【一般の方>医療者】



病院に緩和ケアチームがあって、”かつ”機能し、”かつ”無理な転院勧奨を主治医の先生がなさらない病院だと、一見緩和ケア病棟やホスピスの良さが見えにくくなります。


「だってここでも苦痛緩和できているから」


「だったら通い慣れた、見知った人も多いこの病院で最後まで過ごしたい」


緩和ケア病棟も申し込んでみては? とお伝えしても、時にはですが、「追いだそうとしているの?」と怪訝そうなお顔をされる患者さんやご家族もいらっしゃいます。


ただ、終末期となり、例えば余命数ヶ月となれば、余命を延長させるための医療行為の効果は薄くなり、時に身体を余計傷めてしまうことになりかねません。

前回のエントリーでも抗がん剤で症状緩和をするという話をしましたが、余命も短い月の単位と推測されるような段階では、治療をしたいしたいと粘ることが逆に命を縮めてしまいかねません。抗がん剤にも適切な時期というものがあるのです。

さてそのような病気を治す治療の意義が薄くなった際に、何が一番重視されるべきなのか。

もし皆さんが余命が2、3ヶ月位しかないとしたらどうでしょうか?

きっと「やらなくてはいけないこと」「やりたいこと」を為してゆくというのが重要だということに気づかれるのではないでしょうか?

そう、そのような終末期の時期こそ、とりわけQOL(生活の質、生命の質)に配慮されなければならないのです。


しかし先日医師向けの雑誌『内科』(最後までよい人生を支えるには<Vol.112 No.6>多死時代の終末期医療 2013年12月増大号)でも論じましたが、診療所・ホスピス・一般病院・大学病院すべての診療経験がある私の目から見て、大きな病院の患者さんのQOLを支える体制は相対的にけして豊かなものではありません。

患者さんの数が多く、また治る病気で現在進行形の治療をしている患者さんもいる中で、医療者は時間的余裕が少なく、一人の方にじっくり腰を据えて関わるということが容易ではないのです。

また「病気を治す」ことを優先させている病院であるがゆえに、まだQOLを上げる(特に終末期においてはそちらに最大限重点を置くことが重要)という視座が育っていない場合もあります。

患者さん(とご家族)のQOLを支えることを第一にする、という考えやケアが育っている緩和ケア病棟やホスピスでは、その点で一日の長が確実にあります。

私がもしがんの終末期になって在宅生活の継続が不能になったら、「確実に」緩和ケア病棟やホスピスを選ぶと思います。ことその時期においては、やはり圧倒的な優位性があると個人的には思っています。

残念なことに、早期からの緩和ケアが謳われているのに、緩和ケアの総本山的な存在であるホスピス・緩和ケア病棟が「抗がん剤を使用中だと入院予約外来を受け付けない」というところがまだまだあるところです。

抗がん剤治療の進歩は、比較的ぎりぎりまでそれを行うことができるようにもしました。

一方で抗がん剤治療ができなくなると余命があまり残っておらず、ホスピス・緩和ケア病棟をそこから申し込んでも間に合わないという状況があります。

それでは、ともう少ししか抗がん剤が継続できない(くらい身体が弱っている)からとホスピス・緩和ケア病棟を紹介しようとすると、先方に「抗がん剤が終わってから連絡ください。そこで初めて入院予約外来が取れます」と断られてしまう。それでは間に合わないのです。

私はホスピスに勤めていたことがありますから、「最初から強くホスピスを希望して(おり治療よりも緩和ケアを優先させて)いる方」を優先させたくなる気持ちもよくわかります。しかし治療がかなり終末期までずれ込んできている現状で、抗がん剤治療中での入院予約外来受け付けず、というものは時代に即さなくなって来ているとも感じます。何より早期からの緩和ケアともしっくりこないところもあります。

そんなこんなもあって、私たち緩和ケアチームが関わっている事例で緩和ケア病棟に行くという方が減ってしまっています。

「ここにいたいんです」

と仰る方も増えていますから、症状緩和も為されておりますし、積極的に転院を促す意味にも乏しいのです。

ただやはり覚えておいていただきたいのです。

終末期に最良のQOLを提供できる形態の一つがホスピス・緩和ケア病棟であり、大きな病院ではそれに対してできることが限られている、ということをです。

正しい情報が広まってゆくことを願います。


今日はヨミドクターの更新です。
よろしくお願いいたします。