くて静止した状態で寝ていられないような場合は、残念ながら放射線治療が出来ません」


そこで、例えば私の勤務する病院ではしばしば、放射線治療の安静が保てない事例の、疼痛を良くしてほしいという依頼があります。


骨転移からの脊髄圧迫の痛みは、体性痛や神経障害性疼痛という、医療用麻薬がとても良く効くたぐいでは「ない」痛みの混合した、治療が必ずしも簡単ではない痛みです。


また骨自体の痛みは、強い体動時痛(動いた時の痛み)を生じます。


現時点での私の推奨は、医療用麻薬の経口薬や貼り薬、頓服で緩和がうまくいっていないのだったら、まずは持続皮下注射に切り替えて対応することだと思います。


痛い時に追加で投与するやり方で、最も効きが早いのが、持続皮下注射や持続静注からの追加投与です。また微調節がしやすく、調節量がすぐに反映されるのも持続注射薬です(なお近日中に、持続注射に対する誤解をまたある方が広めているので、それについて述べます)。


経口薬や貼付薬は、特に貼り薬は、濃度の調節・安定に時間がかかり、痛みの状態が増えて来ている時の対応としてはあまり向いていません。


あるいは内服や貼付剤のままでいく場合も、痛い時に飲む頓服の薬剤(レスキュー)を、治療など痛みが出るシチュエーションの「20~30分前に」服用して、痛みが出る時間帯と薬剤の濃度が上がる時間を合わせるなどの工夫はとても重要です。頓服の量のみ増量したりする場合もあります。



いずれにせよ、骨転移からの脊髄圧迫ではこのように、麻痺の対応(最緊急)と痛みの対応(治療にも関わるのでこちらも迅速に)を並行しておこなってゆく必要があり、がん治療の専門家は実際このように対応しています。


患者さん自身の理解と行動、協力も非常に重要です。


症状を感じているのは患者さん自身ですから、すぐにそれを伝えねばなりませんし、また最低限のことは知っておかないと、大切な時間を逸してしまいます。


少しでもこういった情報が役立ってくれれば、そして脊髄麻痺で生活の質が下がる方が減れば、これ以上のことはありません。