皆さん、こんにちは。大津です。



最近、近藤誠さんの論を政府は利用しようとしているという意見まで出始めました。



病気を放置させて、死に至らしめることで、医療費を削減するという政府の策略だと言うのです。



ツイッターでそのような論が広がっています。



別に私は政府がこれっぽっちも好きではありませんが、しかしこれもまた陰謀論すぎるのではないかと感じます。



それだけ政府が疑われているのだなあと、薄ら寒くも感じました。



私はそのような陰謀よりも、「責任主体がはっきりしない日本の組織の特性」が影響しているのではないかと思います。



通常反論すべき人たちがしないのですから、何らかの力が働いているのか、ひょっとして政府が手を回しているのか、等々と皆さんが想像してしまうのでしょう。



私の感覚では、責任を負いたくないのだと思います。影で文句を言っているほうが楽なのでしょうね。誰かがやってくれると思い、そのようなめんどくさいことはやらない、だからこうなってしまうのではないでしょうか。


あるいは放っておけば沈静化する、変に取り上げることでむしろ流布に力を貸してしまう、というような思いもあったのではないかとは感じます。しかし結果から言うと、それはあまり有効ではなかったようです。


「誰かがやってくれるだろう」式の、責任主体の曖昧さが、近藤さんの論の拡大や、「看過しているとは何か裏があるのか?」と疑われるのを招いた側面もあるかもしれません。



もう一点。


私は政府の陰謀よりも、これこそ市場原理だと思います。


近藤誠さんが流行る深層(3)メディアの要因


に記したとおりです。



「単純化」「善悪論」「陰謀論」は純粋に面白いのです。


だから本は売れ、どんどん刷られます。


インターネットでもまじめな記事はしばしば読まれず、過激なタイトルの記事や、極論・陰謀論・攻撃的意見がどんどん拡散します。


近藤誠さんの論が流行る複雑かつ多様な背景を冷静に分析し、もっと皆で考えようと連載しても、政府陰謀論の拡散スピードはその数倍です。残念なことです。


「単純化」「善悪論」「陰謀論」を面白がってしまう人の性(の一つ)が、私はこれらの極論の拡大を招いているのではないかという意見です。


何か一つの主体の陰謀というよりも、人の性質に根ざして、市場原理が生成したのが、近藤誠さんの極論の拡大だと思うのです。


それに対して今度は「政府の陰謀」という別の極論・陰謀論が拡散するのですから、大丈夫なのかなと少し心配になります。


「不信」の時代ですね。情報が、しばしば安心につながっていない時代です。


このブログをご覧になってくださっているような皆さんは、センセーショナルではないものまでご覧になってくださっている方々ですから大丈夫とは思いますが、どうかお気をつけください。



それにしても、政府の陰謀と言うより、営利企業のマーケティングのほうがよほど成因の一つだと思います。下手をすれば潰れる民間企業のやる気・本気のほうが私はよほど力があると感じます。


どういうことかと言うと、例えば昨年のベストセラー『医者に殺されない47の心得』、今年のベストセラー『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』、共通点はありませんか?


ちゃんと解説くださっています。


下のサイトをご覧ください(2014年12月5日現在リンク確認)。


ヒット作の仕掛人 アスコム編集長に聞くベストセラーの作り方


(以下引用)


・ヒットメーカーの黒川氏は、編集方針として「広く深く刺す」という大きなテーマを持っている。例えば、『医者に殺されない~』の著者、近藤誠氏は、がん治療のエキスパートである。すると多くの編集者は、「がんの本」を作りたがる。しかし、近藤氏が警鐘を鳴らしてるのは、より広い視野に立った「過剰医療の危険性」なのだと黒川氏は指摘する。


・テーマ設定を特定の「がん」に絞ってしまえば、そこに関心のある人にしか届かない。そうではなく、より普遍的な話題として切ることで多くの読者の関心を惹き付けられると考えている。


・広告訴求は5字にこだわる(中略)

「殺されない」、「ふくろはぎ」、「たまねぎ氷」はいずれも字数は5。新聞の半五段広告に縦書きでタイトルを記して出稿する際、最も目立つのがこの「5字」なのだという。インパクトを与え、目を引かせるというわけだ。


・タイトルづけに関しても並々ならぬこだわりをみせる。『医者に殺されない~』もなかなかセンセーショナルだが、やはり先述の「広く」という方針とクロスする部分がある。


「ひとことで言うとどんな本なのか。ひとことで複数のターゲットに突き刺さる言葉は何なのかを考え、キーワードを探します」


その上で言葉を抽出していくと、「そんなに多くの言葉は出てこない」。最終的には「感覚的な部分が大きい」ともいうが、なるほど「医者に殺されない」と言われれば、治療中の人から患者を抱えている家族はもちろん、健康な人の関心をも引くことができるだろう。


・「読者が本を知る場所は、①書店、②広告、③プロモーション(テレビ、ネットなど)の3つです。多くの編集者は『書店』のことだけを考えがちですが、読者の多くは広告やプロモーションで知るのが現実でしょう」


(以上引用。原文ママ。強調ブログ主)


ちゃんと『医者に殺されない47の心得』『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』を仕掛けた方自身が解説くださっています。


『医者に殺されない47の心得』の広告・プロモはすごいと感じていましたが、やはりそう意図して行っていると仕掛け人の方がご自身で解説くださっているのです。



購買して頂くための技術も進化しています。ある種「何でもあり」です。


ただ本を広めているのは、購入者自身とそれに感応した売る側、取り上げる側です。


政府の陰謀よりも、買う人がいるから、刷られ、広告効果が高いので宣伝され、ますます広まるのです。


単一原因と言うよりは、世の中の多くの人の営為によってそれは広がって来ている、そういう循環を形成しているというのが私の考える主因です。


私からの提案としては、やはり、タイトルに踊らされず、「単純化」「善悪論」「陰謀論」は割り引いて捉える、また目を通して明らかにそうであるものは「見ない」「買わない」が結局変な思想に取りつかれることなく、不信が強くならず、生活の質を下げないと思います。


そして「単純化」「善悪論」「陰謀論」が取り上げられず下火になれば、自ずと良識的な情報が残るのではないかというものです。



そのように考える人は一部だと思いますが、「政府のせい」などと聞くと、「他人のせいなのか?」と感じます。皆が背負っている責任であると私は思います。


日本人全員がもっと情報を冷静に吟味する力を養うことを試されている時期であると思います。



「3薬以上の薬剤を飲んでいるけれども大丈夫でしょうか」と真剣に聞かれる時代です。


それは近藤誠さんの本に『一度に3種類以上の薬剤を出す医者を信用するな』(「医者に殺されない47の心得」心得12)とあるからです。額面通り信じられています。


売るために行われるキャッチーな表現の数々に、私たちは取り込まれることなく、バランスを取った立ち位置で歩んでいきましょう。


いつもお読みくださり、ありがとうございます。
それでは皆さん、また。
失礼します。