皆さん、こんにちは。大津です。


いよいよ9月ですね。今年も残り1/3ということになります。


最近1年1年があっという間で、これも加齢のなせる業なのだと痛感します。

時間は本当に相対的です。


さて表記の件。

『反省させると犯罪者になります』という耳目を集めるタイトルの本を読みました。





結論から言いますと、かなりお勧めです。

とりわけ医療関係者の方にはぜひ読んで頂きたいと思います。あとは子育て中の方です。


この本は、重い犯罪をおかした受刑者に、どうしたら本当の更生が訪れるのかについて記した本ですが、本の中でも触れられているように単に受刑者にばかりというだけではなく、しつけの現場等の日常の様々な場面で応用できる方法が描かれています。

以前90代の患者さん(素晴らしい方でした)と1年余りをともに過ごさせて頂きましたが、彼女は保護司を何十年もされていて、繰り返し「犯罪をおかすのは、家庭の問題が必ずある」と言っていました。本当の幸せな家庭に育った人間は、犯罪者にならないのだ、と。

この本でも、不幸な家庭環境や、厳しすぎるしつけによる年余の抑圧が、次第に子供を問題行動に導いてゆくさまが記されています。面白い視点は、そもそも受刑者などは反省を(表面的に)することには長けており、しかし心中は本当の反省にすることに至っていないのだ、だから反省を強いることは逆効果だという視点です。これは私も日々痛感していることであり、大いにうなずける主張でありました。


また例えば私たちの現場でも、以前より「北風」のアプローチはあまり効果を得ないことが実感としてあります。例えば糖尿病の食事療法でも、「頑張っていますね」「素晴らしいですね」という心理的支援が欠かせません。研修医の頃「いや・・糖尿病の検査値が良くなっていますよ。素晴らしいですね」と自分も嬉しくなってそう言ったところ、患者さんに泣かれたことがありました。「そんなことを言ってもらえたのは初めてです」と。日本人は「頑張ること」が貴重であると文化的背景にあり過ぎて、ちょっとやそっとの頑張りでは頑張りと認めてもらえないという厳しい環境にあります。その患者さんも十分以上頑張っていたのですが、まだ頑張り足りないと自身で感じ、内心自らを追いつめていたのです。

前掲書『反省させると犯罪者になります』は類する事例が豊富に出て来ます。それでは反省させないでどうしたら良いのでしょうか?


それは受刑者の更生に至るきっかけとして、書くことを通してこれまでの人間関係を見つめなおす方法です。この方法が、拙著『傾聴力』に述べたことと共通点があり、やはりケアの仕方はどの現場でも似ているのだと感じました。



『傾聴力』でも、「人生の振り返り」と「捉え直し」が、生の意味の喪失からの回復につながることを述べました。

『反省させると犯罪者になります』でも、反省抜きに、受刑者はこれまでの歩みを振り返り、自らが罪を犯すきっかけの本当の大本を自ら探り当て、その結果「真の反省」に至る過程が描かれています。過去を見つめなおすことで、自らを知り、次に犯罪をおかさないような自分に作り変えてゆくのです。

他にも、誰にも頼らない強い自分であろうとするからこそ、「つながり」を作ることができず、孤独で、追いつめられ、結果再犯に至るくだりなどは、人のつながりが生きる意味の補強につながるという医療現場での実感と共通するものでありました。


一見すると正しく見えることが、本当は正しくないことはしばしばあります。

『反省させると犯罪者になります』はそれを教えてくれる本でした。


「本当はどうなのか?」
私たちもそれぞれの現場で、その問いを大切にしたいものですね。

それでは皆さん、また。
失礼します。