トヨタの元役員さんは不起訴になったようですね。



その後もオキシコドンにまつわる様々な情報が出ています。



2編ご紹介します。



まずは以前も紹介した永寿総合病院の緩和医療医である廣橋先生のご記事。



トヨタ役員麻薬密輸報道が癌患者に与えた悲しみ



ぜひご一読を。専門家がわかりやすい言葉で、正確な情報を伝えてくださっています。




さて、こちらはアメリカの医師に聞いた記事。この記事は読み方に注意が必要なので、解説を入れます。


ただこの記事は興味深く、また何度か当ブログで取り上げているアメリカと日本の違いと、意外な共通点がわかります。


「オキシコドン」は、"警戒"するべき薬だった アメリカ人医師に聞く処方現場の実態


以前のブログ記事の繰り返しですが、”警戒”するべきなのは、急性の痛みにまで医療用麻薬を投与するアメリカのやり方に他なりません。


がんの患者さんに限って使用している日本の場合は、「警戒するべき」は言い過ぎ(過剰表現)です。


以下、「」内は引用です。


「ただ、数日ですぱっとやめられない人にとっては、長期間依存してしまう可能性もあるので、注意が必要だ」


と記事中にありますが、医療用麻薬で精神依存が作られるのを抑制している機序が働いていない可能性がある急性の痛みに対して積極的に使用すれば、「数日でやめられない」人も出てくるでしょう。アメリカではこうして急性の痛みにまで使用しているので、やめられない人を作ってしまうのです。



「よく知られている通り、米国では鎮痛剤中毒の問題は非常に深刻だ。マイケル・ジャクソン自身もはじめは中毒になろうと思って鎮痛剤に手を出したのではないだろう。強い鎮痛剤は、芸能人であろうが、企業の役員であろうが、全く関係なく、依存傾向のある人間には等しく危険だ」


がんの痛みに使用を限っている日本では起こりえない問題が、こうして起きてしまうのです。



「強い鎮痛剤の場合は、短期間、必要量だけを服用し、その後、すぱっと服用をやめられるかどうか、そこが一番の鍵」

そうは言っても、やめられない人も出て来てしまうので、最初から急性の痛みには投与しなければ良い、と思うのはやはり文化や背景の違いからなのでしょうね。



「薬の必要ない人間がオキシコドン中毒になることと、がん患者がこの薬に依存することは全く違うし、そこを多くの人にわかってもらいたいと思う」


ニュアンスとしては辛うじてあっているのですが、がん患者はそもそも精神依存には極めてなりにくいので、がん患者がこの薬で精神依存になることはまずありません。翻訳の問題でしょうか。

正確に言うと、”薬の必要がない人間が不適切な入手・使用でオキシコドン依存になることと、がん患者が適切にオキシコドンを使う(依存にならない)ことは全く違う”ですね。



なんとアメリカでもそうなのかと思う驚きの事実が下記。『』内、引用です。


『ただ、皮肉なことに、多くの末期がん患者が、オキシコドン中毒になることを恐れて、医師が薦めても使わないのが現実だ。

私の母も末期がんで死期が迫っていても「中毒になりたくないから」とオキシコドンの使用を断った。「大丈夫。ドクターの指示通りに服用すれば、依存はしても、中毒にはならないよ。これ以上苦しんで欲しくないから飲んでみたら」と薦めても母はノーと言い続けた。家族としては、壮絶な痛みを少しでも和らげて欲しかったが、死期が迫っていても、中毒になって、意識が朦朧としてしまうのではないか、まともに頭が働かなくなるのではないか、と恐れて拒否するがん患者はかなり多い』


適応外の痛みには積極的に使用する割に、本来適応で、精神依存も作りにくいがんの場合に、アメリカでも(なんと医師の母でさえも!)医療用麻薬を飲まない人が”かなり多い”という報告。


意外です。


冒頭の廣橋先生のご記事の言葉は日本だけではなく、アメリカにも伝える必要がありそうです。


引用させて頂きます。


「ここで、医療用麻薬について再確認させてください。まず、癌による強い疼痛を緩和するためには欠かせない薬剤です。末期患者だから使う薬剤ではありません。そして、医師が癌性疼痛を適切に評価し処方している限り、依存や中毒を引き起こすことはまれです」

「繰り返します。医療用麻薬は適切な評価と処方であれば安全に用いることができ、癌患者を疼痛から救うことができます。今回の一連の報道でも、この事実を伝えてほしかった」


まさしくそう思います。そして正確な情報の広がりを改めて願います。