皆さん、こんにちは。大津です。


台風改め温帯低気圧の風雨はすごいですね。


どうか出勤時は皆さんもお気をつけください。


さて、先日の記事


モルヒネで殺してくれとならない社会に 治療中からの緩和医療を 今井雅之さん会見記事から


について、10kg痩せたい(^O^)gさんから頂戴したメッセージを紹介します。


(以下紹介)



先生、おはようございます。いつも更新を楽しみにしております。

私自身が12年前に、悪性リンパ腫の治療時に医療用モルヒネを使用しました。

B症状<ブログ筆者注;発熱、体重減少、顕著な寝汗>もあり、胸水や腹水も溜まり15分も横になる事が出来ませんでした。

当時は、まだ紹介された腫瘍外科の患者で、ベットが空いていないという事で、脳外科に入院していました。

血液内科に院内転科の前でしたが、とても苦しく「絶対に死ぬ」と思っていました。


また、私の発病から10年前に弟が重症膵炎でモルヒネを使いましたが、七転八倒の末に亡くなったのを見ていたからです。

腫瘍外科の先生から、「今、とても苦しいよね。今のままだと、これから始める抗がん剤療法をする体力すらも無くなってしまいます。DLBCL<ブログ筆者注;びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫>にとても良い薬が有るので、今は、モルヒネで痛みを取って、睡眠や食事が出来る様にしましょう」と言われました。

しかし、弟の事が有ったので、「モルヒネですか」と言うと、先生から「モルヒネに対して何か有りますか?」と聞かれたので弟の事を話しました。

すると、先生いわく、「それって、10年以上前の事では無いですか? 今は、当時の様なモルヒネの使い方はしません。我々を信じて指導の通りに使えば麻薬中毒になる事も有りませんよ。覚せい剤などとは違いますから安心して下さい。今は、一秒でも早く、貴女の痛みを無くしましょう!」といわれ、先生を信じてモルヒネを飲みました。


今井さんの「担当医に生きているだけなら、モルヒネで殺してくれと言いました。安楽死ってやつですか、そのほうが楽ですから…」

この言葉を聞いて、「がん患者に対する緩和ケアを受けていないんだろうな。心身ともにどんなに辛い状態なのだろう!」と思うと、とても人ごととは思えません。

病院も6件も変わられたそうですし。多分、代替え療法など「緩和ケア」もして貰えないクリニック? 病院に通われているのだろうと感じています。

告知を受け入れる事が出来ない多くの患者や家族は、「標準治療をする病院は金もうけ」などを謳い「体に優しい治療」などとエビデンスも無い自由診療に誘導され、「藁をも掴む!」の精神で所謂「ドクターショッピング」に走るケースもとても多いですよね。

私は患者会に所属していますが、それらの場合の多くに「とても心温まる」というか「甘~い」うたい文句に、時間と多額のお金を消費し、半ば「病院と縁を切る様な形で逃げる」ケースも多く、そんな患者さんが痛みが増大しても「きちんとした緩和ケアを受けられたケースは本当に少ない」と報告を受けています。

今井さんの場合も、元自衛官として凄く厳しい訓練の経験者の口から、この様な言葉が出るという事。

こんな悲しい言葉を患者の口から出させてはいけませんよね!


私の場合も、がんの疼痛は「人生で初めて経験するタイプの痛み」でした。

治療に対しても、残された時間に対しても「何に対しても悲観的になる」事を経験しています。

でも、どんなに辛くても「死ぬまで生き続けなくてはいけない!」のが事実です。

そうなると、残された時間をいかに過ごすか! が、とても大切な事だと思います。

がんは「時間が有る病気です」

「時間が有るから色々な事に手配や準備が出来る病気」です。

でも、受け入れる事が出来ない場合、「その貴重な時間の優先順位が人それぞれ」

逝く時に「どう納得するか」「どの事に満足するか」

この大事な事になかなか気付けません。

先に旅立った仲間の多くが、旅立つ直前に「●●しておけば良かった! 貴方達は後悔の無い様に納得して色々な選択をしてね」の遺言を残して旅立ちました。

言うは易し 行うは難し

お金に余裕の有る人の場合に特に「まだ出来る事が有る筈だ!」と探し回られているとも感じています。

確かに、「奇跡が起こらないとは限りません」だからその行為の全てを否定はしませんが。

それでも、あのテレビで目にも黄疸が出ている姿、末期のがん患者特有の顔を拝見した時、今井さんにとって最良の緩和ケアを受けられる環境が有ります様に! と思わずには居られませんでした。

舞台復帰の思いが有るから、まだあれだけのエネルギーが出ているのでしょうね。

病は気から…この言葉は、あの今井さんからも感じました。凄い精神力の方ですね。

本当に!本当に! 緩和ケアで今井さんの心も体も救われます様に! と祈ります。


(以上引用)


10kg痩せたい(^O^)gさん、貴重なご体験のお話、ありがとうございました。


その通り、と思うところが多くあり、頷きながら拝読しました。



重要なこととして、標準治療を行わない自由診療の免疫クリニック、食事療法クリニック、代替療法クリニックにおいては、「本当の苦痛緩和の専門家」がいないところがほとんどである、ということです。

そのようなクリニックは、確かに見た目は親切です。

しかし、実は最期まで診療しないことが多いです。

(治療が効かないので病気は悪化し)苦痛は増え、しかし入院設備はなく、苦痛緩和も不十分なので、結局どこかに入院せざるを得なくなります。


例えば、今私が勤務している病院のような標準治療を行っている病院は、治療が継続困難となった際も患者さんやご家族と相談し、緩和ができる(ここが重要!)在宅医の先生や、ホスピス・緩和ケア病棟、緩和ができる一般の病院などを紹介しています。


そうすれば標準治療を行う病院(+緩和医療)→緩和ができる医師や施設、と切れ目なく緩和医療を提供可能です。


これで苦痛緩和を継続的に為すことができるのです。


けれども、「希望を捨てない」という誘い文句に負けて、標準的な緩和医療を一般に提供できない前述したような自由診療クリニックに通うことで、緩和医療の提供が途切れてしまいます。


最近は標準治療を受けつつ、そのようなクリニックにもかかる方が散見されるようになりました。


けれども、そのようなクリニックは基本、あまり悪いことは言いませんし、苦痛緩和のことも不正確な判断や状態評価に基づくアドバイスを言ったりしますから、「まやかしの希望に心が絡め取られる」「怪しい宗旨を信じることで、正確な病状や苦痛緩和法の理解が後退する」などデメリットもあります。


私が経験したもの(いずれもかつて勤務した病医院の折の経験)には次のようなものがあります。


乳がんの終末期の患者さんから「免疫クリニックの先生には『緩和の先生に胸水を抜いてもらえばすぐに呼吸困難は良くなるから。抜いてもらうように頼みなさい』と言われました」と聞いたことがありますが、その患者さんには胸水はほとんどたまっていなかったりとか。その後もその患者さんは何かと胸水を抜いてほしいと仰り、何度も胸水がたまっていないレントゲン写真なども見せたのですが、いよいよ状態が悪くなって「病気は良くなっている。胸水を抜いてもらえば苦痛は緩和される。それだけが問題」との免疫クリニックの先生の説明が嘘だったと気がついた時まで続きました。


また別の例では、苦痛緩和でメリットが大きいステロイドの使用を、免疫クリニックの先生が断固反対して、患者さんもそれを信じたため、本来改善させられるはずの苦痛は取れず、しかも「ステロイドは使わず免疫を高めれば延命できる」と同先生に患者さんは保証され、患者さんもご家族もそれを信じていたのにそうはならなかったりとか。


さらには、余命日単位の方に「良くなっている」とある免疫クリニックの先生は伝え、その根拠は、「数十種類も腫瘍マーカーを測定したうちの二、三個の値が若干減っているから」(!)ということもありました。採血には1回数万円自費でかかったそうです(繰り返し検査されていました)。「良かったですね。◯と☓と△が下がっていますよ! 大丈夫ですねえ」と伝えられて、喜んだ数日後に、患者さんは旅立たれ、ご家族は茫然とされていました。

もちろんその腫瘍の場合の判断材料とはならないマーカーまでありとあらゆるマーカーを測定して、その分のお金を自費で取っていたのですから、驚きました。腫瘍マーカー◯と☓と△が、そのがんの進行具合と一切関係なかったことは言うまでもありません。


関わらない人は生涯関わらないこの手の世界ですが、一歩間違えると、混沌はそこかしこに存在しており、皆さんもどうか気をつけて頂きたいと思います。


こんなことが本当にあるの? ということが本当にあるのが、世の中の一筋縄でいかないところです。


頂いたメッセージの”お金に余裕の有る人の場合に特に「まだ出来る事が有る筈だ!」と探し回られているとも感じています”の指摘は、私も正しいと思います。


選択肢があることが裏目に出てしまう、というのがとても残念なことです。


”先に旅立った仲間の多くが、旅立つ直前に「●●しておけば良かった! 貴方達は後悔の無い様に納得して色々な選択をしてね」の遺言を残して旅立ちました”


との言葉は胸に響きます。


私自身も何度も患者さんから伝えられた言葉です。


人生における重い決断、選択に直面している方々が、悔いの少ない道を選ばれることを心から願っています。

そして誰もが、必要な医療・ケア、そして必要な医療者に、必要なときに出会えることをまた、心から願います。今井さんの一連の記事を読み、改めてそう感じました。



それでは皆さん、また。
失礼します。





2章  耳に心地よい話を信じるか、否か
14章 緩和ケアを受けるのか、否か
16章 免疫治療に走るのか、否か