皆さん、こんにちは。大津です。



今日は医療者向けです。



モルヒネやオキシコドン、フェンタニルを別のオピオイドに変更することを、以前はオピオイドローテーションと呼びました。


最近はオピオイドスイッチングと呼ばれるようになっています。



オピオイドを変更することで副作用を軽減したり、あるいはより良い効果を目指してということもあります。



先日噴門部胃がんの混合痛(内臓痛+神経障害性疼痛)にオピオイドスイッチングが著効した一例がありましたので、報告します。


その患者さんはフェントステープ16mg/日(=内服モルヒネ換算480mg/日)でも疼痛が非常に強い状況でありました。


直近にもフェントスはどんどん増量になっていたのですが、疼痛には変化がなく、緩和ケアチームに紹介されました。


私はこれはフェンタニルへ耐性になっていると判断しました。


オピオイド同士は”不完全な交差耐性”といって、あるオピオイドに耐性が形成されて効きづらくても、別のオピオイドには耐性がそれほどでもなくよく効くことがあります。


そこでモルヒネへの変更を提案しました。”良い効果を目指して”のスイッチングです。


最近のオピオイドスイッチングの考え方では、当鎮痛用量ではなく、25~50%に減じた量で開始することになっています(Caraceni et al, Lancet Oncol 2012)。


変更量は1%モルヒネ注(10mg/1ml)を時間0.4ml(=9.6ml/日=96mg/日=内服モルヒネ換算192mg/日)の持続皮下注射としました。


突出痛が持続痛に対して強いため、レスキューの量は0.6ml/回としました。最近の考えではレスキューは以前のように必ず内服は1日量の1/6量、注射は1/24量とするのではなく、患者さんの状況に応じて調整するのが良いとなっていることから鑑みて、微調整を行いました。


この変更が非常にうまくいき、疼痛の程度は大きく改善、最終的には1%モルヒネ注(10mg/1ml)を時間0.45ml(=10.8ml/日=108mg/日=内服モルヒネ換算216mg/日)で良好な鎮痛効果を得ました。


およそ上記の調整に1週間かかりましたが、痛みが良くなったので早く帰りたいという患者さんの声に応える形で内服化を推し進めました。


最終的には定時投与はMSコンチン240mg/日・分3に、レスキュー量は塩酸モルヒネ錠50mg/回にて入院前よりは見違えるように良くなった(奥さん談)状況で退院となっています。


神経障害性疼痛が強くあったので、当初は神経ブロックも考慮し、緩和ケアチーム内の専門家(麻酔科医)にも相談はしていました。


けれども古くからある技法であるオピオイドの変更(スイッチング)が見事に奏効し、今回は神経ブロックを追加せずとも退院が可能になりました。


オピオイドを高用量使用しても疼痛がまったく良くならない患者さんは、このように緩和ケアチームに相談して頂けると、見違えるように良くなることがあります。


当例でも、結果的にはモルヒネ換算量も480mg→240mgと従前の半量でマネジメントすることもでき、また疼痛効果が非常に良くなったので、本当に良かったと思います。


こんな引き出しを数多く用意して、緩和ケアチームは今日も依頼をお待ちしております。