【一般>医療者】


中韓を嘲笑う前に、我が身を振り返ろう(dragonerさんの記事)

という興味深い記事を拝見しました。
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こちら

面白い内容です。

その中にノンフィクション作家の安田峰俊氏が週刊誌事情を語ったツイートが引用されています。

(以下引用)

※最近、複数の週刊誌関係の方に共通して出た話。「中韓叩き記事、正直僕らも大してやりたくないけど毎週のアンケートの人気高くて外せない。ここ一年ほど特に顕著」「『中韓はこんなに劣っている』か『日本は実はこんなにすごい』が受ける。毎回似た中身でも」

※2chのまとめサイトもそうだけど、情報の受け手がみずから望んで偏った情報を求めているんだもの。売る側はそういう人にお金落としてもらうために、偏ってるのを承知で煽り情報を売る。うーむ

※家でPCに張り付いてるアラサーニートも定年前後の不安におびえるおっちゃんも、「あまり考えずに気持ちよく消費する娯楽情報」についてはみんな(=少なくともビジネスが成り立つ規模の人数)欲するところは大して変わっちゃいねえとも言えるのよな

(以上引用)


この構図、どこか既視感があるな・・と。


今週のヨミドクターの記事です。
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こちらです


私たちはかなり「自分が聴きたいものを聴く」と言えるかもしれません。


医療現場は忙しく、物理的に親切な対応をすることが易しくはなく、恒常的に不信の原因を作りやすい状況にあります。病院に受診したことが一度でもあれば、何らかの不満を抱いている方もいらっしゃることでしょう。

また化学物質への偏見も世の中には少なからずあります。天然のものがもっとも良くて、化合物は毒であるという幻想。抗がん剤という言葉への過剰な反応などもそうです。

そこに「抗がん剤は効かないのにお金儲けのために使用している」という言葉が流れてきたら。

ヨミドクターのコラムにも記しましたが、私たちの一部はこの「偏った」情報を、自身が望んでいたとも言えるのではないでしょうか。あるいはこれを面白がるからこそ、非常に大きいセールスになるのではないでしょうか。どんな病気でも絶対に失敗しないで治してくれる医者のドラマも、皆が求めているから(スカッとするから)視聴率が高くなるのです。

しかし、その皆が面白がって飛びつき、「そうだそうだ」と同意したくなる情報が本当に正しいかというとそれは別問題です。自分が聴きたかった内容の情報が正しいとは限りません。

中韓叩き記事も、やりすぎれば必ずそれを盲信する人が出て来ます。どんどん怒りや侮蔑の感情が満ちていきます。

医療界に強い陰謀の臭いをかぎとる本も、やりすぎれば必ずそれを盲信する人が出て来ます。どんどん怒りや侮蔑の感情が満ちていきます。

しかしそれらの記事や本の人気が高ければ、同じようなものがどんどん量産されて、ますます似たような情報が流れます。

そしてまるでマッチポンプのように、自らのうちに巨大な(実際は存在しない)敵や侮蔑すべき存在を作り上げて、ますますそれらとの関係をこじらせてゆくのです。

「戦前はマスコミが記事需要を判断して自発的に煽ったものだが、近年の中韓叩きはネットが先導し、マスコミがそれを追随する」と先のdragonerさんの記事にはあります。

いずれにせよ正しいかどうかなどはまるで関係なしに「煽る」という言葉がふさわしい情報が「知る権利」の名の元に濫発される傾向も感じられます。そしてそれらの情報の特性は

わかりやすく、一方を悪と断じ、より自らの疑念や時には敵意を深め、行動にも影響し、結果的には関係を損ねるあるいは自分が損をする

というものです。

情報があふれる中で「わかりやすく!」と求める強い声は、複雑なものを複雑なままより正確に理解するよりも、複雑なものを間違っていてもいいので「あまり考えずに気持ちよく消費する娯楽情報」にするのを良しとする危険を内包しているとも言えるのではないでしょうか。

益々冷静に情報を吟味する目が必要とされていると思いますし、医療においてもそれが言えるでしょう。